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東日本大震災の震災関連死、5割は避難生活に原因が。それでも雑魚寝はなぜ続く?

災害が発生した際、避難所を映すカメラの先には体育館で雑魚寝で避難生活を続ける人の姿が。段ボールベッドやトイレの整備を促すガイドラインが存在する中で、なぜ環境整備は進まないのか。

台風19号で被災した長野県上田市のある避難所の写真が話題となっている。そこに写っているのは「避難所」と聞いて連想されるような雑魚寝している姿ではなく、青色のテントが設営された避難所の様子だ。

池田総一郎 / Via Facebook: soichiro.ikeda.79

この写真を自身のFacebookに掲載した上田市議会議員の池田総一郎さんは、こう語る。

「写真のようなファミリーパーテーションの他にも、簡易トイレ、食料、水、毛布、発電機等、避難者を受け入れるための機材、食料等が比較的潤沢に備蓄されていた」

この写真は塩田中学校で撮影したもの。ここでの避難所運営は実質2日程度だったが、「市役所職員の対応も迅速で、地元の長野大学からは学生スタッフの応援もあった」という。防災協定を結んでいる上田ケーブルテレビからの災害情報を観るためのテレビ機材の提供や、地元の子ども食堂運営団体の炊き出しも実施された。

池田総一郎 / Via Facebook: soichiro.ikeda.79

池田さんは「上田市のすべての避難所に塩田中学校の防災倉庫に収納されているものと同じレベルの備蓄が必要」と強調する。上田市の危機管理防災課の担当者はBuzzFeed Newsの取材に対し、「市内全ての避難所でこうした生活環境が整っていたかは不明だ」とした上で、数年前からプライバシーの保護やストレス軽減のために緊急時の避難所の設備を改善するため物品の購入を進めていたと明かした。

避難所の環境整備は現場判断によるものであり、今回話題となった避難所は備蓄倉庫が併設されていたため、環境の改善が行われやすかったのではと担当者は取材に話す。

今回、他の市議会議員のSNSでの発信に端を発し、整った避難所の設備が話題となった。だが、こうした環境の整った避難所はまだまだ少ない。

台風19号によって浸水被害が出た福島県いわき市の避難所ではノロウイルスの集団感染も発生している。

自治体間、避難所間で受けられる支援に格差が生じているのだ。

東日本大震災の震災関連死、5割は避難生活に原因が。

2012年3月31日までに1632人が東日本大震災の震災関連死と認定されている。そのうち1263人を対象に行われた復興庁の調査では、「避難所等における生活の肉体・精神的疲労」が原因と認められるケースが3割、「避難所等への移動中の肉体・精神的疲労」が原因と認められるケースが2割となっている。

この結果から、震災関連死の5割が避難生活に起因していることがわかる。

復興庁も報告書の中で「避難所等での厳しい生活環境が、その後の健康状態にも影響を及ぼす」と指摘し、早期のライフライン復旧と並んで「避難所等の環境整備・改善が重要」と記載している。

内閣府のガイドラインと現場の対応になぜギャップが?

提供写真

避難所・避難生活学会の水谷さんがイタリアの避難所の視察をした際に撮影した写真。避難所にはテントが設置され、その中にはベッドが並べられている。

こうした現状をうけ、内閣府は2016年に「避難所運営ガイドライン」を策定している。このガイドラインは、避難所において避難者の健康が維持されることを目標に設定し、避難生活の質の向上を目指すものだ。

だが、段ボールベッドや仕切りの導入、トイレ環境の改善などが依然として進まない。

ガイドラインに法的拘束力はないが、なぜここまで呼びかけているにも関わらず環境改善が進まないのだろうか。

避難所や避難生活に関する実践研究者たちが集まり、被災者の安全な生活の向上にに向けた提案を行ってきた「避難所・避難生活学会」の水谷嘉浩さんはBuzzFeed Newsの取材に対し、「法律と組織の壁が環境整備を妨げている」と回答した。

提供写真

イタリアの避難所のトイレ。

「トイレ(T)・キッチン(K)・ベッド(B)、3つの環境を避難生活開始から2日以内に整えることが望ましい」と水谷さん。例えば、避難所の設備が整っていることで知られるイタリアでは、発災から2日以内に避難所の環境を整備することが法律で義務付けられている。

日本の避難所の環境改善を行う上で災害関連法が定める避難所生活が最大7日間であることが壁となっている。大規模な災害が発生した場合、避難所生活の長期化が予想される。

例外的な対応が必要な場合に適用される特別な基準も存在するが、各市町村に求められているのは7日間しのぐことのできる最低限の設備だけだ。

提供写真

イタリアの避難所では栄養バランスに配慮された食事も提供されている。

また現在の災害関連法で住民の命を守る主体が市町村であると定義されていることも、避難所で受けることのできる支援の格差を生んでいる。市町村の財政規模や備えの差が緊急時に住民の受けることのできる支援の差につながっているのだ。

「法律の整備と同時に、国が緊急時の支援を標準化すべき」と水谷さんは指摘する。そのためにも、世界各国と同様に防災を専門とする省庁が発足することが必要だと強調する。

現在、防災関連の取り組みは各省庁横断で取り組んでおり、緊急時に災害関連の情報を発信する内閣府の防災担当の職員にも限りがあるのが現状だ。こうした環境では防災に関する専門的な知識を持った職員の育成も困難となる。

「法律と組織の壁が存在する。それらが災害時に場当たり的な対応が続くことの原因となっています」


Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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