「大分のことも忘れんで」 日本屈指の温泉街・湯布院のいま

    揺れは続く。

    日を追うごとに被害が拡大している熊本地震。その被害は大分県にも広がっている。なかでも被害が大きいのが、日本屈指の温泉街でもある由布市湯布院町だ。

    市の災害対策本部によると、9時現在で怪我人が5名。損壊した建物は把握しきれないほどで、現在確認中とのこと。

    同地区は、16日午前1時25分頃、震度6弱を観測。同日7時11分頃にも震度5弱の地震があった。この影響で家屋の倒壊が相次いだ。

    16日17時頃、湯布院で最大収容人数が可能な避難所となっている由布市立由布院小学校には、毛布を抱えた避難者が集まる。

    夜になると眠れないのか、外でタバコをふかす人や車中で過ごす人、友人と話し込む中学生の姿が見られた。16日22時時点で同校は、974人の避難者を収容した。

    1人で避難している女性がいた。湯の坪に住む田上直子さん(72歳)は、「(16日の地震の際)家から這いつくばって出てきた。家は倒壊していないけど、心配だから避難所に。20年前の地震とは比べものにならないくらい怖かった」とBuzzFeed Newsの取材に話した。

    翌朝、田上さんは「家が心配だからいったん帰る。記者さんも気をつけて」と笑顔を見せて去っていった。

    17日、湯布院町川北・川南地区を歩くと損壊した建物の修復にあたる人が目立つ。人気旅館「山荘 わらび野」の外壁は大きく崩れていた。

    外にいた従業員は「予約はすべてキャンセル。昨日からの電話対応だけで精一杯ですね」と枯れた声で話してくれた。

    道中、片付けにあたる人が多くいる。

    わらび野からほど近い明蓮寺は、鐘を支える支柱が傾いた。

    納骨堂は、位牌や供物が散乱。「遺骨は無事だったので良かった」と寺の担当者。

    川北地区に住む内藤義之さん(75歳)宅は、小屋が倒壊。車が潰され、自宅の瓦屋根が剥がれるなどの被害にあった。

    内藤さんは「正直、『生きているうちに地震は来ないだろう』という油断した気持ちがあった。湯布院は火事が起こらなかったのが不幸中の幸い」と話す。

    また、「熊本に注意がいきがちだけど、大分のことも忘れないでもらいたい」とも。

    同じく川北地区の木部鉄郎さん(74歳)は16日深夜、自宅で寝ている際に地震にあった。

    「ぐわぁーと長い横揺れで飛び起きて、女房と2人で外に出た。『怖かった』なんてもんじゃない」と話す。

    娘夫婦が住む由布市挾間町に避難した後、初めて自宅に戻ってきた。自宅内を見せてもらったところ、家具は倒れ、天井が抜け落ち、ガラスが散乱。寝室の壁は剥がれ落ち、外が見える状態になっていた。

    木部さんは、「20年湯布院に住んでいたが、もう住めないな。湯布院は離れて、どこか別のところに住むよ」とうつむきながら話した。

    17日12時30分、由布市は5284世帯10880人に発令していた避難準備情報を解除。今なお余震は続いてる。

    Facebookページでも記事をお届け。