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不安の声が続出の「アルコール規制」 厚労省「議論はこれから」

広告審査委員会は「今のところ、特に動きはないです」

厚生労働省が4月1日にアルコール健康障害対策推進室を新設したことを発端に、今後「アルコール規制」が進むのでは、という懸念がネットで広がっている。

Twitterでも、「酒類の値上げ」「飲み放題システムの禁止」「酒類の自動販売機での販売禁止」「屋外や公共施設での飲酒規制」などを心配する多数の声が上がった。

BuzzFeed Newsでも報じたタバコ規制の問題と絡め、「嗜好品が奪われる」といった意見も目につく。

実際のところはどうか。BuzzFeed Newsは関係省庁・組織を取材した。

厚労省は「内閣府から計画を引き継いだばかりで、議論はこれから」と説明。

まず、厚生労働省の本件担当者は、アルコール健康障害対策推進室の設置は「あくまでもアルコール健康障害対策基本計画に則ったもの」と強調した。

アルコール健康障害対策基本計画は、2014年に施行されたアルコール健康障害対策基本法に基づいて、2016年5月に策定された。2020年までの期間を予定している。

同計画はもともと内閣府が担当していたが、3年以内に厚労省に引き継ぐことが決まっており、それが今年4月に行われた、という経緯だ。

では、アルコール健康障害対策推進室の業務とは何か。

厚労省担当者によれば、主に「都道府県ごとにアルコール健康障害対策推進計画の策定を要請すること」と、「アルコールに関する医学的な研究の支援」「アルコールに関する正しい知識の啓蒙」だという。

話題の「酒類の値上げ」「飲み放題システムの禁止」「酒類の自動販売機での販売禁止」「屋外や公共施設での飲酒規制」などについては業務範囲なのか。

同担当者は、「健康に関することは厚労省として議論することがあるかもしれませんが、酒類の価格に関することは厚労省ではなく、国税庁の業務範囲です」と回答した。

では、健康に関するアルコール規制の議論は進んでいるのか。これについては、別の厚労省担当者が「まだ内閣府から引き継ぎをして推進室が設置されたばかりで、あくまでも議論はこれから」と説明した。

国税庁「改正酒税法は施行されるが、これは以前から議論してきたもの」。酒類の広告審査委員会「今のところ、特に動きはない」。

一方、BuzzFeed Newsが国税庁酒税課の担当者に「価格に関すること」を聞くと、同担当者はまず「酒類の値上げ」について、6月1日に改正酒税法が施行されることに触れた。

不当廉売を禁止し、違反者には重い場合は行政処分などもあり得る内容になっているため、ディスカウントショップや量販店で「原価を下回る価格での酒類の販売」がなくなり、体感的には値上げになる可能性はある。

しかし、これは以前から議論されていたもので、「最近になってどうこう、というわけではない」(国税庁担当者)

また、「飲み放題」「自販機」についても、以前から事業者に自主的な対応を要請してきた経緯はあるが、「現時点で新しい動きはない」と否定した。

では、業界団体の自主規制の現状は。

アルコール健康障害対策基本計画では、酒類業界に対して、未成年者や妊産婦などの「飲酒すべきではない者」が飲酒したくならないように、また、アルコール依存症の当事者への配慮から、広告・宣伝の自主基準を改正することを求めている。

具体的には、「テレビ広告における起用人物の年齢の引上げ及び飲酒の際の効果音・描写方法の見直し」などの記載がある。

過去には、この記載を受けて「テレビ広告で喉元を通る“ゴクゴク”などの効果音は使用しない」という自主基準が制定され、2016年の7月から適用された。

このような自主基準の施行状況を審査する組織である、酒類の広告審査委員会にBuzzFeed Japanが取材すると、広報担当者は「今のところ、特に動きはない」と回答した。

(サムネイル画像:Woodkern / Getty Images)