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世田谷区「同性カップル」は区営住宅に入居できないまま……何が起きているのか?

渋谷区と並んで、いち早く「同性パートナーシップ宣誓制度」を導入した世田谷区だったが……。

同性カップルを公認する制度を全国に先駆けて2015年につくり、注目を浴びた東京都世田谷区。だが、同性カップルは世田谷区の区営住宅には入居できない。保坂展人区長は、この状態を解消する条例改正案を区議会に提出した。ところが3月22日、この条例案は議決されないまま「閉会中審査」になることが決まった。世田谷区議会で、どんな議論が起きていたのか?

世田谷区によると、条例案の背景には、同性カップルからの要望があった。区には、同性カップルが民間住宅に入居する際、「男性同士には貸せない」と言われ、2倍の管理費を請求されたという報告があった。また、世田谷区が国内のLGBTを対象に実施したアンケート調査(有効回答965人)では、回答者の56.4%が「公共住宅に同性パートナーと住めるようにしてほしい」と希望していた。

現在の世田谷区の条例では、区営住宅に一緒に入居できるのは「親族」に限られている。収入など他の条件を全て満たしていても、親族でない同性カップルが区営住宅に入居することはできない。

条例案はこのルールを緩和し、同性カップルでも入れるようにするものだ。入居できるのは、収入など他の条件も満たしている場合に限られ、同性カップルを優遇するわけではないという。

ところが、この条例案は、区議会の都市整備常任委員会で、閉会中審査とされた。区長の提案した議案が、会期中に議決されないのは世田谷区では珍しく、1980年以来のことだという。


閉会中審査を求めたのは、自民・公明の与党会派だった。公明党の板井斎議員は3月13日の予算特別委員会で、渋谷区が議会を経て「条例」をつくった一方で、世田谷区のパートナーシップ宣誓制度は「要綱」という、区長裁量でつくった制度だと指摘。「渋谷区はしっかり議会を巻き込んだ議論をしている」「それが正論だ」などと強調した。自公は両党で世田谷区議会の過半数を占めており、最終的には他会派も含めて、閉会中審査が決まった。

ただ、「世田谷方式」のパートナーシップ宣誓制度を後から導入した三重県伊賀市や沖縄県那覇市では、すでに同性カップルが市営住宅に入居できるようになっている。

世田谷区では2015年11月に始まって以降、これまで48組がパートナー宣誓をしているが、仮にパートナーシップ条例を改めて作るとなると、かなりの時間がかかることが予想される。


区議会を傍聴していた美容師・古谷光枝さん(41歳)は、BuzzFeed Newsの取材にこう答えた。

「期待していたので、とても残念です。渋谷区のような同性パートナーシップ条例をまず作るべきだという意見もありましたが、不平等な状態の解消を先送りする理由になるのでしょうか。区民の意識調査がされていないという発言もありましたが、どんな調査が必要なのでしょうか。議会がこれからどんな議論をしたいのかがハッキリわかりませんでした。本質的な議論を避けるため、そうしたことを言いだしたのではないか、とすら思えてしまいました。いま困っている人たちもいるはずです。できるだけ早く、同性カップルが入居できるようにしてほしいと思います」