【相模原事件】容疑者は「措置入院」していた その精神状態が注目される理由

    裁判に影響する可能性

    19人が死亡し、「戦後最大級の大量殺人」となった神奈川県相模原市の事件。注目を集める話題の一つが、逮捕された植松聖容疑者の精神状態だ。

    容疑者は「措置入院」していた

    NHKは植松容疑者が今年2月、「措置入院」していたと報じた

    措置入院は、精神障害で「抑うつ状態」などの症状があり、自分や他人を傷つける恐れがある場合、強制的に入院させること。

    本人の意思と関係なく、原則として医師が診断したうえで知事が認めれば入院させられる。詳しい基準は厚労省が定めている。

    NHKによると、入院した際、植松容疑者の尿から大麻の陽性反応が出た。「大麻精神病」や「妄想性障害」などと診断されたが、12日後の3月2日に症状が無くなったとして退院したという。

    措置入院は、理由がなくなれば「直ちに」退院させなければならない。法律で次のように決まっている。

    「入院を継続しなくてもその精神障害のために自身を傷つけ又は他人に害を及ぼすおそれがないと認められるに至つたときは、直ちに、その者を退院させなければならない」

    相模原市の担当者は、NHKの取材にこう話している。

    「退院の判断をした時点では、症状が改善していたことや本人の話を参考にして、最善の判断をしたと思っている。しかし結果が重大なので、厚生労働省とも相談しながら今後の対応を検討していきたい」

    刑事手続に影響する可能性

    措置入院していたことや、退院の判断に注目が集まるのはなぜか。それは、容疑者の精神状態が、今後の刑事手続に影響を与える可能性があるからだ。

    刑法39条にこんな条文がある。

    心神喪失者の行為は、罰しない。

    心神耗弱者の行為は、その刑を減軽する。

    これは、自分の行動の善悪を適切に判断する能力や、理性的な判断で自分をコントロールする能力がない「心神喪失」の場合は、処罰しない。そして、そうした能力が著しく衰えている「心神耗弱」の場合は刑を軽くする、というルールだ。

    精神障害の程度によっては、これらに当たり、裁判で無罪になったり、科される刑が軽くなる可能性が出てくる。

    19人死亡という重大な犯罪。関係者だけでなく、日本社会全体に衝撃を与えた。どのような判断が下されるのか。今後は容疑者の精神鑑定などが予想される。