BPOに寄せられた視聴者の意見
SMAP問題を視聴者はどう見ていたのか。BPO(放送倫理・番組向上機構)が視聴者から寄せられたSMAP問題に関する意見の一部をホームページ上で公開している。共同通信によると、この問題に関する視聴者意見は1月末までに約2800件に達している。
「謝罪するべきは、騒動を起こした事務所サイドであって、アイドルグループではない。事務所によるパワハラ、公開イジメのようだった。弱い者いじめの構図をまざまざと見せつけられたようで、不愉快だった」
「番組公式ツイッターで、アイドルグループの会見に対する感想を募集していた。番組で取り上げられたツイートは、会見に対して肯定的な意見がほとんどで、私がサイトで実際に見た多くのツイートの印象とは真逆だった。これは情報操作ではないか」
「企業による公開パワハラであり、電波の私物化だ」
寄せられた意見の中で目立つのは、「パワハラ」や情報の選定といった他の社会問題と同じ言葉で問題を語ろうとする視聴者の姿だ。
単なる芸能スキャンダルではなく、社会問題の一つとして騒動を捉えていていることがわかる。
「これは、わたしたちがよく見る光景である」
作家の高橋源一郎さんも同じように、いまの社会が抱える問題として捉えている。
高橋さんは月に1回掲載される朝日新聞の論壇時評でSMAP問題を取り上げた。
いったい、彼らは、なんのためにそこにいて、誰に、どんな理由でそのことばを口にしているのか。どれもよくわからないことばかりだった。同時に、これは、わたしたちがよく見る光景であるようにも思えた。
SMAPの「謝罪」会見を見て、どこか同じ境遇を感じた会社員は多かった。華やかな世界に生きる彼らも、実は「事務所」という「組織」が決めた暗黙のルールに従わざるをえない「組織の中の人」だったのだ。
コラムニストの小田島隆さんは日経ビジネスオンラインのコラムでこう書く。
誰もが認めるあれだけの大スターが、会社を辞める自由さえ与えられていないこと。
あれほどのトップアイドルであっても会社から放り出されたら路頭に迷うほかに選択肢が無いはずだという見方を、世間の多くの人々が信じてしまっていること。
こういう世界観は、子供たちを著しく萎縮させる。
2人に共通しているのは芸能界という特殊な空間で起きた出来事ではなく、多くの社会人に共通する問題として切り取る視点だ。
「放送された内容それ自体が放送倫理違反というわけではない」
BPOは放送番組に関する問題を業界で自主的に解決するために、NHKと民法が設立した第三者機関だ。視聴者から意見を受け付け、番組内容を審査して各放送局に意見する。
大量の意見を寄せられたBPOは、どう判断するのか。
朝日新聞によると、BPOの川端和治・放送倫理検証委員会委員長は「我々が扱う案件かどうかという観点でいうと、本人たちから被害を受けたという訴えがあれば別だが、放送された内容それ自体が放送倫理違反というわけではない」と述べ、この件について審議入りしない考えを示しているという。
BuzzFeed NewsがBPOの見解を確認したところ、広報担当者は「委員長が囲み取材に応じたのは事実だ。個別の取材には一切、応じていない。広報としてお答えできることはない」と話した。