ろくでなし子イベント「開催」→「中止」→「やっぱり開催」 主催のアムネスティがドタバタ

    何が起きていたのか

    国際的な人権団体アムネスティが9月30日夜に予定していた、芸術家ろくでなし子さんのトークイベントについて、開催4日前に中止と決定。そして29日「やっぱり開催します」とアナウンスする、ドタバタ騒ぎが起きた。何が起きていたのか、当事者たちに聞いた。

    女性器アートで裁判中

    ろくでなし子さんは女性器をかたどってつくったアート作品を展示したり、同じく女性器をモチーフにしたボートを作るための3Dデータを賛同者に配ったりしたとして、わいせつ物陳列罪などで逮捕・起訴されたアーティスト。今年5月の1審・東京地裁判決では、作品展示については無罪、3Dデータ配布については有罪となり、現在控訴している。

    イベント開催と中止発表

    トークイベントは、事件を踏まえ、表現の自由について語ろうと企画されたものだった。

    ところが9月26日、アムネスティはイベントの中止を宣言した。告知文を削除し、公式サイトで「諸事情により中止とさせていただきました」と発表した。

    何が起きたのか?

    翌日、登壇者のろくでなし子さんは、次のようにツイートした。

    9月30日のアムネスティー日本でのトークイベントはアムネスティー日本支部の都合により中止となりました。ご参加を検討されていた方には大変申し訳ありません。 わたしも何の理由も聞かされないままでの中止に納得がいかない為、アムネスティーロンドンの本部へ質問状を送る予定です。

    一体、何が起きていたのか。BuzzFeed Newsは、アムネスティ日本事務局長の若林秀樹さんに聞いた。

    アムネスティの話

    若林さんの話のポイントは次の通り。

    (1)今回のイベントは、アムネスティの会員が発案し、会員有志の「実行委員会」が主催したもの。こうした形で開くイベントはよくある。

    (2)アムネスティの名前を冠して、会場もアムネスティの事務所。対外的には「アムネスティの主催イベント」と考えてもらっていい。

    (3)開催が決まった後、ろくでなし子さんのこれまでの言動に批判的な意見が寄せられた。

    (4)そうした批判を踏まえると、当初のねらいどおり、表現の自由を語るイベントとしての開催は難しいのではないかと考えた。

    (5)中傷メールも相当数あった。脅迫的な内容や、暴力をほのめかすような内容のものはなかったが、今回もセキュリティ上の問題が起きる可能性があると判断した。

    (6)アムネスティはこれまでも慰安婦問題や死刑廃止問題など議論を呼ぶ内容のイベントを開催してきた。その際には、現場に批判的な人が押しかけたり、小競り合いや暴力的な発言が起きたりすることがあった。

    (7)ろくでなし子さんは現在、妊娠中だ。本人の身の安全も総合的に考慮して、最終的には事務局長(若林さん)の判断で中止を決めた。

    (8)本人の承諾なしに一方的に中止を決めたことは、判断ミス。私たちに100%非がある。

    ろくでなし子さんの話

    ろくでなし子さんにも話を聞いた。その内容は次のようなものだった。

    (1)25日深夜、若林さんから、一方的に中止を告げるメールを受け取った。

    (2)言い分に納得できなかったので、若林さんと電話で話したいと要望した。その電話を待っていた26日、すでに中止がアナウンスされていることを、ツイッター経由で知った。

    (3)自身(ろくでなし子さん)も、イベント開催や自分自身に対する批判的なツイートを目にしていた。そこで、ブログに次のように書いた。

    「おそらく中止の理由は、一部の “アンチろくでなし子” の人達が、私がアムネスティのイベントに参加することを阻止しようと、わたしの悪口や、『ろくでなし子はレイシストだ』などという有りもしないデマをアムネスティ日本支部のツイッターやフェイスブックに書き込んだ事によると思われます。私は、レイシストと呼ばれて看過できるものではありません。なぜなら、そのような差別的な発言やそう思われるような発言すら一切したことがないからです」

    (4)セキュリティ上の問題や危険といった話は、アムネスティからは聞かされていない。

    一転、開催へ

    ところが29日、一転、開催が決まった。その理由について若林さんはこう語る。

    「アムネスティとしては、日を改めて開催することも考えました。しかし、ろくでなし子さんの希望もあり、もともとの予定どおりの日時で開催することに決定しました」

    ろくでなし子さんは、ドタバタの末に決まったイベントについて、次のように語っていた。

    「とりあえず開催が決まって良かったです。わたし自身、誤解を招くような言動があったからこそ、このような事態になったのではと反省する部分もあると考えています。その誤解を解くためにも、私を批判する人たちと丁寧に語り合う機会があれば良いとずっと考えていました。これが『表現の自由についてみんなで考える有意義なイベント』になればと思います」