戦後の節目、震災、感謝……天皇陛下が語ってきたこと

    「戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません」

    7月13日、生前退位の意向があると報じられた、天皇陛下。これまで述べられてきた震災、戦後の節目、皇后さまへの思い……。 「おことば」をまとめた。

    阪神大震災

    「救援のために日夜尽している関係者の労苦を思うと共に、この不幸な時期を皆が強い連帯と協力の下に乗り越え、今後、災害に対し、より強く、安全な国としてあることに、人々の英知が寄せられていくことを衷心より願っています」

    戦後50年

    戦後50年を記念する集い(1995年)

    「戦後50年という節目の年に当たり、過去の歴史に多くを学ぶとともに、これまで日本を支えてきた国民の力と英知に深く思いを巡らせつつ、これからの道を正しく歩いていきたいものと思います。

    今日、我が国が享受する尊い自由と平和の中にあって、国民の創造性が伸び伸びと発揮され、国の繁栄が国民一人一人の幸せにつながっていくことを期待するとともに、日本国民が国内にあっても世界の中にあっても、常に他と共存する精神を失うことなく、慎みと品位ある国民性を培っていくことを、心から念願しております」

    婦人参政権50年(1995年)

    「選挙は国民が投票を通じ国政に参与するという民主政治の基礎でありますが、我が国では、105年前、制限選挙により衆議院の選挙が行われてから、選挙権が成年に達した全国民に及ぶに至るには、先の戦争を挾み、50年以上の歳月の経過を見ました。ここに、選挙制度の歩みを顧み、長年にわたり、より民主的な選挙制度の確立を求めて努力を重ねた先人の苦労をしのび、深い敬意を表します」

    東日本大震災

    「被災者のこれからの苦難の日々を、私たち皆が、様々な形で少しでも多く分かち合っていくことが大切であろうと思います。被災した人々が決して希望を捨てることなく、身体を大切に明日からの日々を生き抜いてくれるよう、また、国民一人びとりが、被災した各地域の上にこれからも長く心を寄せ、被災者と共にそれぞれの地域の復興の道のりを見守り続けていくことを心より願っています」

    戦後70年、パラオにて

    「先の戦争においては、貴国を含むこの地域において日米の熾烈な戦闘が行われ、多くの人命が失われました。日本軍は貴国民に、安全な場所への疎開を勧める等、貴国民の安全に配慮したと言われておりますが、空襲や食糧難、疫病による犠牲者が生じたのは痛ましいことでした。ここパラオの地において、私どもは先の戦争で亡くなったすべての人々を追悼し、その遺族の歩んできた苦難の道をしのびたいと思います」

    2015年、全国戦没者追悼式

    「終戦以来既に70年、戦争による荒廃からの復興、発展に向け払われた国民のたゆみない努力と、平和の存続を切望する国民の意識に支えられ、我が国は今日の平和と繁栄を築いてきました。戦後という、この長い期間における国民の尊い歩みに思いを致すとき、感慨は誠に尽きることがありません」

    皇后さまへの感謝

    「天皇という立場にあることは、孤独とも思えるものですが、私は結婚により、私が大切にしたいと思うものを共に大切に思ってくれる伴侶を得ました。皇后が常に私の立場を尊重しつつ寄り添ってくれたことに安らぎを覚え、これまで天皇の役割を果たそうと努力できたことを幸せだったと思っています」