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【リオ五輪】苦しむ故郷の島に初の金メダル 女子テニス世界34位が起こした奇跡

ノーシードから勝ち上がったシンデレラ

リオ五輪テニスの女子シングルス決勝はプエルトリコのモニカ・プイグ(22)がドイツのアンゲリク・ケルバー(28)を6-4、4-6、 6-1のフルセットで下し、生まれ故郷に初めての金メダルをもたらした。

世界ランキング最高位は33位。ノーシードから勝ち上がったリオのシンデレラは常にプエルトリコを思い、戦い続けた。

故郷の島に明るいニュースを届けるために

カリブ海に浮かぶ米自治領プエルトリコ。「豊かな港」との意味がある島は今、深刻な経済危機に瀕している。

今年5月に3度目となる債務不履行(デフォルト)を発表。財政は破綻し、医療や教育などの基本的サービスにも満足な資金が回らない。

さらに島ではジカ熱が流行し、1万人以上が感染。12日には緊急事態宣言も出された。

プエルトリコで生まれてすぐにマイアミに渡ったが、家族の住む故郷への思いは強いというプイグ。

「島はいつも悪いニュースでいっぱい。でも誰かがメダルを獲得できれば、それを止めることができる。みんなが幸せな気分になれる」

オリンピックは自分のためじゃない、プエルトリコの人たちのために。強い決意をもってプイグはコートに立った。

ノーシードからの奇跡の決勝進出

世界ランキングは現在34位。グランドスラム大会では準々決勝にすら進出したことがないプイグだが、オリンピックの女神はプイグの味方だった。

ノーシードから勝ち上がり、3回戦では今年の全仏オープンの覇者ガルビネ・ムグルサ(スペイン)にストレートで勝利。準決勝では2度全英オープンを制しているチェコのペトラ・クビトバと格上の選手を破り、決勝までたどり着いた。

facebookには試合に勝利するたびに「次の試合が待ち遠しい」と書き込んだ。そして勝利するたび、いつもコートの上で泣きじゃくった。

それは決勝で全豪王者ケルバーを下した時も変わらない。勝利の瞬間、プイグはコートにしゃがみ込んだ。涙は止まらなかった。

五輪で初めて流れたプエルトリコの歌

試合後、プイグは「プエルトリコの人は金メダルを喜んでくれると思う。私はこの勝利を届けたかった」と語った。

表彰式ではプエルトリコの歌である「La Borinqueña」が五輪で初めて流れた。歌詞を十分には知らず、感激で胸を詰まらせていたプイグは歌えなかった。

代わりにスタジアムで彼女を応援し続けた同郷の仲間たちが、彼女を助けるように歌い始めた。

その顔はみな誇らしげで、そして笑顔だった。プイグの願いはかなったのだ。