【参院選】32歳は「ヤングのスター」? 政党や行政の若者対策はズレてないか

    若い候補なら若者の気持ちがわかるとは限らない。

    「SPEED」今井絵理子さんが選挙カーの上に

    6月22日、参院選がはじまった。東京・有楽町、自民党の参院選比例代表候補として、はじめてマイクを握った候補者がいた。

    国民的な人気を誇った「SPEED」の今井絵理子氏、32歳。小学6年の長男は聴覚障害がある。聾学校でのボランティア活動などに、熱心に取り組んでいることを見込まれた。

    オレンジ色のTシャツを着た今井さんの後ろには、手話通訳がつく。正午過ぎ、有楽町マリオン前で、今井さんの出陣式が開かれていた。自民党系の地方議員、国会議員が次々にマイクを握り、応援演説に立つ。スタッフや報道陣を除いた聴衆は、100人前後といったところか。

    自民党「今井さんはヤングデモクラシーの旗手」

    自民党が今井さんに期待しているのは、抜群の知名度を活かした若者票の取り込みもあるようだ。

    後見人を自任するタレント出身の山東昭子参院議員(自民)は、こう持ち上げる。

    「18歳の青少年たちがこれからの日本をどんな国にしていくのか。平和で豊かで、そして若者たちが希望を持てる社会を作っていくために、皆様方が一票を投じて、この国をどういう風にしていくか。選択肢がいま与えられている。(この国の)担い手として今井絵理子がいる」

    高村正彦・副総裁はこうだ。

    「ヤングデモクラシーの旗手なんですよ。ヤングデモクラシーのスターなんですよ。この人がいるから、若い人がどんどん投票に行くんです。必ず行きます。頭脳明晰、論理明快。100人に1人の政治家です」

    平日の昼間、若者はそんなに多くはない。小さな赤ちゃんを抱いた母子、スマホで写真を撮って立ち去る20代の会社員はいたが…。

    「若い候補」なら若者の気持ちがわかるという発想

    私も彼女と同じ32歳。永田町では若いかもしれないが、社会人として「若手」で通用する年齢はとうに過ぎた。だいたい、選挙権を与えられたばかりの18歳、20代前半とは10歳以上、離れている。

    自民党が考える「ヤング」が具体的に、どのような年齢層を指すのかは不明だが、「若い候補者なら若者の気持ちがわかる」「若いタレント候補を起用すれば、若者が興味を持つ」と考えるのは、短絡的だろう。

    周囲の熱をよそに…

    もっとも今井さん自身は、周囲の熱をよそに若者をターゲットに投票を呼びかけるような発言はしなかった。

    長男の誕生とともに覚えた手話を取り入れ、自身の育児経験、聾学校などでのボランティア経験を交えながら「障害はひとつの個性です。個性を認め合える社会を作りたい。政治は希望、希望を形にするのが政治家の役目だと思っている」と訴えていた。

    有名人×ポップな作り=若者向けという発想

    タレントを起用して、関心を高める。この発想は野党も行政も大差がない。

    民進党はポップな特設サイト「VOTE18」を立ち上げ、人気モデルと政治家のトークなどコンテンツを充実させている。

    東京都選管も有名人を起用して、投票を呼びかけるキャンペーンサイト「TOHYO都」を立ち上げる。

    2000年代以降、参院選で20代の投票率はだいたい35%前後で推移。65%は棄権している。

    こうした発想が、投票率や関心を高めることにつながるのか。その結果は、参院選の投開票日、7月10日に明らかになる。