長生きするのって、いいことなんですか?
こんな質問を、堀江貴文さんにした。というのも、堀江さんは去年、予防医療普及委員会という組織を立ち上げ、医療ビシネスに踏み出していたからだ。その第一プロジェクトとして胃ガン予防のためのクラウドファンディング(※)にも挑戦していた。
「胃ガンは、99%がピロリ菌に感染によるもので予防できる。自分も、そして近しい人も防げる病で命を落とすなんでアホらしい」
これが活動の動機だという。ネガティブな自分の中に、ふと冒頭の疑問が湧いた。
――堀江さんは多くの人が健康になるように、といった活動をしています。でも、長く生きることはいいことなのでしょうか?
なんで長く生きたくないんですか。悲しいことが起きるから?
――周りの人が少しずついなくなって、孤独にさいなまれたり。
「周りの人」が死んでしまうということ? それって、「周りの人」が全員同世代であるっていう前提の話なんですよね。 すごく不思議。どうして同世代しか見てないのかなって。
こういった思考をしている人は、人間関係を常にアップデートしていく発想がないんです。これが、そもそもおかしい。僕は、義務教育が副作用を起こしているように見えるんです。
「みんな一緒」な義務教育は異常
――義務教育ですか。
そう。義務教育の9年間、同じ地元で同い年の人とずっと一緒にいるんですよ。多感な時期を、年齢が近い人とつるむようにシステム化されているわけですね。普通に考えたら異常なことじゃないですか。出会うべき人、一緒にいたら楽しい人っていうのは、世代とか居住地で決まるものじゃないのに。この教育のやり方って、軍隊を作るときに統率しやすいんですよね。
今ってそういうの、必要なんでしょうか? 正直、時代錯誤だとすら思う。実際、世界的に見て徴兵制がない国の方が多いんですよ。もちろん、かつては国民国家の一員だと認識させるための教育も必要だった。でも、いろんな世代とコミュニケーションとるように心がけていれば、「周りの人たち」がいなくなることはないんですよ。寂しくないよって思う。
そもそも、生きていると楽しいことがいっぱいある。悲しいこともたくさんあるけど、なんで楽しいことの可能性を捨てるんですか? 僕は基本的にポジティブシンキングなので。本当にそうなんですよ。
――失敗も、怖くない?
なんかやりたいなと思ったらすぐ行動しちゃうんです。ぱっと。どんなに慎重に準備しても、ある確率で絶対失敗する。だったら動いたほうが楽しいじゃないですか。
これ、本当におもしろいなぁといつも思ってるんですけど、想像以上にゼロからイチを作る人っていない。敷居が高いのかな。僕には全然わからない。
メルマガやSNSでそういう質問をすごく受ける。「あなたはどうしてそんなにチャレンジできるんですか?」って。
だから、僕は「そういう人たちにアクションを起こさせるにはどうすればいいんだろうか?」、「行動できる人とそうじゃない人の違いは何か?」ってことをずっと考えてきたんです。その答えがなんとなくわかってきた。
「大丈夫。失敗しても誰も気が付かないから」
――「答え」とは、なんなのでしょうか。
みんなゼロリスクを求めている。日本は特に強いと思う。100%絶対に安全じゃないとダメ、みたいな。ゼロリスクなんて、本質的に存在しないのに。これにとらわれると、何も行動できなくなるし、思考停止になる。
あともう一つ。行動できない人って、絶対成功しようと思い過ぎている。ここには、失敗への単純な恐怖と、失敗したらかっこ悪いという感情があるらしい。
そんなときに僕は、「大丈夫。失敗しても誰も気が付かないから」って言います。スタートアップで失敗しても誰も気づかない。たとえ、大きな失敗をしてもみんなすぐ忘れる。
僕の周りにもたくさんいる。会社を興しては、潰して、また起業して。それでも、彼らの失敗を気づいている人は少ないし、仮にそうだとしてもすぐに忘れる。記憶って上書きされるんですよ。だから、失敗を恐れる必要なんて全くない。そんな、うつろいゆく他人の目を気にするのは、意味ないと思う。
だったら、行動し続けた方がいい。行動しないと、何も進まないし自分も変われない。
最初の話に戻るんですけど、いろんな世代の人たちと仲良くなって、人間関係をアップデートして、自分も変わってく。すごくシンプルでしょ。
――堀江さんも、アップデート中なんですか?
そうですね。ちょっとずつですけどアップデートしてますよ。だから、長く生きたい。