菅首相「4ヶ月間で答えを出してきた」? 自己評価にヤジ、施政方針演説で

    44分に渡って語られたことの多くはこれまでの繰り返し。目新しい政策が示されることはなかった。

    菅義偉首相は1月18日に開会した国会で、施政方針演説を行った。施政方針演説とは、その年の最初の国会で、首相が政策の方針を語るものだ。

    菅首相は冒頭、「私が、一貫して追い求めてきたものは、国民の皆さんの『安心』そして『希望』です」と語ったが、ほとんどはこれまでの繰り返しで、目新しい政策はなかった。

    新型コロナウイルス感染拡大への対策については「1日も早く収束させる」と決意を表明。一方、昨年9月からの菅内閣の歩みを振り返った場面ではヤジが飛ぶシーンもあった。

    特措法改正、「早期に国会に提出」

    「今一度、国民の皆様のご協力をいただきながら、私自身もこの闘いの最前線に立ち、都道府県知事はじめ自治体関係者とも連携しながら、難局を乗り越えていく決意です」

    菅首相は新型コロナ対策について、こう語った。

    飲食での感染を抑え込むこと、テレワークの7割実施、不要不急の外出・移動の自粛、イベントの人数制限を行うことと合わせて、強調したのは新型インフルエンザ等対策特別措置法の改正だ。

    首相は特措法改正案で罰則や支援などについて規定し、「飲食店の時間短縮の実効性を高めます」とし、「議論を急ぎ、早期に国会に提出いたします」との方針を示した。

    新型コロナの感染拡大や2度目の緊急事態宣言の発出を受け、生活が困窮する人も増えている。

    菅首相は暮らしを支えるための支援は「政治の責務」であるとし、雇用調整助成金や無利子無担保の融資などを紹介、政府がこれまで打ち出してきた支援策を改めて強調したかたちだ。

    「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し」

    「給付は高齢者中心、負担は現役世代中心という構造を見直し、未来を担う子どもからお年寄りまで全ての人が安心できる社会保障への改革を進めていきます」

    菅首相は現在の社会保障の構造的な課題にも言及し、少子化の問題を解決するための不妊治療への支援の強化や男性が育休取得しやすい職場環境の整備を義務付けると語った。

    その他にも3月で10年を迎える東日本大震災からの復興や地方の活性化、「成長の原動力」と首相が期待を寄せるグリーン社会やデジタル改革などについて方針を示した。

    東京オリンピック・パラリンピックについては「人類が新型コロナウィルスに打ち勝った証として、また、東日本大震災からの復興を世界に発信する機会としたい」と述べている。

    また、演説の中には、「桜を見る会」前夜の夕食会に関する菅首相の過去の答弁の中に「事実と異なるものがあった」とし、謝罪する一幕もあった。

    44分に渡って語られた首相の施政方針演説。しかし、その中身はすでにこれまで語られてきたことの繰り返しが多く、目新しい発言はなかった。

    盛り上がりにかけた施政方針演説。議場で居眠りする議員が多いことを指摘する声もTwitterで上がっていた。

    「答えを出してきた」「スピード感」にヤジ

    「未来への希望を切り拓くため、長年の課題について、この4ヶ月間で答えを出してきました」

    新型コロナ対応など後手後手に回っている印象が拭えない中、菅首相は昨年9月からの歩みを自身で振り返り、このように総括した。

    その際、議会からは「(答えは)出てないよ!」とヤジが飛んだ。

    菅首相がその後「皆さんに我が国の将来の絵姿を具体的に示しながら、スピード感を持って実現してまいります」と続けると、「後手後手!」という声もあがった。

    Twitterでは「スポーツ観戦の声援はダメなのに国会のヤジはOKなの?」という批判的な声もあがった。

    とはいえ、菅政権の新型コロナ対策に厳しい目が注がれているのは事実だ。

    1月15〜17日に実施された読売新聞の世論調査では、内閣支持率が39%、不支持率は49%となり、初めて不支持が支持を逆転。

    政府のこれまでのコロナ対策についても「評価する」の26%に対し、「評価しない」が66%となっており、まさに「後手後手」の対応が支持率に影響しているとみられる。

    今年は10月に衆議院議員が任期満了を迎えることになるが、新型コロナの収束の見通しも立たない中で内閣支持率は低下を続けおり、菅内閣としても厳しい状況だ。「次の一手」に注目が集まっている。