終戦の日、靖国神社と千鳥ヶ淵戦没者墓苑 ふたつの追悼の場で、祈られたこと

    熱気と静寂と

    8月15日、東京・九段下は人で溢れかえる。「英霊」をまつる靖国神社と、「無名戦没者の墓」である千鳥ヶ淵戦没者墓苑があるからだ。

    2箇所は、たった800メートルしか離れていない。にもかかわらず、訪れる人も、空気も、まるで違う。

    では、71年目の終戦の日。それぞれの場に、どんな人たちが集っていたのか。まず、朝の靖国神社。さまざまな主張の立て看板があった。

    境内には、大勢の参拝者による長い行列が。

    国旗を掲げる人も。

    午前11時前。靖国神社には、「みんなで靖国神社に参拝する国会議員の会」の国会議員が続々と足を運んだ。自民党の佐藤正久・参議院外交防衛委員長。

    議員が到着するたびに、参拝者らから拍手が起きた。日本のこころを大切にする党の中山恭子代表。

    衆参合わせて約70人の国会議員が参拝した。会長の尾辻秀久・元参議院副議長(自民党)は記者会見を開いた。

    午後。靖国神社には、君が代の歌声が響いた。

    その傍らでは、軍歌も。

    帰り際には、こんな人もいた。この男性は、元日本兵だという。

    では、一方の千鳥ヶ淵戦没者墓苑はどうか。入り口には「どなたでも参拝になれます」と書かれている。

    午前9時から、日蓮宗による平和祈願法要が開かれていた。

    参列者は菊の花を供え、焼香をし、そして祈った。

    午前11時すぎ。千鳥ヶ淵にも、続々と閣僚が詰め掛けた。その間、警視庁やSPによる厳戒な警備が敷かれ、一般参拝客は中に入れない。報道陣だけが残された。

    閣僚が足を運ぶ間、訪問客は少し離れたところから、その様子を伺っていた。

    菅義偉官房長官。

    丸川珠代・五輪相。その後、靖国神社も参拝した。

    午前11時20分。安倍晋三首相が姿を見せた。靖国神社の参拝はしていないが、私費で玉串料を納めている。

    その後、警備が解かれると、正午過ぎからは「戦争犠牲者追悼、平和を誓う8・15集会」が開かれた。

    労働組合系列の市民団体や、民進党、社民党の幹部らが参加。人はまばらだ。

    参加した社民党の福島みずほ副党首はスピーチで言った。「戦後の日本の歩みを振り返ると、平和を貫くいい国だったと思うことがあります」

    71年目の8月15日、靖国神社は熱気が、そして、千鳥ヶ淵戦没者墓苑には淡々とした空気が流れていた。