改めて振り返る問題の本質
この疑惑の根本は、国有地の売買にある。10億円級の土地だが、学園側が支払っていたのが「実質200万円」だったからだ。
本来8年後に購入する予定で2015年に土地を借りて、小学校の建設工事を始めていた森友学園。翌年になって土地から突如大量のごみが「発見」されると、その直後に土地の購入を決めている。
この発見された「深層部のごみ」について、財務局や土地の所有者である大阪航空局が撤去費用を「8億1900万円」と算定し、土地代から控除した。しかも、購入決定からたった1ヶ月後にだ。
撤去費用を控除し、出された土地の見積もり額は「1億3400万円」。購入方法は原則一括払いとされている国有地では異例の「10年間分割払い」だ。
頭金は約2800万円。残りの1億円あまりは、「毎年1100万円、延納利息1%」で支払う契約だった。
さらに国は、土地の貸し付け前から見つかっていた「表層部のごみ」の処理費などとして、森友学園に「1億3200万円」を支払っている。つまり、森友学園が負担した差額は200万円になるのだ。
そして注目された「忖度」の有無
いずれも異例づくしの対応だ。それゆえに、この問題は注目を集めるようになった。
この対応に関しては、安倍昭恵夫人が建設予定だった小学校の名誉校長だったり、学園の籠池泰典・前理事長が多くの政治家とのつながりを持っていたりしたことから、「財務省が忖度をし、事前交渉の末に値引きをしたのでは」との指摘が相次いでいた。
籠池理事長本人も、自身が「神風」とも表現した土地取引の経緯について、会見でこう言及している。
「安倍首相あるいは昭恵夫人の心を忖度して、財務省の官僚の方々が動いてきたのではなかろうかなと思っております」
一方、財務省側は、政治的な配慮や事前の金額交渉はなかったと否定してきた。ただ、詳しい協議内容は「資料の廃棄」を理由に明らかにしていない。
財務省の佐川宣寿・前理財局長(現・国税庁長官)は2月の衆議院予算委員会で 「売買契約締結をもって事案は終了しているので、記録が残っていない」「速やかに事業終了で廃棄している」と説明している。
また、BuzzFeed Newsのこれまでの取材にも、同省は一切の回答をしていない。
NHKのスクープが持つ意味
そんな中、NHKが関係者への取材で初めて明らかにしたのが、その協議内容だった。
報道によると、2016年3月24日に、学園の当時の弁護士が財務局に土地購入を打診。その日のうちに具体的な金額を出した協議が開かれた。
その6日後には財務局が「ゴミの見積もり」を大阪航空局に依頼。4月14日には値引き額の「8億1900万円」が決定し、学園側が提示した金額以内に収まるようになった、というわけだ。
NHKは、その交渉内容をこう、具体的に報じている。
この場で財務局の担当者はいくらまでなら支払えるのか購入できる金額の上限を尋ね、学園の弁護士は当時の財務状況を基におよそ1億6000万円と答えたということです。
一方、財務局の担当者は国有地の土壌改良工事で国がおよそ1億3200万円を負担する予定であることを理由にこれを上回る価格でなければ売れないなどと事情を説明したということです。
さらに異例の「分割払い」については、こうだ。
売買の経緯を知る関係者によりますと、この分割払いは去年6月1日に財務局が売買契約書の案に盛り込んで学園側に提案していたということです。学園は当時、毎年2700万円余りの賃料を支払って国有地を借りていましたが、契約書では毎年の支払い額が半額以下の1100万円余りで所有権を得られるという内容になっていました。
籠池夫妻、事情聴取へ
この問題をめぐっては、財務省の担当者などが背任容疑で大阪地検特捜部に告発されている。
過大な値引きによって、国に損害を与えた、という疑いだ。特捜部はこれを受理し、捜査を始めている。
NHKの報道通りであったとすれば、こうした疑いはより一層深まることになる。
さらに新聞各紙は27日朝刊で、籠池理事長と妻の諄子氏が同日中に、特捜部の任意聴取を受ける、と報じた。
夫妻には小学校建設をめぐる補助金を不正に受給した疑いがかかっている。
読売新聞は「夫妻を逮捕へ」との見出しを取った。NHKは「特捜部は学園をめぐるさまざまな疑惑について説明を求めるとみられる」としている。