「渋谷署がつくったポスターが、観光客をテロリストと決めつけているのでは」
BuzzFeed News編集部に先週、一通のメールが届いた。渋谷駅近くの住宅街。とある掲示板に貼られているポスターについてだった。
テロ防止のために「民泊の情報を求めています」と訴え、さまざまな人種の人たちのイラストが周りを囲むこのデザイン。
ツイッター上では、ポスターを見つけた人が「違法民泊を取り締まるとはいえ、表現に問題がありすぎでは」と指摘。それに応えるように、「民泊とテロは関係があるのか」という声もあった。
BuzzFeed Newsは渋谷署を直接訪問し、取材をすることにした。
質問はFAXで
私が新聞記者だったとき、警察署の報道対応をしていたのは、基本的に副署長だった。しかし今回、渋谷署の副署長に会うことはできなかった。「直接来られても対応できない」と、受付で警視庁広報課の電話番号を手渡されることになる。
ここにいるのに会えないんですかと聞けば、副署長は記者クラブにしか対応しないという。
アポなしで訪れたことを反省しつつ、広報課に電話すると、今度は「質問事項は広報課にFAXしていただきたい。雑誌やインターネットメディアはすべてそうしてもらっています」。
思わず「渋谷署の前にいるんですが」とこぼしたが、記者クラブに入っていない以上、仕方ないらしい。
「明文化されたルールがあるんですか?」「それもFAXしていただけますか」
「外国人の方々に安心してもらうため」
その後、FAXで質問を送ると、2日後に電話で回答があった。
ポスターは「いわゆる民泊サービス」の拡大により「宿泊客と、付近住民とのトラブルの発生などの実態」を受けたもの。「各種犯罪の未然防止のための防犯対策の一環」として、署の生活安全課が作成したという。
仲介サービス「Airbnb」などを中心に世界中に広がる民泊。宿泊施設不足が課題となっている日本でも注目が集まるが、法整備が追いつかず、実質的な「違法民泊」が横行している現状もある。
政府は、届け出・登録制を軸に規制緩和を目指す新法制定の議論を進めているが、近隣トラブルや治安面などで不安を訴える声も多い。
それにしても、なぜこのイラストなのか……?
ーーポスターに外国人風の顔画像を使った理由を教えてください。
「いわゆる『民泊サービス』が拡大した背景のひとつに、訪日外国人旅行者の大幅な増加があると考えられるため」
ーー民泊、テロと外国人風の顔画像を結び付けた意図を教えてください。
「民泊サービスにかかる、各種犯罪の未然防止により、外国人の方々も、安心して滞在していただく趣旨で、外国人風のイラストを用いたもの」
具体的な配布場所、枚数、掲示場所も尋ねたが、「部外の協力団体との会議における資料」として配布しているとの回答があっただけだった。
それでは、取材対応についてはどうか。
ーー副署長対応はクラブ加盟社のみ。インターネットメディア、雑誌社は警視庁広報課に企画書をFAXしてもらうことになっている、という説明を受けました。もしこれらが明文化されたルールでしたら、ご教示ください。
「内部のルールはありますが、明文化されたものはありません」
警察署の要である副署長は、多忙だ。新聞記者時代は当たり前のように対応してもらっていたが、それが「特権」であったことに、新聞社を辞めてからようやく気付けた。