米大統領選を制したドナルド・トランプ氏。どんな人たちが支持したのか?
5カ月前、全く違う国で行われたにもかかわらず、投票者のいくつかの特徴が似通う政治イベントがあった。EU離脱を巡る英国民投票だ。出口調査から浮かんだ、その共通点は「学歴・年齢・居住地」だった。
アメリカとイギリス——。歴史から人口、政治システムまで全く違う2国だ。
だが、米大統領選でも英国民投票でも、移民や雇用が焦点となったことは共通する。いずれも事前の予想を覆し、離脱賛成派が反対派を上回り、トランプ氏がクリントン氏を抑えた。
トランプ氏支持者と離脱支持者の特徴について、出口調査などから探ると、共通項がいくつか見えてくる。
①教育レベル
傾向の一つが、教育レベルによる違いだ。CNNが出口調査をしている。
教育レベルが高いほど、トランプ氏支持者の割合は減る傾向
6月23日(現地時間)にあったEU離脱をめぐる英国民投票でも同じ傾向があった。YouGovが調べている。
教育レベルが高いほど、EU離脱支持者の割合は減る傾向
ガーディアンも調査で、大卒かどうかが、どちらに投票したかを決める最良の変数だったと指摘した。(残留が大勢を占めたスコットランドは例外)
②年齢
米大統領選のトランプ氏支持は、年齢によっても大きな違いがあった。
年齢が高いほど、トランプ氏支持者の割合は増える傾向
この傾向は、英国民投票でも見られた。
年齢が高いほど、離脱支持者の割合は増える傾向
地方に行くほど、トランプ氏支持者の割合が増える傾向
これはEU離脱をめぐる英国民投票でも見えた傾向だ。Financial Timesによると、英EU離脱支持が過半を占めた地区(緑色)は郊外から地方に広がっている。(残留が大勢を占めたスコットランドは例外)
なにが起きているのか
政治分析サイト「FiveThirtyEight」のクレア・マローン記者は「地方でトランプ氏への投票が多い。これがこの選挙の興味深い伏線だ」と書いている。
「拡大する都市・地方の分裂」と題する投稿では、出口調査をこう伝える。
地方の投票者の41%は「次世代の生活は悪化する」と答えた。都市(27%)を大きく引き離した。地方の72%が「現在の経済状況は悪い」と感じていた。都市は57%だった。経済問題の解決にふさわしい候補は、地方の63%がトランプ氏、都市の57%がクリントン氏と答えた。
「これは驚くべき『都市ネズミと地方ネズミ』の分断だ。すぐには消えないだろう。この秋メーン州の地方、第2下院選挙区を訪れたとき、現状への不満を多く耳にした」
この選挙区は、ジャガイモやリンゴ畑が広がる伝統的なアメリカの田舎で、白人が95%、ベビーブーム世代以上が約半数を占める。25歳以上のうち大卒以上は約半数だ。「経済成長だけでなく、21世紀のアメリカで革新を続けるテック文化からも取り残されている感覚。これを代弁してくれるのがトランプかもしれない」とマローン記者。この地の製紙工場は相次いで閉鎖している。
ワシントンポスト紙などの3月の世論調査によると「生活水準を維持することを困難に感じている」と答えた人は、よりトランプ氏を支持する傾向があった。トランプ氏支持と現在の収入に相関はみられなかった。
EU離脱の英国民投票を受けて、政治学者らもこんな分析を披露していた。
時事通信は、ケント大のマシュー・グッドウィン教授(政治学)の分析を紹介していた。
「労働者階級、高齢者、地方の住民」は、移民が増える脅威を重視して離脱を支持した。「中産階級、若者、大都市の住民」は、離脱の経済リスクを重視して残留を支持した。
さらに、LSEのサイモン・ヒックス教授(政治学)は、グローバリゼーションによって、こんな2者に対立構造が生まれたと指摘する。
「移民により利益を得る都市居住で高学歴のコスモポリタン」と「移民から雇用などの脅威を受ける、地方居住で恵まれていないと感じている旧世代」
米大統領選の結果を受けて、Twitterではこんな画像が話題に。「未来を担う人たちが投票していたらこう。18〜25歳の人たちの投票行動」。青のクリントン氏が圧勝している。
こうした調査結果をどう読み解くか。ここに、トランプ氏の選挙戦が残した分断を癒す鍵があるのかもしれない。
米大統領選の出口調査の詳細(いずれも英語)