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日本有数の外国人集合住宅 そこに住みついた写真家が見たものとは

最初はかなり怪しまれたという。

愛知県にある保見団地は、約3000人前後の日系外国人(主にブラジル人)が住む巨大集合住宅。

写真家の名越啓介さんは、約3年間この団地に暮らし、日系ブラジル人たちの日常を撮影してきた。その生活を収めた写真集、「Familia 保見団地」が2016年11月に発売された。

世界中にある「変わった場所」に住み込み、そこの日常を撮影していくのが名越さんのスタイルだ。今回もたまたま興味を持って訪れた保見団地に深い印象を受け、一室を借りて住み始めた。

よくある日本の風景の中に存在する異世界。

「最初に行ったときは、夜中なのにたくさん子供たちが大騒ぎしながら遊んでいて、いろんな言語も飛び混じっていたんです。日本でよく見る田舎な風景の中にこういう世界があることが面白いと思いました」

最初は私服警官だと思われ、かなり怪しまれた。

「最初はとにかく写真を撮れば、それを彼らに見せるようにしてました。それでただのカメラマンだとわかってもらえました。だいぶ仲良くなれたと思います」

出産にも立ち会った。

突然始まるキス。愛情表現は当たり前のこと。

「私が何か合図をしたわけでもなく、どこかのカップルがキスをすると他のカップルもキスを始める。子供もそれを見慣れているんです」

公の場でのイチャイチャは、日本では少し抵抗があるもの。保見団地の中ではそれがごく自然だったことに名越さんはびっくりしたという。

「貧しい環境で育つ人はそれを乗り越えようとするパワーがある。そのポジティブさを表現したかった」

出稼ぎで日本に来ているという意識が高いため、高校を中退して働く若者が多い。工場で働く人も多く、彼らの仕事は決して華やかなものではない。ブラジルにいたときは、とても貧しい環境に住んでいた人もいた。

日本人も住む団地であり、今ではあまり見ない暴走族もいた。

「保見団地では学ぶことが多かったと思います。違う考え方や価値観を持つ人は、生きてきた人生も違うのだと。より多くの人にそれぞれの人生の魅力が伝わればと思っています」