マンガ選びのプロに、一気に読めるオススメ作品を聞いてみた。
1. 絶対に第1話の冒頭で引き込まれます。
「同棲中のアラサーカップル」というよくある設定のなか、冒頭、男性がいきなり職場の先輩を妊娠させてしまうという衝撃のアクシデントから物語は始まる。打ち明けられた同棲相手、1人で産む決意をした職場の先輩との微妙すぎる三角関係が生々しく実にリアル。
どろどろしたストーリーだが持ち前の透明感のある絵柄ですっきりと見せているので男女問わず一気読みをおすすめしたい作品。
2. 宇宙漫画の最高峰。夏の夜空を見上げながら人生を考える。
数ある宇宙漫画でも、漫画ファンから絶大な人気がある『プラネテス』。だだっ広い宇宙でデブリ（宇宙ゴミ）回収をする主人公が、自分とは何か、愛するとは何か、人生とは何か、という壮大なテーマにぶつかり、もがきながらも前に進んでいく。
心に刻みたい名言も盛り沢山で、全人類に読んでもらいたい作品です。
3. あの漫画家はこうして育った。現代の「まんが道」がこれ。
東村アキコが自身の学生時代の思い出と漫画家への道を描いた自伝的漫画で、現代女性版「まんが道」とも言える。地元・宮崎の絵の師匠である「日高先生」との関わりを中心に、受験生→美大生→兼業漫画家とそれぞれの時代の葛藤がエッセイ的におもしろく、ときに切なく描かれている。
何かに打ち込んだ経験のある人なら、きっと先生の「言葉」に涙するはず。
4. ゆるキャラはもう古い？ 都道府県擬人化バトルに燃（萌）える夏。
まず初めに伝えたいのが、この作品では各都道府県にゆるキャラならぬゆる神がいること。そして、ゆる神同士がバトルを繰り広げ、日本の首都が鳥取県になったということ。自分でも何言ってるかわかりませんが、鳥取県が日本を治めるまでの戦いから目が離せません。
現在連載中で2巻までしか出てないこの作品。これから登場する都道府県たちと彼らの必殺技（広島県はカープの新井さんが必殺技として登場）が非常に楽しみです。
5. 男女それぞれの視点から同じ日常を切り取るとこうなる。
長く同棲しながらも結婚に踏み切れないアラサーカップルの日常的な事件を、男女双方の視点から一話ずつ描くという意欲的な仕掛けの作品。たとえばセックスレス問題について語り合った回では男視点と女視点それぞれの心の機微が書き込まれており、男女ともに参考になる。
ああ男女のすれ違いはこうして起きるんだなあと思わずにはいられない老若男女必読の漫画だ。
6. HUNTERXHUNTERの合間に読みたい最高傑作？
ジャンプでHUNTER X HUNTERを連載中の冨樫義博の比較的短い作品。幽☆遊☆白書とハンターの間をつなぐような、設定の妙と高度な言葉遊び、キャラクターの魅力、そしてストーリーテリングの巧みさで根強い人気を誇る。
日本にやってきた宇宙人と、それを取り巻くドタバタを描いた現代SF漫画で、オムニバス形式というのもとっつきやすい。ハンター好きはぜひ読んでみてほしい。
7. 夏といえば青春。青春は、大人になると劇薬に変わる。
あなたは、高校生の頃に片想いしていた女の子が当時のままの姿で突然目の前に現れたらどうしますか？ 男性にとって、青春時代の失恋や恋心は大人になっても心の奥底に閉まっている宝物。
この作品は、そんな宝物を抱えたアラサー男子の心をグサグサえぐります。大人になり劇薬と化した青春を、この夏漫画で味わってみませんか？
8. 珠玉のミステリーであり、男のロマンが凝縮された登山漫画。
エヴェレスト初登頂の謎を解く可能性を秘めたカメラの行方を追ううちに、1人の日本人登山家と山に魅了されていく主人公の物語です。実在の登山家をモデルにした登場人物たちが、全員無骨！
何かしらの影を背負いつつも山と対峙し続ける男たちには、ロマンしか感じません。ミステリー要素も強く、読み応え抜群の作品です。
9. 成長していく父娘の姿にぐっとくる。
文房具メーカーで働く23歳男性のもとに、突然5歳の娘コハルがやってきた。実は昔別れた女性が海外で出産して育てていたが、不慮の事故でその女性は亡くなってしまったのだ。男ひとりで子育てに奮闘する主人公と、幼いコハルの健気さ、成長する父娘の姿にぐっとくる。
主人公を想う女性も現れるなか、彼はどのような選択をしていくのか。ホットなテーマを描いた作品。
10. 遊び人と一途。他者との違いに気付き、もがく青春。
もしも付き合っている人が遊び人だったら……。1人だけとエッチしたい彼と、誰としても気にならない彼女、2人は「好き」に対する考え方の違いに苦悩します。理解を超えた価値観に触れ、悩まされる姿はまさに青春。
『青春のアフター』とはまた違ったかたちで心に残る作品です。リアリティのある心理描写に、思わず自分の「好き」についても考えたくなっちゃいます。
11. この夏くらい、実家に帰ってオカンと話でもしようかな。
ひとことで言うと、「大阪のオカンがめっちゃ強い」という話です。それ以上でもそれ以下でもありません。布団たたきでヤンキーを撃退したり、女子高生の格好をして痴漢を捕まえたり、アホ過ぎてむしろ痛快。
「あぁ、オカン元気かなぁ」なんて、ちょっぴり郷愁感も漂うこの作品を読んで、実家の母親に電話の一本でも入れてあげてください。
12. 戦略好き必読。こんなに屈折した主人公、見たことない。
日本に似た架空の世界を舞台とした戦記モノ。同名小説の漫画版である。騎馬と歩兵メインの前時代的戦闘シーンが見どころで、そこにさらに剣虎（サーベルタイガー）や龍という架空の生き物が登場し、軍略をより深いものにしていく。
混沌とした権力闘争のなか、主人公の陸軍中尉・新城直衛が持ち前の実力と知性、そして屈折した性格で出世していくさまは非常に爽快感がある。
13. 天才、努力、ヒーロー、男の生きざまーー。
卓球がテーマの本格スポ根漫画という非常に珍しい作品。作者・松本大洋ならではの繊細な線と独特の台詞回しはスポーツ漫画でありながら、とても叙情的でのめり込む。一方で動きのある卓球シーンにもしっかり伏線が散りばめられているので1コマも休めない。
天才、努力、ヒーロー、男の生きざまーー。骨太なテーマを美しく描ききった名作だ。
14. ライトな絵柄の極上クライムサスペンスに背筋も凍る夏。
最初は素性の知れない女5人と影のある売れない作家の奇妙な共同生活かぁ、くらいのほのぼの漫画。しかしそれが、ある事件が発生してからのジェットコースター級の展開に一気に引き込まれていく不思議な作品です。
ライトな絵柄が、より一層の不気味さを醸し出します。小気味よいテンポで進む物語は、1本の映画を観ているかのような満足感がありますね。
15. 激カワ宇宙人が女子会乱入「ナサに電話しないでください」
事故で不時着した宇宙人が女子たちと共同生活するという、『東京タラレバ娘』の女子トークをもう少し下世話（失礼）にした作品です。宇宙人の口癖が「ナサに電話しないでください」ってやばくないですか？
人をワープさせたり本音を聞き出せたりする脅威の科学力も、女子会の場では男の本音を聞き出すただの道具…。人畜無害な愛すべき宇宙人と女子たちに幸せあれ！
16. 喪失を乗り越える青春ストーリー。
浅野いにおが描くラブストーリー。バンドを続けながら働く男性と社会人2年目の女性が、別れたりまたくっついたり、音楽を捨てたり捨てなかったりして、身近にある死や喪失と向き合って、そして乗り越えていく青春王道ものだが、浅野いにおらしい切ないタッチで泣けてくる。
映画は主演の宮崎あおいがかわいいが、漫画も絵がかわいい。
17. 細かい！細かすぎる！ “やり込み要素”満載の名作。
宇宙人や神様やその他の生き物が現れる不思議な町を舞台に、主人公の小学生・リントとその仲間たちのドタバタの日常を描いたジュブナイル的作品。大人が読むとどこか懐かしく、それでいてディティールの細かさに舌を巻く。
登場人物の一部が披露してくる本気のオタク知識も持ち味の1つで、3巻完結ながら文字数は圧倒的に多い。一大長編のような読後感をぜひ味わってほしい。
18. 可愛い女の子がバイト先の店長と恋に落ちる夢展開が胸アツ。
恋愛漫画の女王だと、僕が勝手に呼ばせていただいているジョージ朝倉先生。彼女にかかればバイト先の店長もちょっと男前に見えてきます。バイト先って、何であんなに男女の関係が複雑に絡み合うのでしょうか。そして、バイトの店長ってなぜあんなにモテるんでしょうか。
ドロドロだけど純粋なラブストーリー、ぜひご堪能ください。
19. こんなに哀しくて報われない復讐殺人、見たことない。
2018年の実写映画化も決まった問題作。これは事件です。転校先の同級生に家族を焼き殺された主人公の女の子が復讐する様を描くのですが、押切蓮介先生の描き方がエグい。目を覆いたくなるような残酷なシーンに、さらに追い打ちをかけるように訪れる悲劇。
こんなに残酷で残虐なのに、何だか胸にグッときちゃう奇妙なこの作品、一読の価値ありです。
20. 「売れなかった元アイドル」という重い十字架。
すみません6巻だけど紹介させてください！「売れなかった元アイドル」という十字架を背負い、田舎の町で好奇の目に晒されながら生きてきた主人公・宮下雪乃。再上京してマネージャー見習いとして働くなか、元ミュージシャンだという岩井節子と出会うストーリー。
惹かれ合う2人の秘めた恋愛と、それを取り巻くシビアな環境を描いた良作です。
今回教えてくれた小禄卓也さんは、厳選されたマンガが無料で読めるアプリ「マンガトリガー」の編集長。マンガを読みまくっているだけあり、おもしろそうな作品に出会えたのではないでしょうか。
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