Google人工知能が官能小説を猛勉強するワケ

    題名は「興奮」

    「彼女のブラウスが弾け開いた。ピンクの下着からのぞく白く柔らかな塊と深い割れ目に、彼はめまいを覚えた。うれしい誤算だった。それはいつも糊のきいたシャツの下に隠されていたからだ」

    Googleの人工知能チームはこれを研究している。真剣に。

    「多様な表現」磨く

    「無条件の愛」「燃やされて」「破滅的な欲望」「興奮」ーー。Googleはここ数ヶ月、こんな題名の小説を人工知能に読ませ、淫靡で官能的な文章を学ばせている。

    なぜか。人工知能は単純な返事しかできず、個性を出すのも難しい。研究者たちは官能小説の文章を解析すれば、能力が向上すると考えた。

    話の筋はほぼ同じ。「女性が男性に恋をする。でも、男性は別の女性を愛している。悲恋です」とGoogle研究チームのダイ氏。だが、作品には表現豊かな言葉が使われているため格好の教材になる。

    似たような意味を持つ文章を判別したり、言葉の微妙な言い回しを理解したりできるようになる。つまり、人工知能には、幼児向け学習本より官能小説が向いているようだ。

    2865作品を熟読

    そもそも、人工知能はなぜ学習が必要なのか。

    ニューラルネットワークとも呼ばれる人工知能のエンジンは「知識」がない状態からスタートする。

    小説から抜き出した文章を入力するのは、親が幼児に読み聞かせするようなもの。そこから学び取っていく。

    だからこそ大量のデータ入力が必要になる。使った官能小説は2865作品に及んだ。

    蓄積したデータから、文を組み立て、その文とオリジナルの文を比較して評価する。この過程を繰り返し、成長していく。

    Tayの失敗

    Microsoftが「19歳の女性」として3月に公開した人工知能Tayが暴走したのは記憶に新しい。Tayはたった1日で虐殺や差別を支持し、ユーザーを性的に挑発する存在に変わった。

    Googleは同じ失敗を起こさないように最新の注意を払っている。

    「(この研究は)極めてセクシー、想像をかき立てるものです。よくないこと、予期せぬことが起こるリスクをどう最小限に抑えられるか、プロダクト側の人間と緊密に協力しています」とダイ氏。

    人工知能に恋?

    最後に大きな疑問が残った。人間が、官能小説で育った人工知能と恋に落ちることはあるのだろうか?

    「最終的にはあり得るかもしれませんね」とダイ氏。

    「こんなギリシャ神話があります。ある男が女性の像をつくった。どんな女性よりも美しい像だった。男はその像に恋をした」

    「像に恋することがあるならば、官能小説で訓練されたニューラルネットワークに恋することも否定できませんね」

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