小池&若狭を支えたのに「自民党を出て行け」と言われる7人の区議たち。勝利の後に語ったこと

    離党勧告はどうなる

    衆院補選東京10区は、自民党の若狭勝さん(59歳)が勝利した。公明党の推薦を受けた若狭さんは7万5755票を獲得し、4万7141票だった民進党の鈴木庸介さん(40歳)に大差をつけた。先の都知事選で、「除名覚悟」で自民党都連と対立し、小池百合子知事を応援した若狭さん。小池知事に続き、若狭さんも圧勝したことで、自民党都連の中にある小池知事に批判的な議員の立ち位置は、ますます微妙になってきた。

    これから注目すべきポイントは、小池知事を応援した豊島・練馬区議7人の処遇だ。7人は自民党から「10月30日までに離党しなければ除名する」と、離党勧告を突きつけられている。彼らは今回、選対メンバーとして若狭さんの勝利に貢献した。選挙結果を受けて、処分が軽減される可能性が浮上している。

    都知事選で生まれた「対立」の構図

    今年7月の都知事選。小池百合子候補は無所属で出馬し、党公認の候補に真っ向勝負を挑んだ。ただ、序盤こそ「自民」との対決を強烈にアピールしたが、ひとたびリードすると、標的を「問題があるのは、あくまで自民党都連(の一部の議員)」と限定し、軟着陸を模索した。

    自民党本部と政府も、都知事選には微妙な距離を置いていた。安倍晋三首相は、自民党の公認候補のためにビデオメッセージをネット公開したが、街頭演説には一度も立たなかった。

    選挙後も残った「しこり」

    都知事選後に注目されたのが小池知事、そして自民党の現職国会議員として唯一、表立って小池知事の選挙応援をした若狭さん、さらには自民党の練馬・豊島区議会議員7人の処遇だった。

    当初は小池知事らを除名する、という議論もあった。しかし、大勝した選挙結果を受けて小池知事は「おとがめなし」に。若狭さんも結局のところ、口頭で注意を受けただけで終わった。

    逆に自民党都連は8月、都知事選に敗れた責任を取り、会長だった石原伸晃さんと幹事長だった「都議会のドン」内田茂さんが辞任した。

    焦点となっている「7人のサムライ」

    しかし、ここに至っても処分の行方が分からない人たちがいる。それが、7人の豊島・練馬区議たちだ。彼らは「10月30日までに離党しなければ除名する」という宣告を、都連から受けている。小池知事は「7人のサムライを守る」と宣言している。

    注目が集まるのは、これが単に区議7人の問題ではなく、都知事選での圧勝を受け新党結成も視野に入れる小池知事と、小池知事と対立する都連の自民党議員たち、そして自民党本部という、三つ巴の勢力争いの縮図だからだ。

    党本部は選挙戦中も、折に触れて小池知事との協力路線をアピールした。それを端的に表していたのが、安倍首相の応援演説だ。

    安倍首相は10月16日の街頭演説に、小池知事のイメージカラーである「緑色」のネクタイを締めて登場し、「朝から2杯、青汁を飲んで、腹の底から緑になっている」とジョークまで飛ばした。

    そして、「我々自由民主党もあのときは、小池さんと戦ったわけでありますが、都民の意思が示された以上、首都東京と国が協力をしていくのは当然のこと」と宣言。若狭さんを、自民党・公明党と小池都政の「協力の象徴」と位置付け、支持を呼びかけた。

    下村博文・都連会長は

    自民党都連の下村博文新会長は、同じく10月16日の街頭演説で「都知事選のしがらみ」があることを認めた。しかし、「圧勝によって流れを変えよう。党・都連をあげて力を合わせて共に戦っていくことを誓います」と強調した。

    区議7人の処分について、下村会長は「10月末までという期限付きなので補選が終わってから考えたい」と処分を軽くする可能性を示している。

    下村会長は選挙結果を受けて、若狭さんの事務所に姿を見せる可能性もあった。しかし、直前になって「来ない」という連絡があったという。

    「7人のサムライ」に聞いた

    補選で若狭さんが当選確実となった後、7人の区議たちに話を聞いて回った。離党勧告については、どう考えているのか。

    細川正博・豊島区議は今後の身の処し方について、「『出て行け』と言われている身なので、色々な選択肢を考えている」と話す。

    自民党側の動きを、7人はどう見ているのか。

    「都知事選が終わった直後、(二階俊博・自民党幹事長の)『撃ち方やめ』という発言があった。党本部は一貫して、その方向で動いていると思う。都連の対応に批判的な方が自民党内にもいるということを、今回の選挙戦を通じて知り、心強く感じた。党内が固まっているならともかく、少なくとも意見が割れているのだから」

    残るは「都連」だ。

    その都連の中には、離党勧告処分ですら甘いという声がある——。囲み取材での記者からの質問に対して、本橋弘隆・豊島区議は次のように話した。

    「都連は(都知事選で)増田寛也さんをやれ、この人じゃないとダメなんだと言った。(私たちは)それを嫌だよと言ったわけですから。それは組織として、また110万票以上の大差を付けられて負けた側からすれば、甘いと感じると思います」

    一方、星京子・豊島区議は「除名されることは本意ではない」と話す。

    「都連の反対を押し切って応援はしたが、小池知事が誕生したことで、いま都政がこれだけ大改革を成し遂げている中だ。それを少しでも支えて来た私たちを、処分するような都連でいてほしくない」

    河原弘明・豊島区議は今後の対応について、次のように話した。

    「我々に離党勧告を出した時に、下村会長は選挙戦の結果いかんで……と発言されたという報道があった。今は下村会長や都連幹部の方々が、どのように考えるのかを見極めたい。我々はそれを待って、アクションを起こすことになると思う」

    仮に見直しがあるとすれば、自民党にとどまるのか。

    「見直しがどのレベルになるのかにもよる。今受けている処分は、離党勧告という8段階の中で上から2番目の処分だ。それがどこまで軽くなるのかという部分も含めて……。若狭代議士が自民党の公認をもらった際、『(7人の処分が)自分と同じレベルでなければ納得しない』と言われた。それを我々は受け止めている」

    小池新党はありうるのか。

    「新党は選択肢の一つだが、現実の形としてはまだだ。我々としてはまず、(離党勧告期限の)30日をどう迎えるか。その先はその先だ」

    7人の区議たちは全員、小池知事が立ち上げ表明した政治塾に参加する。その初会合も10月30日だ。