「刻みのりからノロウイルス」の衝撃 製造元が語る汚染の経路

    「ノロウイルスは裁断・梱包する段階で混入したと考えられる」と業者

    東京都立川市の小学校で発生した、児童と教職員1000人におよぶ集団食中毒事件の原因は、のり製造業の東海屋(大阪市)が学校給食用に卸した「刻みのり」だと特定された。都によると、和歌山県御坊市や東京・小平市でも、同じ刻みのりを食べた人たちが、食中毒の症状を訴えているという。刻みのりから、ノロウイルスが検出されたことについて、ネット上では驚きの声が相次いだ。のりは、なぜ汚染されていたのか?

    製造元の東海屋はミスを認め、謝罪。商品を自主回収すると発表した。同社は、ノロウイルスに汚染された経緯について、のりを裁断・梱包する段階で起きた可能性が高いとしている。

    東海屋は、BuzzFeedの取材に次のように説明した。

    1. のりは兵庫県瀬戸内海産。
    2. 東海屋が、兵庫県漁連から仕入れたのりについて、姫路市内の委託加工業者が「焼き加工」をした。
    3. 焼き加工は、コンベア式の機械を使って、250度から300度で10秒程度、加熱する。ウイルスがあったとしてもその時点で死滅するはずだ。
    4. 東海屋は、姫路の業者から納入されたのりを開封せず、大阪市内の加工業者へ運び込んだ。
    5. ノロウイルスは、この大阪市内の加工業者が、のりを裁断・梱包する段階で混入したと考えられる。
    6. 東海屋は、この加工業者が同じ日に製造した商品について自主回収する。対象は全部で500パック程度だ。

    ネット上では「海で汚染されてそのまま製品化されたのだろうか」といった疑問の声も出ていた。だが、兵庫県漁連の担当者は、BuzzFeed Newsの取材に「のりが原料の時点でノロウイルス汚染されていたというケースは一般的ではなく、聞いたことがありません」と話す。他に被害報告はないという。

    ノロウイルスに詳しい北里大学の片山和彦教授も、BuzzFeed Newsの取材に「のりがノロウイルス汚染されていたケースは、他に聞いたことがない」と答える。

    「業者の説明のどおりの加熱がされているなら、ウイルスの感染力はなくなるはずだ。ウイルスはタンパク質なので、熱を加えたら変化して元には戻らない。都の調査では、ノロウイルスが検出されなかったパックもあるので、原料全体が汚染されていたことは考えにくい。加熱後の過程で、汚染された可能性が高いだろう」

    カキとは違うのか?

    海産物とノロウイルスといえば、カキなどの貝類が汚染されるケースが知られている。それとは構図が違うのだろうか?

    厚生労働省・食中毒被害情報管理室の担当者は、「ノロウイルスは人の腸内で増えるウイルスです。それが下水を通って海に流れ、二枚貝全般に蓄積されることがあります」と話す。

    カキなどの「二枚貝」は、大量の海水を体内に取り入れて、プランクトンなどのエサを取り込む仕組みがある。同様のメカニズムで、海水中のウイルスを取り込み、濃縮するのだという。

    「ただ、ノロウイルスは熱に弱いので、十分に加熱して食べれば問題ありません。汚染のおそれのある二枚貝の場合、中心部が85度〜90度で90秒以上加熱することが望ましいとされています」

    一方、のりにはこういった二枚貝のようなメカニズムはない。今回の集団食中毒事件で、刻みのりが汚染された原因はまだ調査中だが、一般的にのりがノロウイルス食中毒のよくある原因とはみなされていないそうだ。

    予防は?

    ノロウイルスの食中毒で一番多いのは、調理をした人の手や指についていたウイルスで食事が汚染され、それを食べた人が食中毒になるケースだという。

    担当者は次のように話していた。

    「ノロウイルス食中毒を防ぐためには、食品を取り扱う人の健康管理や手洗いの徹底が重要です。とくに、下痢やおう吐等の症状がある方は食品を直接取り扱う作業をしないようにしてください。また、食品を中心部までしっかり加熱することも有効です。感染が疑われる場合、最寄りの保健所やかかりつけの医師に相談してください」