ピッチャー大谷 vs バッター大谷 勝つのはどっち? データから分析する

    ドリームマッチ実現。

    「二刀流」を進化させた大谷翔平

    今季、ピッチャーとしては21登板で10勝4敗、防御率1.86。クライマックスシリーズでは、日本最速の165キロをマークした。

    バッターとしては382打席で104安打、22本塁打。67打点で打率.322。日本シリーズ第3戦ではサヨナラヒットを放つなど、投打にわたりチームの日本一に貢献した。

    「投げてよし、打ってよし」。では、大谷同士が対戦したらどちらが勝つのだろうか……?

    データから導き出す

    今年の大谷のデータをもとに2人が対戦した場合の結果を予想する。

    今回、BuzzFeed Newsの取材に協力してくれたのは、野球データサイト「Baseball LAB」などを運営するデータスタジアムの金澤慧さん。

    データスタジアムは、2001年の設立以来、Jリーグ・プロ野球・ラグビートップリーグなどのデータを取得・蓄積・分析し、スポーツ団体やチーム・クラブ・選手に対して強化や戦術向上のためのソリューションを提供している。

    また、ファンやメディアに対しても様々なデータや、データを活用したエンターテインメントコンテンツを提供し、スポーツの新しい楽しみ方を提案している。

    大谷の球を、大谷は打てるのか?

    まず、ピッチャー大谷のデータから分析してみよう。

    今シーズン、大谷は2229球を投げた。ストレートを安打にされた割合は2割3分7厘。フォークは1割台、スライダーが0割台となっている。

    平均154.7キロを誇るストレートは、2ストライクに追い込んだ後は打ち取る確率が高いが、0〜1ストライク時だと3割4分3厘打たれている。

    追い込んだら圧倒的に強いが、若いカウントでのストレートは打たれている

    追い込んでからは140キロ台のフォークをはじめ、決め球がある。データから見ても2ストライク時からの被打率は極端に低い。

    これがピッチャー大谷の特徴である。

    バッター大谷の特徴は?

    これを踏まえ、次にバッター大谷のデータを見てみよう。

    今季全打席のデータを見ると、ストレートの打率は4割台。スライダー、カーブなど曲がる変化球は3割台。フォークなど落ちる変化球は2割台前半の打率となっている。

    ストレートには強いが、落ちる変化球には弱い

    これが今年の打者大谷の特徴である。

    実際、今季は和田(ソフトバンク)から14打数7安打。岸(西武)からは12打数7安打などストレート中心でフォークを投げないタイプのピッチャーから比較的打っている。

    反対に則本(楽天)には13打数2安打など、フォークを武器とする投手との相性は悪い。

    では、バッター大谷とピッチャー大谷が対戦したらどうなるのか。

    まず鍵となるのは初球だ。

    ピッチャー大谷の狙い目は0、1ストライク時のストレートなので、バッター大谷は初球にストレートを待つだろう。

    145キロ以上のストレートが来たときのバッター大谷の打率は3割7分5厘と速い球には強く、初球のストレートが甘いコースに入ってきたら高い確率で打つ。

    しかし初球をスライダーで入られると、ファールや見逃しでワンストライクを取られる可能性が高い。大谷は初球でストライクを取られると、三振や凡打に倒れる確率が高くなり、一気にバッター不利となる。

    加えて先述の通り、バッター大谷はフォークなどの縦に落ちる変化球に弱い。一方、ピッチャー大谷には、140キロ台のフォークがある。追い込まれるとバッター大谷はかなり分が悪い。

    初球をスライダーで入り、落ちる球で仕留める。データから見るピッチャー大谷のバッター大谷攻略パターンだ。

    また、ピッチャー大谷はクライマックスシリーズで普段より早いモーションの投球を見せた。このような投球術も大谷の武器のひとつだ。

    「ピッチャー大谷は対戦相手が自分自身なので“癖”を読んでいるはず」(金澤)

    これらを踏まえると、対戦して有利なのはピッチャー大谷といえる。

    「すべて規格外」

    最後に改めて大谷の圧倒的なデータをみよう。

    ピッチャーとしては、過去10年の日本球界ストレート平均球速を見ると、1位は元巨人、DeNAのクルーン(2008年、155.4キロ)、2位大谷(2016年、154.7キロ)、3位クルーン(2007年、154.2キロ)となっている。

    しかし、クルーンは抑えの投手だ。少ないイニングに全力投球ができるので比較対象にはならない。

    先発投手で絞ると、平均球速は1位から3位までを最近3年間の大谷が独占している。

    ちなみにプロ1年目の大谷の平均球速は149.2キロで、これはダルビッシュの日本での最終年(2011年、149.4キロ)とほぼ同じだ。

    バッター大谷でいえば、今年は飛距離が伸びて、センターからレフト方向へのホームランが増えてきた。22本塁打の内訳はレフト6本、センター10本、ライト6本。左右に飛ばせるパワーバッターに成長している。

    そのため、相手投手からも警戒される。今年、パ・リーグ全打者の中で内角へ投球される割合が多かったのが、柳田(ソフトバンク)に次いで大谷だ。

    しかし、大谷はその内角の打率が3割2分3厘と、こちらもパ・リーグ2位の高い数字を残していた。

    「すべてが規格外」

    取材に協力してくれた金澤さんもこう話す。

    もし同じ2人が対戦したら……。今回のような“妄想”ができるのも、二刀流を使いこなす日本球界の宝、大谷翔平の魅力だろう。