「令状無しのGPS捜査は違法」 最高裁大法廷判決を法学者はどう見たか

    刑事訴訟法の専門家、成城大学・指宿信教授に聞いた。

    令状無しのGPS捜査は「違法」——。最高裁大法廷は3月15日、そう判断した。これまで各地の裁判所で「違法」と「適法」と判断が分かれていたが、その論争に決着がついた。

    最高裁は、GPSを使った捜査について「(裁判所の)令状が必要な強制処分と解するべき」と判断しただけでなく、一歩踏み込んで、どんな場合にGPS捜査を認めるかのルールを「立法することが望ましい」と述べた。

    BuzzFeed Newsは、この裁判を傍聴した成城大学の指宿信教授(刑事訴訟法)に話を聞いた。

    「ある意味で当然な判断」

    弁護側の主張がほぼ100%取り入れられた判決でした。

    現在、GPS機器を利用して、位置情報を取得する捜査が行われています。

    こうした捜査は「令状が必要な強制処分」で、「新しい立法が必要」というのが世界の流れです。アメリカやドイツ、フランス、オーストラリアなど他の先進国でもそうなっています。

    最高裁は今回、日本でも世界標準の規律のもとで、位置情報取得をすべきだと判断しました。ある意味で当然な内容だと思います。

    GPSの位置情報は「私的領域」

    これまで、捜査機関・検察は、道路上を通行する車両の位置を取得するのは、尾行と同じように考えられるので、プライバシー侵害は大きくないと主張していました。

    確かに居宅のような室内ではプライバシーがより高く保護されるべきで、公共空間ではプライバシー侵害の度合いが低いという話は、これまで一般的でした。

    しかし、テクノロジーが進歩したことで、そのような2元論では必ずしも割り切れなくなってきています。


    ——弁護団は「位置情報の扱われ方は、生き方を左右する問題だ」として、プライバシー保護の重要性を訴えました。

    そうですね、今回の最高裁判決には、そうした弁護側の主張がほぼ100%取り入れられています。

    最高裁判決は、GPSで記録した位置情報について、たとえ道路上などの公共空間に位置している場合でも、私的領域(プライバシー)として憲法の保障が及ぶと明言しました。この点は、非常に重要な判断です。

    今回の大法廷判決の射程は、GPS機器だけではなく、他のテクノロジーを使って、位置情報や移動履歴を捕捉する捜査手法についても及ぶことになるでしょう。

    そうした意味で非常にインパクトのある判断でした。


    BuzzFeed Newsでは、この裁判の経緯をこのように伝えています。
    令状なしのGPS捜査を認めるべきか? 最高裁大法廷で語られた「権力の暴走」への疑問