【森友学園】籠池氏の手紙が「忖度」につながったのか。野党は「満額回答」 政府「ゼロ回答」

    籠池理事長が2015年10月、国有地取引に関連して安倍昭恵夫人の秘書に送った手紙の内容が公にされた。

    森友学園の土地取引をめぐって議論の的となっている、籠池泰典理事長に対して送付された安倍昭恵夫人の秘書のFAX。

    「資料を受け財務省に確認した」などと記されており、野党は「昭恵夫人の関与があった証拠」「忖度につながった」との追求を続けている。一方の安倍晋三首相は「ゼロ回答であり、なんら影響はなかった」という姿勢を崩していない。

    そんな中、FAXが送られる前、籠池理事長が秘書に送った手紙の内容が3月28日、国会の場で公にされた。いったい双方は、どんなやり取りを交わしていたのか。

    国会でも話題になった、安倍昭恵夫人付きの職員から籠池理事長に送られたというFAXが、取材陣に配られました。電話番号など伏せています。

    そもそも籠池氏は、手紙への返信であるFAXが送られてきた頃から、国有地取得にかかわる手続きの決定スピードが速まったと主張。

    昭恵夫人の秘書が財務省に問い合わせをしたことで、財務省官僚が「忖度」することにつながったのではないか、と述べている。

    FAXには「本件は昭恵夫人にもすでに報告させていただいております」と記されていた。ただ、昭恵夫人はFacebookで「報告は受けたが、内容について関与していない」とコメントしている。

    明かされた手紙の内容

    籠池氏が2015年10月26日に秘書宛に送った手紙の内容はこれまで判明していなかったが、共産党の大門実紀史参議院議員がこの日、初めて参院決算委員会で言及した。

    手紙を持っていた菅義偉官房長官には、野党が予算委員会での提出を求めていたが実現しなかった。共産党は「独自に手紙のコピーを入手した」という。

    1. 定期借地契約について

    大門議員の質疑によると、籠池氏は手紙でこのように依頼しているという。

    「定期借地契約が10年間なのは短すぎる。50年契約にしてほしい。そのうえで、早く買い取ることができないか」

    一方、谷氏から「先日頂戴しました資料をもとに、財務省国有財産審理室長の田村嘉啓氏に問い合わせを行い、以下の通り回答を得ました」として送られた内容はこうだ。

    「通常、国有地の定借は3年を目安にしているが、今回は内容を考慮し、10年と比較的長期に設定したもの。他の案件と照らし合わせても、これ以上の長期定借は難しい状況」

    延期は実現しなかったが、手紙を送ってから8ヶ月後、2015年6月に森友学園は土地を購入している。

    2.賃料について

    月227万円だった賃料について、籠池氏はこう要望しているという。

    「賃料が高い。半額程度にしてもらえないか」

    財務省はFAXで、契約内容についてこう答えているだけだ。

    「土壌汚染の存在期間中も賃料が発生することは契約書上で了承済みとなっている。撤去に要した費用は、第6条に基づいて買受の際に考慮される」

    籠池氏の要望後実現した売買契約を月額にしてみると、森友学園の負担は月100万円以下になっている。

    2016年6月、森友学園は「1億3400万円」で国有地を購入した。「10年間分割払い」の支払いは前例がない。

    頭金は約2800万円。残りの1億円あまりは、「毎年1100万円、延納利息1%」で支払う契約だった。12ヶ月で割れば、約92万円程度になる。

    3. 立て替え払いの工事費用について

    森友学園が立て替えていた国有地のごみ撤去費用については、こうだ。

    「平成27年度予算で工事費を立替えした分を返してくれと言ったが、28年度に遅れるとは何事か」

    FAXではこう回答されている。

    「27年度の予算での措置ができなかったため、28年度での予算措置を行う方向で調整中」

    実際、立て替えていた約1億3200万円が国から学園に支払われているのは、2016年4月だ。

    これについて「スピードが早すぎる」という指摘がある。ただ、麻生太郎・財務大臣は、すでに「特に珍しい話ではない」という見解を示している。

    「満額回答でないか」

    大門議員はこのやり取りを披露したうえで、こう指摘した。

    「FAXだけを見るといかにもゼロ回答が並んでいるように見えるが、手紙と突き合わせると、要望はすべて実現したことになる。ゼロ回答どころか満額回答だ」

    手紙を全文読んだという菅義偉官房長官は、こう反論した。

    「内容からして、まさにゼロ回答であったと思っている」

    FAXの中には、こんな文章がある。

    「現状ではご希望に沿うことはできないようでございますが、引き続き、当方としても見守ってまいりたいと思いますので、何かございましたらご教示ください」

    共同通信によると、政府はこの日、土地売買などにかかわる各省庁への政治家からの不当な働き掛けは「一切なかった」とする答弁書を閣議決定した。

    また、日経新聞によると、菅官房長官は決算委後、会見で、手紙について「理事会で決めて頂ければ積極的に提出をしたい」と述べた。


    BuzzFeed Newsでは籠池氏について『「安倍首相は好き」でも「嘘はダメ」 籠池理事長が語った保守主義者の愛憎』という記事にまとめています。