中国で「VPN」禁止? 日本のネットユーザーに誤解が広がる

    中国工業・情報化省が1月22日に通知した内容について

    中国では、GoogleやYouTube、Twitter、Facebookなど国外企業が運営するウェブサイトへの接続が規制されている。

    中国当局に不都合な情報を得た国民が政治活動をしたり、暴動を起こしたりするのを防ぐためだ。

    しかし、中国のネットユーザーの一部は、VPN(Virtual Private Network)という仕組みを使うことでネット規制を回避(壁超え)して、そうしたサイトを閲覧できる状況にある。

    それは観光や出張で日本から中国に訪れる人や、在中日系企業で働く人も同様で、VPNを使わなければGoogleやSNSなどを閲覧できない。

    そんなVPNが禁止される?

    中国工業・情報化省は1月22日、当局の許可を得ずに営業しているネット接続関連業者を集中的に取り締まると、国内の行政機関や事業者などに通知した。

    「ネットサービスの安全管理を強化し、インターネット接続サービス市場の規範化と、健全かつ秩序ある発展を促進すること」が目的だとしている。

    この通知が出された後、日本では一部のメディアが、中国で「VPN禁止」「VPN全面禁止」、といった見出しでニュースを報じた。

    これが、日本のネットユーザーに誤解を与えたようだ。

    通知上「禁止」ではない

    当局の通知は、そもそもVPNのみに言及したものではない。文面からVPNに関する記述を総合して日本語に訳すと、次のようになる。

    許可されていないインターネット接続に対して取り締まりを強化する速やかなクリーンアップ作業を、本日から2018年3月31日までの間実施する。その中にVPNも含まれる。

    通知上は、当局に無許可でVPNサービスなどを提供している事業者を集中して取り締まる、といった内容だ。

    日本のネットユーザーの混乱を受けて、アジア各国でネットインフラ構築サービスを提供するクララオンラインは、「ネット接続サービス市場の規範化に関する通知について」というレポートを公開した。

    通知の内容を解説しつつ、同社は次のような見解を示している。

    一部の過剰な報道が原因で「VPN が利用できなくなる」といった誤解が生じているようだが、あくまで違法業者の一掃を目的とするものであり、一般のインターネットユーザーに向けてVPN 自体を違法として全面的な利用禁止を謳ったものでもなければ、企業用 VPN を禁止するものでもない。当局の責任者も「外国企業のビジネスに影響を与えるものではない」と明言しており、適切な事業者を利用しているのであれば日系企業にただちに影響するものではない。

    日本のVPN事業者は

    日本国民を対象としたVPNサービス「セカイVPN」を提供するインターリンクには、「中国を訪れた際にVPNが使えなくなるのか」といった問い合わせが顧客から寄せられている。広報担当者も困惑している様子だ。

    インターリンクはBuzzFeed Newsの取材に対し、中国国内でも「日本国民向けのVPNであれば、これまで通り使用可能と思われます」と説明する。セカイVPNも引き続き中国国内で利用できる状態だ。

    しかし同社によれば、そうした日本国民向けVPNサービスも、過去に当局のネット接続規制の影響を受けたことがある。

    「当社のセカイVPNはさまざまな対応をして、影響を最小限にとどめてきました。今後も安定的な接続を提供できるよう努力していきます」と同社は話している。