「このサイトの記事のほとんどが他サイトの盗用です。私のブログも被害にあいました」
BuzzFeed Newsに一通の情報提供メールが届いた。
情報提供者のA氏が指摘するのは、「joy-Q」というウェブサイト。見れば、確かに他ウェブサイト記事のテキストや画像をそのまま使い、著作権を侵害する恐れのある記事を毎日掲載している。
たとえば、「オシャレは足元から!色も形も時代によって変化する「ハイヒール」100年の歴史」(ウェブ魚拓)という記事は、IT系ニュースサイト「GIGAZINE」の記事をほぼ丸々コピーしたものだ。
残念なことにこうしたサイトは山ほど存在するが、このサイトには他とは異なる奇妙な点があった。
収益源となるはずのネットワーク広告は設置されていないことだ。広告表記のある記事広告も見当たらない。
唯一、フリーペーパー「サンデー」のバナー広告が掲載されている。このフリーペーパーは、毎日新聞社のグループ会社「毎日メディアサービス」と山口県に本拠を置く「宇部日報社」が共同で発行するものだった。
ことの発端
A氏がjoy-Qにブログ記事を盗用されていることに気づいたのは、2015年8月。
A氏が当時確認した限りでは、2記事が「完全にコピペ」されていた。1記事あたり「2000〜4000文字」程度の文字数だったという。
さらに、画像もそのまま使われていた。ローカルに一旦落としてアップロードするのではなく、A氏のブログのサーバに負荷がかかる、imgタグを使った「直リンク」だった。
A氏はjoy-Qに抗議しようとしたが、joy-Qのサイト上に連絡先の記載はない。
「このまま放置しておくと、際限なく盗用される」と考えたA氏は、Joy-Qがコンテンツを盗用している旨を自身のブログで告知し、joy-Qがブログの画像に直リンクした場合には「抗議画像」が表示されるようにした。
結果、joy-Qは当該記事を取り下げた。そしてA氏の元に、ブログの問い合わせフォームからこんなメッセージを寄こした。
記事を見させていただきましたが・・画像の出典先、記事の出典先が不明なのが多いですね。出典先を明記しないと・・全部、ご自分で書かれているのですか?
今は記事を見る人も仕組みは良く知っているのでその辺は理解してると思います。
非難するのは簡単ですが・・もっとルールに沿ったサイトを作って下さい。
A氏はjoy-Qのメールアドレス宛てに、「画像の出典元が不明確な記事があった点は、当ブログの過失であった。しかし、それとは別に、テキストの盗用は犯罪である」などと返事をしたが、現在まで返信はないという。
A氏は弁護士にも相談した。しかし、「勝てても得るものがない」と言われて訴えを起こすのは保留している。また、この出来事の数ヶ月後にブログを休止した。
広告掲載の対価=月1で食事?
冒頭で述べた通り、joy-Qには毎日メディアサービスと宇部日報社が共同で発行するフリーペーパー「サンデー」のバナー広告が掲載されている。
両社とjoy-Qとの関係は。joy-Qの運営に携わっているのか、それとも広告を出稿しているだけなのか。
A氏が連絡を受けたメールアドレスにBuzzFeed Newsが問い合わせると、およそ4時間後にjoy-Qの運営者とみられる人物から返信がきた。
それによると、毎日メディアサービスの「社長」が友人であるために広告を掲載しており、基本的に掲載費用はもらっていない。「月1で食事などを奢ってもらう程度」だという。
BuzzFeed Newsは、毎日メディアサービスにも問い合わせた。
取材に応じた総務担当者は確認すると返答。後日、「今後、当該サイトへのSUNDAY広告掲載は見合わせることとなりました」とだけ回答があった。
「ボケ防止」のため運営していた
BuzzFeed NewsがJoy-Qと毎日メディアサービスへ問い合わせた後、3月13日にJoy-Qは閉鎖された。
現在、サイトにアクセスすると次の説明文が表示される。
いつもアクセスありがとうございます。
突然ですが・・著作権の問題で指摘を受けました。よってサイトを閉鎖します。
短い間でしたがアクセスありがとうございました。
joy-q.com
joy-Q運営者は、先のBuzzFeed Newsの取材時にこう説明していた。
「(joy-Qは)私の個人的な趣味の世界で、アクセスが増えてきたのでそろそろ止めようかと考えています。以前この業界にいまして退職、ただ今66歳でボケ防止でjoy-q.comをしています。そろそろ飽きてきたので廃止しようかどうか考えているところです」
昨年露見したDeNAのキュレーションメディア問題でも著作権の侵害が問題視された。「出典さえ書けば何をどれだけコピーしてもOK」という誤った認識を持つ人は少なくない。
コンテンツの丸パクリサイト、そしてそこに広告を出す企業。規模や事情は違えど、本件もまた、著作権に対する社会の関心の低さを痛感させられる出来事だった。