高まるテロのリスク 世界はもはや誰にとっても安全ではない

    標的が日本人か、よりも重要な事実。

    バングラディシュの首都ダッカで、日本人7人を含む20人が殺害されたテロ事件。「日本人が狙い撃ちにされた」「日本人なら安全だったは過去の話」などという声も聞かれる。

    だが、イスラム社会に詳しい同志社大院の内藤正典教授は、こう指摘する。

    「より重要な問題は、日本人が狙われたかどうかではない。テロのリスクが高まり、世界のどこにいても安全でなくなったことだ」

    ISが声明、誤情報も拡散

    テロが起きた直後。インターネット上には、「日本人の不信仰者を殺害した」と述べたISの犯行声明が出た、という情報が広がった。

    しかし、これは誤情報だ。出回っていた声明文のキャプチャは、昨年10月、バングラディシュで農業関係の活動をしていた日本人男性が殺害された際に出されたものだった。

    バングラディシュ政府はISと武装グループのつながりを否定しているが、その後に出されたISの犯行声明では、日本人に対する言及はない。

    内藤教授は「日本人が狙われたわけではない」とBuzzFeed Newsの取材に話す。

    「犯行声明で具体的な国名が挙がっているのは、イタリアとバングラディシュ。今回は、たまたま日本人が巻き込まれてしまったのではないでしょうか」

    「しかし、問題は日本人が狙われているか、どうかではありません。どこもかしこも、テロのリスクが極めて高くなっているのは明らかです」

    被害にあうかは、偶然に左右される

    事件4日前の6月28日には、トルコ・イスタンブールのアタテュルク国際空港で銃撃・自爆テロが起き、44人が死亡した。2日後の7月3日には、イラクの首都バグダッド中心部であった連続爆破テロでは、少なくとも131人が死亡

    フランス南部のニースでも7月14日、トラックの暴走で70人以上が死亡。検察当局はテロ事件として捜査を始めた。

    内藤教授は、こう指摘する。

    「イスタンブールの空港には関空便、成田便を待つ日本人もいた。あの時は、たまたま巻き込まれなかっただけでした。日本人が被害に遭わなかったからよかった、という話ではないのです」

    テロ事件は増えており、日本人が被害にあうかどうかは、偶然に左右されているということだ。

    もちろん、今回以外にも、日本人が犠牲になるケースもあった。1997年にエジプトであった「ルクソール事件」では、日本人観光客10人が殺害され、2001年の米国同時多発テロ事件でも、24人の日本人が死亡している。

    「リスクを自覚しないといけない」

    内藤教授は、こうも憂う。

    「声明で、ISはテロを拡大していくと言っています。イラク、シリアでの劣勢を挽回するためでしょう。イスラム教徒であっても、そうでなくても狙う無差別で凶暴なテロのリスクは、上がっています」

    それでは、どう対処したら良いのか。

    「自分が外国にいくときは、そこがどういうところなのか、そこで何が起きているのか、正確に把握しましょう」と内藤教授は語る。

    「相手にショックを与える目的でテロを起こす、ISの愉快犯的な手口に乗ってはいけない。日本人が狙われているとの不安を煽る必要もありません。ただ、どこにいても巻き込まれる可能性があるというリスクだけは、自覚しないといけません」