全国的にバターが品薄です。「1人1個」と制限するスーパーも多いです。一般的な食材なのに、なぜ、手に入りにくいのでしょう。
1. 品切れを防ぎたい
バター不足が報じられ始めたのは2014年春。「農家の廃業や猛暑が理由」(朝日新聞)などと言われた。
実は、当時に比べると不足は解消しているという。農水省の担当者はBuzzFeed Newsの取材に「足りている」と話す。農畜産業振興機構という組織が1月第4週に首都圏や近畿のスーパー96店を調べると、94店にバターがあった。
だが、調査した約6割の店が「1人1個」の制限を続けていた。
全国展開するスーパーの広報担当者はBuzzFeed Newsに「まとめ買いを防ぐため」と打ち明ける。バター不足の記憶が新しく、「いまでも店頭に並んでいると複数買っていこうとする人がいる」。
しかも、依然として安定した仕入れができない状態だ。
なぜか。そもそも、どうして「バター不足」は起きたのか。
2. バター用の生乳が減っている
これは、朝日新聞などが報じた通りだ。高齢化や経営難で、廃業が相次いでいる。2013年は猛暑で乳牛に病気が発生したことも影響した。
その結果、バターの原料となる生乳の生産量は2014年度に733万トン。ピークの1996年度から15%以上減った。
でもなぜ、牛乳はあるのにバターだけなくなるのか?
酪農家はバター用に生乳を売りたがらない。鮮度が求められる牛乳に比べて価格が安く、儲けが少ないからだ。
3. バターの輸入を規制している
足りないんだったら、輸入すればいいんじゃない? そう思うかもしれない。
自由に輸入できるなら、安い海外バターが入ってきて、国内の不足はなくなる。安いバターが買えるのは、消費者にとってはうれしい話。
だが、国は自由にバターを輸入できないようにしている。自由にしてしまうと、国内の酪農家は競争に負けて、廃業に追い込まれてしまうかもしれない。だから、制限するのだ。
国は通常、バターや脱脂粉乳などを、生乳換算で年13.7万トンだけ輸入することにしている。これは国際約束で決められた量だ。
4. 売れる量を読み誤った
輸入を管理している国は、不足しそうな量を予測して、2014、15年度には上記の通常輸入分を超えて、1万トンづつ追加輸入した。
ところが、スーパーの棚からはバターが消えた。
「バターが不足しているという報道によって、消費者がさらに買いに走ったのが要因だ」と農水省の担当者は説明する。
たしかに2014年暮れには、家庭用バターの販売量が前年の同じ時期と比べて、15%以上増えた。国は、こうした消費者心理まで予測することはできなかった。
TPPの影響は?
今後、バターの流通に影響を与えるのがTPP(環太平洋経済連携協定)だ。
貿易をもっと自由にしようというという取り決めで、発効する最初の年からバター約3千トンが追加で輸入される。発効する時期はまだ決まっていないものの、加盟しているアメリカなどの家庭用バターが店頭に並びやすくなる。
一方、増える輸入品に対抗して、日本の酪農家をどう守るかは難しい課題になる。不足は困るけれど、日本の酪農家の苦悩も尽きない。
美味しいバター。悩ましい問題です。
UPDATE: TPP発効後に輸入するバターの量を製品換算に直しました。