安倍首相「2020年までに憲法9条に自衛隊明記」 学者から見て現状は違憲なのか?

    読売新聞のインタビューなどで憲法9条改憲を明言した。

    9条に自衛隊を明記する方針

    安倍晋三首相は憲法記念日の5月3日、平和主義を定めた憲法9条を2020年までに改正し、自衛隊の存在を明文化する考えを示した。読売新聞のインタビューや保守団体「日本会議」が主導する集会で明らかにした。

    憲法改正が実現すれば、戦後初となる。

    悲願の憲法改正。安倍首相が9条改憲を目指すと公言する場に選んだのは、同じく長年改憲を主張してきた読売新聞だった。

    同紙によると、インタビューは約40分間。4月26日に首相官邸で実施された。

    安倍首相は東京オリンピック・パラリンピックが開かれる2020年を「日本が新しく生まれ変わる大きなきっかけにすべきだ。20年を『新しい憲法』が施行される年にしたい」と語ったという。

    具体的な改正項目について、9条をあげた。9条は平和主義を定めた第1項、戦力の不保持を定めた第2項の2つの条文からできている。以下の通りだ。

    日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。

    前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。

    安倍首相はこの条文を維持した上で、「自衛隊の存在を記述」する条文を加えるとしている。そのような改正が必要な理由について、こう述べている。

    首相は「自衛隊が全力で任務を果たす姿に対し国民の信頼は9割を超えている一方、多くの憲法学者は『違憲』と言っている」と指摘。「北朝鮮情勢が緊迫し、安全保障環境が一層厳しくなっている中、『違憲かもしれないが、何かあれば命を張ってくれ』というのはあまりにも無責任」と述べ、「私の世代は自衛隊を『合憲化』することが使命」との考えを示した。

    「多くの憲法学者は自衛隊を違憲だと言っている」と語る安倍首相。朝日新聞が2015年6月に憲法学者を対象に実施したアンケートによると、自衛隊の存在は憲法違反にあたる、またはその可能性があると答えた学者は122人中77人いた。

    • 憲法違反にあたる: 50人
    • 憲法違反の可能性がある: 27人
    • 憲法違反には当たらない可能性がある: 13人
    • 憲法違反には当たらない: 28人
    • 無回答: 4人

    ただ、上の内訳からもわかるように41人は憲法違反にはあたらない、または当たらない可能性があると答えている。

    自衛隊は違憲か合憲か

    安倍首相は「私の世代は自衛隊を『合憲化』することが使命」と述べているが、現状の憲法でも「自衛隊は合憲」と解釈する憲法学者は一定数いる。

    自衛隊合憲派の代表格は、安倍政権が進めた安保法に反対する急先鋒だった長谷部恭男・早稲田大大学院教授だ。

    2004年に発表した『憲法と平和を問いなおす』などで自衛隊の存在は合憲だと主張してきた。過去には記者会見で、こんな発言をしている。

    「自衛隊は合憲であると考えている。立憲主義と絶対平和主義という9条解釈は両立しないと考えている。絶対平和主義で国民の生命・安全を保障することはできない。絶対平和主義という価値観を憲法に読み込むのは特定の価値観の強制である」(2015年6月15日、日本記者クラブ)

    最後は国民投票

    政府・与党はすでに憲法改正の発議に必要な3分の2を衆院で確保し、参院でも改憲に前向きな議員を含めると3分の2を超えている。憲法改正が実現するかどうかは最終的に国民投票で決まる

    投票総数2分の1以上の賛成があった場合、戦後初の憲法改正が実現する。

    毎日新聞の世論調査(2017年)によると、憲法9条改正について「改正すべきだと思わない」が46%で、「思う」の30%を上回っている。