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【就活と多様な性】「男性でも女性でもない心」の大学生は、こんなスーツを選んだ

「トランスジェンダーの7割、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの4割が就職・転職の際、セクシュアリティによって困っているという現状があります。自分らしいスーツを着ることで、就活に向けて一歩踏み出せるんです」

こちらは、大学2年生のゆずまさん(20歳)

生まれたときの性は男性でしたが、「心は、男性でも女性でもなく、中性的でありたい」といいます。2月25日、今後の就職活動に向けてスーツを買うため、売り場にやってきました。

就職活動といえば「スーツ」が定番。でも、レズビアンやゲイ、バイセクシャル、トランスジェンダー(LGBT)など、性的少数者を支援するNPO法人ReBit代表の藥師実芳さんによると、その中にはどんな服装で就職活動をすべきか悩む人も少なからずいるそうです。

藥師さんは「自分らしい格好で就活したい」という声にこたえるため、小売大手の丸井グループと組んで、「就活スーツ選びのイベント」を始めました。この日はその1回目でした。

ゆずまさんは普段、「男女どちらが着ても違和感のない服」を選んでいます。最近は、ボーダー柄のトップスとデニム、ニューバランスのスニーカーを組み合わせるのが気に入っているそう。

これまでスーツを着たのは一度きり。大学受験の面接で男性用スーツを着たところ、「違和感しかなかった」そうです。

ゆずまさんがアドバイザーに伝えた要望は、「レディースのジャケットとパンツ、靴はメンズにしてください」。

ゆずまさんはアドバイスをもらいながら、ジャケットとパンツをかわるがわる、試着していました。

「面接のときは座っているので、座ったときの見え方も大事ですよ」

「初めて、自分の着たいスーツを着られました」とゆずまさん。

ゆずまさんは、身長が178cmあるので、スーツを買いに行くと男性用を勧められる。でも、それは、本当に着たいものではなかったそうです。

「自分が男性として扱われることに、強い違和感を覚えてきました。そんな中でスーツを着ると、より強く男性として見られるかもしれない。そう思うと、男性のスーツを着るのは、違和感でしかない」

「だから、今回は女性向けのジャケット・パンツを選んだんです」

これまで、正装がないので、冠婚葬祭などに出るのを断っていた、というゆずまさん。「今後は、出席するところも増えるかなと思います」と話していました。

ゆずまさんにアドバイスをした有楽町マルイ、スーツ売り場の須藤修二さん。「私たちの店には、セクシュアルマイノリティのお客様もいらっしゃいます」

「LGBTの方だからといって特に接客を変えることはありません。なぜなら、私たちはすべてのお客様にご満足いただける接客をめざしているからです。私はいつも、お客様の感覚に寄り添う接客を心がけています。『昔から知っていた人みたい』と言われることが多いですね」

「自分らしいスーツを着ることで、就活に向けて一歩踏み出せるんです」とReBitの藥師実芳さん。

「トランスジェンダーの7割、レズビアン・ゲイ・バイセクシュアルの4割が就職・転職の際、セクシュアリティによって困っているという現状があります。これまで800人以上の就活を支援してきましたが、スーツを買おうとして店員に驚かれたといった話は、全国各地でよく聞きました。そういう人たちの応援をしたいと思っています」