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生きる意味を失ったブラジル出身の少年。救ったのはアジカンとラップだった

「フリースタイルダンジョン」2代目モンスターのラッパーが語る壮絶な半生。

ブラジル生まれ、新宿育ち。27歳のラッパー・ACE(エース)さん。

Keiya Nakahara / BuzzFeed

ブラジル人の父と母の間で生まれた彼は、3歳の頃に、新宿と大久保に挟まれた静かな街・北新宿へやってきた。

新宿で育った彼は、フリースタイルラップバトルで名を上げ、今ではバラエティ番組やテレビドラマにも出演。昨今のヒップホップブームの中でも、活躍が目立つ存在だ。

しかし、幼少期の彼は、生きる意味を感じていなかった。

「俺、将来何になるんだろう? 大人は『外人だ外人だ』って相手にもしてくれねーし、やれ外に出たらすぐ悪者にされるし、生きてる意味あんまりねーなともぶっちゃけ思ってたりして」

日本語が満足に話せなかった彼は、心無いいじめに暴力で対抗するしかなかった。友だちもいない、家に帰ると共働きの両親の代わりに兄弟の面倒をみる日々。

そんな少年を夢中にさせたのが、ラップだった。

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ラップのきっかけはビーストウォーズ

プラチナムプロダクション提供 / 左が5〜6歳の頃のACEさん

言葉で自分の思いの丈を吐き出すラップ。

言葉を吐くための日本語を覚えたのは、アニメの影響が大きかった。

「ちゃんと喋れるようになったのは小学校入りたての頃とか、そのくらいなんですよ。よくアニメとか見てたんで。当時のテレビアニメとかスカパー!でやってたキッズステーション、カートゥーン ネットワークとか」

「ラッキーマンはずっと見てましたね。単純にアニメとして面白かった。俺はそこに出てくるスーパースターマンて奴がすごい好きで。すっげーかっこつけるキャラなんですけど、どうしてもうまくいかないんですよ、そいつは。なんか、応援したくなっちゃうっていうか」

もちろん、アニメを見ても言葉の意味は理解できない。発音を真似たり、学校の先生に聞いたりすることで日本語を学んでいった。

ラップをはじめたきっかけも、当時、小学生の間で人気だったテレビアニメだ。

「小2くらいの時に、『ビーストウォーズ 超生命体トランスフォーマー』の下町兄弟が歌っている『WAR WAR!STOP IT』っていう曲がクラスでめっちゃ流行って。サビの部分を歌えるやつはいるんだけど、ラップのところは誰も歌えない。けど俺は歌えて、(ラップに)向いてんのかな?って」

こうしてラップをはじめたACEさんは、小学生の時に北新宿の街を歩きながらラップするようになった。

アジカンから学んだ、「ダメ」から抜け出すこと

Keiya Nakahara / BuzzFeed

周りにラップへ理解のある友人はいなかった。ラップをはじめたことでいじめが止まることもなく、ACEさんの孤独な日々は変わらない。

その時の状況について、ACEさんは語る。

「クズだったんで人として。いじめられたりもすると、やさぐれるしかないじゃないですか? 周りはみんな敵に見えるし。親も親で、弟妹のことはこっちに任せっきりだし、別に金があるわけじゃない」

「周りの友達はゲーム買えるけど、俺は自分じゃ買えねーし。そういう小学生なりのフラストレーションというか、恨みつらみがやっぱりあって」

そんなACEさんの光となったのが、ロックバンド・ASIAN KUNG-FU GENERATION(以下、アジカン)だった。

「俺、どちらかというとラップもそうなんですけど、アジカンというバンドが中心になっていて。アジカンに、音楽に、人としての(大切な)部分だったりとか、色々支えに感じて」

「根底を自分で変えねーと、なにも変わらねーなっていう強さをアジカンの音楽からすごく学んで、すごい糧になったというか。誰でも、ダメのままでも笑えるっていうか、ダメの中でも何かある。でもそのダメから抜け出さないとそのままだし、変わろうかって」

アジカンは、無気力な日々を過ごしていたACEさんが、未来に希望を持つきっかけとなった。

「振動覚」「海岸通り」「Hold me tight」「サイレン」

当時印象的だった曲は何かと聞くと、「全部大好き」だと、次々と曲名が飛び出してくる。

ラッパーがかっこよく見えた

プラチナムプロダクション提供 / ACEさんライブシーン

こうしてアジカンの音楽に支えられたACEさんは、同時にヒップホップの新たな魅力に気づく。

「キングギドラや漢くんとか、その時のラッパーたちがかっこよく見えたんですね。言葉使いが悪くても許されてる。自分の言いたいこと言えちゃってる。格好も格好で俺が普段、着ている服とあんまり変わらない、これ許されるんだっていう。この土俵だったら俺もいける」

高校に入ってからは、ラップをやる友人とも出会い、本格的にヒップホップにのめり込んでいく。

Twitterをきっかけに後藤正文と共演

そして2015年。

アジカンの楽曲「1980」にラップを乗せてネット上に公開したことをきっかけに、ボーカルの後藤正文さんと共演を果たす。

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@ACE0317 聴きましたー!凄い格好良い!このくらい上手にビートに当ててすらすら言葉が紡げたら、俺もラッパーになりたかったなぁ。どうもありがとう!嬉しいです。

「今でも夢なんじゃないかっていうくらい大きいです。ダメ元で(コラボを)お願いしたら、快くOKしていただいて、気持ちでは4回バク転しましたね」

ACE /Butterfly Effect feat Gotch

YouTubeでこの動画を見る

戦極MCBATTLE / Via youtube.com

「いつかきっと胸が踊るような1ヴァースが風になる」(Gotch)

2012年のTwitterでのやり取りから3年。

「Butterfly Effect」は、ACEさんの1stアルバム「STRAIGHT」に収録された。

ACEさんは、はじめてアジカンを聴いた時の心境をこう語っている。

「下から這い上がるっていうか、下のところでずっと転がり続けてる人の強さ。すげー頑張れって言われてるような気がして、それでも笑いたいとか、それでも歌っていようって」

「Butterfly Effect」で繰り返されるリリックには、まさにACEさんがアジカンから感じとったメッセージが描かれている。

作用しているアティチュード
自分との戦い不安定で仕方ないこれじゃなにも変わらない?
何か変えられないかな?
無力は耐えられないから
泥にまみれたっていい思い書き綴っていく(ACE)

一方の後藤さんは、そのACEさんの思いを受け止めるかのように、Gotch名義のホームページで「Butterfly Effect」から以下のリリックを掲載している。

いつかきっと胸が踊るような1ヴァースが風になる(Gotch)

「Butterfly Effect」は、「1980」でのACEさんのラップが後藤さんの元へ届き、ACEさんのそれまでの思いや苦しみが引き起こした奇跡のようだ。

音楽で変えられる

Keiya Nakahara / BuzzFeed

ACEさんは、ヒップホップを本気でやりはじめた時から、「絶対に有名になる自信があった」と語る。

2017年現在。

フリースタイルラップブームの火付け役となった人気番組「フリースタイルダンジョン」、さらには本田翼さん主演のドラマ「わにとかげぎす」、9月からは舞台「TOKYO TRIBE」への参加が決定している。

その言葉通り、音楽以外の活動も精力的にこなし、ヒップホップシーンの中でも異色の存在となった。

このままACEさんはどこを目指していくのだろうか。

「やりたいことのために、まっすぐ進むしかないなって。何がやりたいかって思った時に、ラップでちゃんと飯を食って、しっかりと世界に俺の存在を知らしめないといけねーなって」

「俺は音楽で変われたから、俺にも、何か音楽でちっちゃいことでも変えられるはずだって」

あくまでヒップホップ、音楽という軸はぶれない。

ACEさんには、学生時代に有言実行を宣言した友人との約束がある。

「B-BOY PARK MC BATTLE」での優勝、「流派-R」「ミュージックステーション」への出演、そして武道館でのライブ。

どれも簡単に達成できるものではないが、ここ数年で少しずつ達成してきた。

残る「ミュージックステーション」「武道館」についても、「1個1個クリアしていくだけ」と自信満々に語る。

なんの根拠もないけれど、その力強い言葉には、不思議と胸が躍ってしまう。

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