「中国を侮辱しても気にしない」トランプ氏の型破りな外交と発言で高まる緊張

    今後、米中間の摩擦を生む恐れも

    37年ぶりに台湾総統と電話会談したドナルド・トランプ米次期大統領。中国政府は反発しているが、トランプ陣営が気にする様子はない。

    トランプ次期大統領は12月3日、「当選を祝うために、台湾総統が電話してきた」とツイートした。

    The President of Taiwan CALLED ME today to wish me congratulations on winning the Presidency. Thank you!

    トランプ次期大統領は、蔡総統を「台湾総統(the president of Taiwan」と呼んだ。

    朝日新聞によると、米大統領や次期大統領が直接「台湾総統」の呼称を使うのは異例という。

    トランプ次期政権移行チームは、「各国首脳との電話会談」として、アフガニスタンなどの大統領と一緒に発表し、蔡総統を国家指導者と同格に位置づけた。

    「一つの中国」政策を取ってきた米国の次期大統領が、台湾の総統を他の国家指導者と同格にみなしたことで、米国の対中政策に変化が出るのではと波紋が広がった。

    さらに、中国の反発を懸念するニュースが流れると、「米国は何十億ドルも軍事兵器を売っているのに、祝いの電話を受けてはならないなんて、面白い」と反論した。

    Interesting how the U.S. sells Taiwan billions of dollars of military equipment but I should not accept a congratulatory call.

    これに対して、中国は、トランプ次期大統領に不満を示すと同時に、良好な米中関係を維持したい意向を示した

    中国外務省の耿爽報道官は、「われわれは、米国の関係各方面に厳正な申し入れをした」と述べ、抗議したことを明らかにした。

    耿報道官は、「世界に中国は1つだけで、台湾は中国の不可分の領土であり、中華人民共和国が中国を代表するただ1つの合法的な政府だということは、国際社会が認める事実だ」と指摘。

    そのうえで、「われわれは、米国の関係各方面に対し、米中関係の大局が不要な妨害を受けることがないよう、『1つの中国』の政策の実行を忠実に守り、慎重に、適切に台湾に関係する問題を処理するようせつに促す」と強調した。

    だが、中国の反発以降も、トランプ次期大統領の姿勢に変化はない。対中政策に関して連続ツイートし、「中国の意向は気にしない」との立場を明確に示した。

    Did China ask us if it was OK to devalue their currency (making it hard for our companies to compete), heavily tax our products going into..

    「米企業の競争力が阻害する人民元切り下げを実施して良いかと、あるいは、中国に輸入される我々の商品に対して重い税金をかけて良いかと、中国は私たちに尋ねたのか?」

    「南シナ海での軍事拠点建設」にも言及。

    their country (the U.S. doesn't tax them) or to build a massive military complex in the middle of the South China Sea? I don't think so!

    「南シナ海で巨大な軍事施設を建設して良いかと、中国は私たちに尋ねたのか?私はそうは思わない!」

    ペンス次期副大統領は12月4日、台湾総統との電話会談は、「表敬」であり対中政策の変更を示すものではないと強調した。

    ABCニュースによると、ジョン・ハンスマン元駐中国米国大使も、ペンス次期大統領と同様の考えを示した。

    次期副大統領らの発言は、中国の反発を受け火消しに走ったともみれる。しかし、政権移行チームには「中国を侮辱しても気にしない」との強硬的な立場を示すメンバーがいる。

    トランプ陣営の政権移行チームのステファン・モア氏は12月5日、ラジオ番組で台湾総統との電話会談について聞かれ、「自由を信じる国家であるため台湾を支持した。我々は味方を助けるべきだ」と話した(音声の7分〜)。

    モア氏はまた、「気弱な奴らが『そんなことしたら中国を侮辱してしまう」と言っている。我々は中国を侮辱するかもしれない。そんなことは気にしない」と述べ、トランプ次期大統領の発言を支持した。

    台湾紙、自由時報は蔡総統が来年1月に中米への外遊を計画し、ニューヨークに立ち寄り、次期首席大統領補佐官に指名されたプリーバス共和党全国委員長と会談すると報じた

    トランプ次期政権の対中政策はまだ明確に定まっていない。トランプ次期大統領の台湾接近が今後、米中間の摩擦を生む恐れもある。