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受動喫煙対策、国会議員アンケートでわかった5つの「傾向」

回答した国会議員は何を見ているのか、何を見ていないのか。

国会議員は「受動喫煙」をどう理解している?

BuzzFeed Japanは東京大学国際保健政策学教室教授の渋谷健司氏らと共同で、全国会議員707名を対象とした緊急アンケートを実施した。自民党の回答率が7.9%(407人中32人)と他党と比べて著しく低く、有効回答も17.7%(707人中125人)と低い結果になった。

回答した議員には、いくつかの傾向があった。

回答した議員のほとんどが、受動喫煙と関連する病気があること、その対策は分煙では十分でないことを知っていた。しかし、飲食店に対する方針については回答が分かれ、さまざまな認識があることがわかった。以下、アンケートに添えられたコメントから、その例を紹介する。

傾向1. 「分煙」についての矛盾した認識

小倉將信議員(自民党)、宮下一郎議員(自民党)、高野光二郎議員(自民党)のコメント。

「分煙では受動喫煙を防げないことを知っているか」という質問に対して、上記3名の議員は「今回の法案においては望まない受動喫煙を防ぐため、屋内原則禁煙とした上で、喫煙専用室を設置するものと承知している」とコメント。「喫煙専用室を設ける」=分煙であり、矛盾が生じている。

なお、一字一句、同じコメントを寄せたため、自民党内で回答の例文が存在していることがうかがえる。文頭・文末に多少の改変はあるが、ほぼ同様の回答をした議員には、他に石井正弘議員(自民党)、稲田朋美議員(自民党)などがいた。

大口善徳議員(公明党)のコメント。

公明党の大口議員は同じ質問に「現在、厚労省が検討している法案においては、屋内は原則禁煙とした上で、室外への煙の流出防止措置の講じられた喫煙専用室では喫煙が可能であると承知している」とコメント。「室外への煙の流出防止」は完全には不可能であり、分煙への認識は不十分だった。

櫻井周議員(立憲民主党)のコメント。

「飲食店の受動喫煙対策は、どのような方針であるべきか」という質問に、立憲民主党の櫻井議員は「全面禁煙としつつ、仕切られた喫煙スペースを設けてもよい」とコメント。「仕切られた喫煙スペース」=分煙であり、受動喫煙の害と分煙では防げないことを知りながら、分煙を主張する矛盾があった。

傾向2. 「小規模飲食店の経営」への配慮

盛山正仁議員(自民党)のコメント。

自民党の盛山議員は同じ質問に「全面禁煙をめざしたいが、生活がかかっている小規模店舗もあるので段階的にやっていく方が良いだろう。死活問題である」とコメント。小規模飲食店に配慮をみせた。一方で、盛山議員は非喫煙者で「近くで喫煙された場合は席を立つ」とコメント。

近藤昭一議員(立憲民主党)のコメント。

立憲民主党の近藤議員は同じ質問に「基本的に全面禁煙とすべきだと考えるが、どうしても改修ができないほどの小規模店は例外とするのもやむを得ないかとも思う」と回答。同様に、小規模飲食店に配慮をみせた議員は、他に公明党の高瀬弘美議員(「方針は全面禁煙であるべきだが中小企業等個別事情への配慮は必要」)がいた。いずれも、受動喫煙による健康への害を認識していながら、小規模飲食店の経営を優先する形だ。

ただし、飲食店への経済的影響については、WHOの国際がん研究機関がすでに分析をしている。信頼性の高い49の調査を検討すると、47の調査で売り上げは減っていなかった。日本でも、愛知県の調査においては、自主的に全面禁煙にした店は、ほとんどが売り上げは減らなかったと回答。産業医大がファミリーレストランを対象に実施した調査では、全席を禁煙にした店の収入は逆に増えていた。

傾向3. 「経過措置」を主張

秋野公造議員(公明党)のコメント。

公明党の秋野議員は同じ質問に「将来は選択肢1も当面は選択肢2」とコメント。ここで、選択肢1とは「飲食店の広さに関係なく、全面禁煙とするべき」、選択肢2とは「飲食店の広さによって、禁煙、分煙、喫煙を分けるべき」である。ちなみに、秋野議員は医師。

白石洋一議員(希望の党)のコメント。

希望の党の白石議員は同じ質問に「段階的に選択肢1(3〜5年)」とコメント。経過措置の期間を具体的に述べた。

石田昌宏議員(自民党)のコメント。

自民党の石田議員は同じ質問に「原則全国禁煙。」とした上で、「やむを得ない場合は、猶予期限を設け、その間は明確に『禁』『分』『喫』に分けながら、全飲食店に対応を促す。期限終了後は全国禁煙とする。」とコメントした。

小倉將信議員(自民党)、宮下一郎議員(自民党)、高野光二郎議員(自民党)、園田修光議員(自民党)、大口善徳議員(公明党)のコメント。

上記5名の議員は経過措置について、全く同じ文言で「原則としては飲食店の広さに関係なく屋内禁煙とし、喫煙専用室内でのみ喫煙を可能とすべき。その上で、喫煙専用室等の整備をすることが困難な経営規模の小さな既存飲食店については必要な経過措置を設けるべき」とコメントしている。

傾向4. 「禁煙」「分煙」「喫煙」を明記すればOK

平沢勝栄議員(自民党)のコメント。

再度、「飲食店の受動喫煙対策は、どのような方針であるべきか」という質問に、自民党の平沢議員は「そのことを屋外に明記すること」とコメント。

藤田幸久議員(民進党)のコメント。

民進党の藤田議員は、同じ質問に「広さといった区分でなく、客や事業主が自分で主体的に判断する対応を検討すべきでは?」とコメント。

傾向5. 業種・業態によって判断するべきと主張

大西健介議員(希望の党)のコメント。

希望の党の大西議員は、同じ質問に「単に広さでなくバーやスナックなど業種も考慮すべき」とコメント。同党では、関健一郎議員も「飲食店の広さに関係なく全面禁煙とすべき。ただし、シガーバーなどタバコや葉巻を吸うための店も認めるべき。」とコメントしている。

広田一議員(無所属の会)のコメント。

無所属の会の広田議員は「広さというよりは、飲食店の個別的事情・方針によるべき。スタッフが喫煙者のみで、喫煙を目的とする客のみが利用する業務形態であれば、可能とする余地があると思われる。」とコメント。広さによる一律の規制には反対する意見だった。

その他. 山東昭子議員(自民党)のコメント。

自民党受動喫煙防止議員連盟会長のの山東議員は、アンケートに回答しなかった。しかし、以下のようにコメントしている。

「とにかく、100%の法律は仲々作れません。これが最後ではありませんので社会の様子と時代の流れをご一緒に見て参りましょう。」

このアンケートでは、受動喫煙対策に積極的な議員ほど回答し、そうでない議員は回答をしないこともありえる。受動喫煙対策はどうなっていくのか、BuzzFeed Japanでは引き続き、調査をしていく。