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慶應大レイプ疑惑 サークルの性暴力、目立つ「酒と上下関係」の悪用

合宿所で酒を飲ませ……。

「ミス慶応コンテスト」を主催する学生団体「広告学研究会」のメンバーに、女子学生をレイプした疑いが浮上している。各社の報道によると、女子学生が被害を訴え、神奈川県警が捜査している。

慶應大学は、この公認学生団体が神奈川県葉山町で9月に開いた合宿の際、未成年が危険な方法で酒を飲んでいたという理由で、解散を命じた。コンテストは中止になった。

週刊文春によると、当時18歳の女子学生がその夜にレイプ被害に遭ったと証言している。合宿所にいたのは男子学生が6人と、女子学生がひとりだった。記事中で、女子学生はテキーラを5杯飲まされ、2人の男子学生に力ずくで暴行されたと話している。

大学側は、この疑惑について「可能な限りの調査を行いましたが、報道されているような事件性を確認するには至りませんでした」と公表した

広報室によると、関係者全員に聞き取り調査をして、性行為があったことは確認できた。しかし、性的暴行を受けたとする女子学生と、男子学生側の言い分が食い違っているため、犯罪があったかどうかまでは認定できなかったそうだ。

大学は「違法行為に関しては、捜査権限のある警察等において解明されるべき」としている。真相解明は今後の捜査を待つことになりそうだ。

キャンパスでの性暴力

過去、大学生のサークルがからむ性的暴行事件は、国内外で繰り返し問題になっている。

東京都内の有名大学の学生たちが作ったサークルが、集団で繰り返し女性に性的暴行を振るっていた「スーパーフリー事件」が2003年に発覚。この事件をきっかけに「集団強姦罪」が創設された。

今年5月にも東大生ら5人が、女性への強制わいせつ容疑で逮捕され、うち3人が起訴されている。

男子学生たちが集団で起こす性的暴行事件。そこには、どんな特徴があるのか。そして、いざ被害にあった時にはどんな対応をすればいいのか。

性暴力被害者の支援をしているNPO「しあわせなみだ」代表の中野宏美さんに話を聞いた。

大学サークルでの性暴力の特徴

一般的に、大学のサークルで起こる性暴力は「先輩後輩という上下関係」のもとで「飲酒の場」を使って行われることが少なくありません。

「上下関係」は「強要を断りづらい関係」です。

お酒は「相手の正常な判断能力や抵抗力を失わせる」手段として使われます。

そしていざ問題になると、「飲んだ勢い」とか「合意があった」といった弁解がよく使われます。

訴えを受けた大学側は、そうした言葉を鵜呑みにするのではなく、事件の背景にこうした「断りづらい上下関係」や「正常な判断ができなくなるような事情」など、強制性がなかったのかをしっかりと確認すべきでしょう。

本当に合意があれば、なかなか訴え出たりはしないものですから。

性暴力が起きた際、組織に求められるのは、性暴力に対する正しい知識と、スキルを持った人材による迅速的確な対応と、再発防止です。

被害者への配慮

被害相談の現場にいると、合意があったのではないかという予断を持って対処され、さらに傷ついた被害者と数多く出会います。偏見を持たずに、双方の言い分をきちんと聞くためには、正しい知識が必要です。

今回の事件でも、大学側には訴え出た被害者をさらに傷つけないよう、適切な対応が求められます。被害者への聞き取りは心身状況を考慮して、セカンドレイプにならないように気をつける必要があります。

相談するのは難しい

内閣府の調査では、異性から無理矢理に性交された経験のある女性のうち、誰かに「相談した」のは31.6%。そして「警察」に相談したのは4.3%でした。

つまり「レイプに遭い警察に相談する人」はたった4.3%、ということになります。それだけ性暴力を相談することは困難なことです。

今回、警察に相談した女性に心からの敬意を表します。

周囲の理解が得られない

性暴力を相談しづらい理由の1つは「周囲からの冷たい視線」です。

今回の事件でもミスコンテストが中止になり、コンテストのファイナリストに選ばれていた女性たちから、「残念」といった心境が明らかにされています。学生からも「運営側の不祥事で、出場者に影響が出るのは気の毒」といった声があがっています。

「あなたが訴えれば、会社に迷惑がかかる」「加害者の人生がめちゃくちゃになる」など、あたかも何かの責任が「被害者側」にあるかのような発言で、傷ついた人の話を数多く聞いてきました。

性暴力が起きた時、周囲の人に求められるのは、被害者に責任を転嫁しないことです。

もし被害や、その相談を受けたら?

もし、身近な人から被害相談を受けた場合、その人の言葉を最初から嘘だと決めつけず、まずは信じてあげてください。

そしてもし自分が被害を受けたら、できるだけ早く「性暴力被害者ワンストップ支援センター」など、適切な支援機関に連絡をしてください。ワンストップセンターに連絡すれば、その時々で必要なアドバイスを受けられますし、病院や警察などを紹介してもらえます。

【訂正】初出時、数字に誤りがありましたので訂正しました(2017年6月5日)。