男子高校生の宝塚「カヅラカタ」が素晴らしい… その狙いを聞いた

    きっかけはウォーターボーイズ?

    東海高校カヅラカタ歌劇団の舞台が、レベルが高すぎと話題になっています。

    …みなさん……きこえますか……今日は東海中学、高校のカヅラカタを見にいってきました…東海中学東海高校は男子校です…もう1度いいます…東海は男子校です…カヅラカタというのは宝塚のパロディで現役男子高校生中学生のみでやっているのです……

    カヅラカタ歌劇団は、東海中学・高校の中学1年生〜高校2年生の有志で結成されたもの。同校は男子校なので、団員はすべて男子生徒です。また、東海高校は9年連続で、国公立大学医学部への合格者が日本一。

    本公演は、今年で14年目を数える歴史あるもの。2012年には、ドラマ化もされるほど話題になりましたが、なぜ男子生徒が宝塚を……? BuzzFeed Newsは、顧問の久田光政先生にその狙いを聞きました。

    きっかけは、ウォーターボーイズ?

    「14年前の文化祭実行委員長が、文化祭を盛り上げる企画として、当時話題になっていた『ウォーターボーイズ』をリスペクトし、ウォーターボーイズではないウォーターボーイズ的なものとして、男子生徒による宝塚ミュージカルを思いついたのがきっかけです」

    初期メンバーの10人ほどの男子生徒たちは、春休みに学生服姿で宝塚大劇場へ行き、宝塚ミュージカルを観劇。周りの客からは、かなり好奇の目で見られたそう。

    初めてみた宝塚に感動した生徒たちは、「やるからには真面目に、本気に」をモットーにし、カヅラカタの歴史は始まりました。

    団員はすべて演技もダンスも素人。本家、宝塚のDVDなどを見て、真似るところから始まります。

    ほかの部活と兼任する生徒もおり、なんとか人数を揃えて公演ができるようにしてきました。

    今年のエリザベートのほかにも、過去の演目には「ベルサイユのばら」、「ナポレオン」「ロミオとジュリエット」、「ファントム」、和物の「竜馬伝」など。

    そこまで宝塚にこだわる理由は、「宝塚愛だから(笑)」と久田先生。

    「宝塚は女性が演じますよね。それを、男子生徒が行うことに意味があると思うんです。だから、宝塚を逆さから読んだ『カヅラカタ』と命名し、劇団四季は絶対やらないんですよ(笑)」

    元宝塚劇団が指導!?

    第1回公演から名古屋では話題になり、会場の同校講堂(座席数1350人)には、2000人を超える人々が詰めかけ、通路やステージの真下まで客が埋まり、講堂横の廊下には人が溢れ、「入れろ!」という怒号が飛び交うほどの大混乱になったそう。

    翌年からは、完全座席指定として混乱を未然に防ぎましたが、朝5時から当日券を求める人が並ぶほどに。

    公演を続けていくうちに、口コミでさらに話題となり、第10回から1日2回公演となります。さらに同校オーケストラ部が生演奏をし、約3000人が観劇しました。

    10回までは、文化祭の一環として行われていましたのが、11回からは文化祭から独立して、公演(1日2回公演)が行われるようになりました。

    また、生徒の熱心な姿勢から、本家の宝塚からも注目されるようになります。今では、ダンスは元宝塚歌劇団月組の名鶴ひとみさんが指導しています。

    今年は元宝塚歌劇団雪組トップスターの一路真輝さんと、劇作家の小池修一郎さんが観劇しました。

    「生徒には、公演が終わるまで内緒にしていました。緊張して、演技に支障が出たら困りますからね(笑)」と久田先生。

    ルキーニを演じた団長の武田達哉さんは公演後、ブログでこのように綴っています。

    なんといっても、サプライズゲストに小池修一郎先生、初代トートを演じられた一路真輝さんがいらっしゃったこと、もう、歓喜のあまり言葉が出ませんでした。

    ミュージカルと教育

    久田先生は、「ミュージカルは教育的にいい」と考えています。

    「演劇は主役が決まっていて、スポットライトはほとんど主役にしか当たりません。ミュージカルは、主役は決まっているものの、脇役でもソロで歌ったり、センターでダンス踊ったりします。それは誇りでもあり、うれしいことなんです。ですから、緊張もし、より懸命に、熱心に練習をします」

    「そして努力した成果として、お客様から拍手をいただくことができます。やや誇張していえば、ミュージカルは出演者全員が主役になれるんです」

    「また、宝塚という高い目標があり、そこに少しでも近づけるように、繰り返し宝塚の演技を真似ます。『まなぶ』の語源は『まねぶ』です」

    久田先生は、続けてこう語ります。

    「さらに、公演を成功させるために団員同士が人間関係を深め、実に多くの方々のご協力を仰ぎ、満員のお客様に見ていただけることで、一つのミュージカルができあがります」

    「東海は浄土宗の学校ですが、浄土宗は『共生(ともいき)』を宗派の理念としています。カヅラカタ歌劇団は、『共生』を体験する場ではないかと思っています」

    「こうしたカヅラカタでの経験は、多くの人たちと共に築きあげる『自己肯定感』を育むことであり、それは受験でも、その後の人生にとっても、とても大切なことだと私は思っています」

    これから目指すもの

    最後に、東海高校カヅラカタ歌劇団がこれから目指すものを聞きました。

    「とくにありません。これからも、お客様に喜んでいただけるものを、創っていければいいなと思います」