「読売新聞を熟読して」発言、安倍首相は「国会軽視ではない」と撤回せず。民進は抗議

    「憲法改正発言」に関して、物議を醸した安倍首相の答弁。参議院の集中審議で交わされたやり取りとは。

    5月9日に行われた参議院予算委員会の集中審議。民進党の蓮舫代表が質問に立ち、安倍晋三首相の「憲法改正発言」などについて問いただした。

    蓮舫代表は、安倍首相のこの答弁について「立法府軽視であり、到底容認できない。国民の代表機関で説明する責任を放棄した」と指摘。「撤回するか」と投げかけた。

    安倍首相はこう答弁した。「国会軽視ではなく、各党各会派で憲法審査会で議論が深まることに期待している」

    国会では自民党総裁ではなく、内閣総理大臣として発言しているために「憲法改正発言」について答えられない、というのが安倍首相の考えのようだ。こうも語っている。

    「行政府の長である内閣総理大臣としてこの場に立って答弁している。基本的に、一政党の考えを示すべきではないと考えている」

    「先日の発言は党総裁たる、私ひとりの考えを述べたもの。自民党を率いるリーダーとして、その責任のもとに党内の議論を加速し、党としての憲法審査会の提案を苦しくもまとめあげる決意です」

    発言の撤回については言及はしなかった。

    さらに安倍首相は「読売新聞のインタビューにおいても自民党総裁としてお答えしている」とも答えた。ただ、5月3日に掲載された記事の見出しは「首相インタビュー」だ。

    蓮舫代表はこう指摘した。「総理総裁は同一人格。なぜ使い分けるのですか。なぜたったひとつ、読売新聞だけに答えるのか。国会をなんだと思っているのか」

    これに対し安倍首相は、「縷々ご説明させていただいたところ。ここに立っているのは内閣総理大臣として。政府として決めた方針に則って答弁する立場にある」。

    「憲法審査会において各会派が議論を深めていくべきだろうと思うという基本的な考え方を述べた。自民党内で草案との違いも含め、議論をしていただきたいという思いで、政府の方針として述べているわけではない」

    なぜ読売新聞だけ、に対する明確な答えはなかった。

    読売新聞のインタビューでは、「2020年」の憲法改正を目指すと明言している安倍首相。その理由を蓮舫代表に問われると、「東京五輪が予定されている年。新しい日本を始めようという機運がみなぎっている中の、ひとつの目標」と述べた。

    安倍首相は「そのなかでやはり我々がいま、まずやらなければいけないこと」が憲法改正であるとし、改めて自らの認識を述べた。

    「自衛隊について政府として合憲という立場は揺るがない立場。しかしながら憲法学者の7〜8割が違憲と言っていて、そういう記述も教科書にある。それを変えていくのが私たちの責任です」

    「自民党の中でご議論いただきたいし、批判もありますよ。責任を持ってなんとかしたい」

    その後に質問に立った共産党の小池晃議員は「読売新聞を熟読しましたよ」と発言。そのうえで、記事の見出しが「首相インタビュー」であることに言及し、「9条3項をどう書くのか言ってください」などと真意を問うた。

    そのうえで安倍首相は、「自民党草案では3分の2を得ることができないという冷厳な事実を認めている。多数を得る案として私の考えを申し述べた」と改正発議をするために必要な「総議員の3分の2」に言及した。

    また、小池議員が「自衛隊を合憲化するということは、現状では違憲なのか」と聞くと、こう答えた。

    「小池議員は読売新聞を熟読されているからご承知のうえかと思うが、政府の立場では合憲である。しかし憲法学者の7〜8割が違憲とし、教科書にも記されているからこそ変えるのが私たちの世代の責任です」

    さらに、「自衛隊が違憲といわれる余地をなくすというが、2項があると違憲ではないかという疑問が消えないのではないか」との質問には、「1項2項で矛盾が生じないという立場だから、憲法に自衛隊が書き込まれれば認められることになる」と回答。こうも述べた。

    「自民党総裁として党内に向けてどういうかを国民のみなさんにお示ししている。2020年という物事の区切りをつけることで、責任を持って議論を行いたいという意思を示した」

    BuzzFeed Newsではもともとの答弁内容について【安倍首相、憲法改正の考え問われ「読売新聞をぜひ熟読して」と答弁、野党から批判】という記事にまとめています。