経営統合で何が変わる?ヤフーニュースとLINEニュースはどうなるの?2人のトップが語ったこと

    サイト上に課題解決ボックスも設置。ユーザーからのリクエストに答えるという。

    Zホールディングス(以下、ZHD)とLINEの経営統合が3月1日、完了した。

    経営統合によって生まれた新生ZHDは戦略方針を説明するための記者会見を開催し、現段階で定められている指針を示した。

    経営統合の結果、国内ではLINE PayをPayPayに統合する方針も発表されている。

    「インターネットが大好きです」

    会見の冒頭、Yahoo! JapanおよびLINEの歴史を振り返りながら今後の方向性を示すムービーには「この国に残された様々な課題をデータとAIの力で解決しよう」「インターネットに新しい選択肢を作ろう」といった言葉が並ぶ。

    経営統合完了を機に掲げられたのは「できるを、もっと」というキャッチコピー。

    Co-CEOに就任した川邊健太郎氏は「社会をあっと驚くほど便利にし、機会を生み出してきたインターネットが大好きです」「今よりもっと豊かで便利な世の中にでえきると確信している」と語った。

    川邊氏と共にCo-CEOを務める出澤剛氏は「できるを、もっと。できるようになりたいこと、したいことをお寄せください」とコメント。

    ZHDのサイト上に課題解決ボックスを設置したことを発表した。

    「情報技術の力を開放し、皆さんと、より豊かで便利な世界を実現していきたい」と強調している。

    明かされた集中領域、4つのポイントは?

    新生ZHDの戦略方針説明会では3つの根幹領域と、4つの集中領域が発表された。

    根幹領域は「検索・ポータル」「広告」「メッセンジャー」、集中領域は「コマース」「ローカル・バーティカル」「Fintech」「社会」だ。

    それぞれについて、語られたポイントは次の通りだ。

    (1)コマース

    ・LINEを活用した「ソーシャルコマース」、実店舗と連携することによるオンライン、オフラインをまたいだ「X(クロス)ショッピング」の実現。

    ・中長期的にはダイナミックプライシングを導入し、一人ひとりが得に買い物することができる「My Price構想」も検討。

    ・自社ECの構築、運営、分析や接客などを一気通貫で管理できる「Smart Store Project」を2021年上半期に提供予定。

    (2)ローカル・バーティカル

    ・「Yahoo!ロコ」「一休.com」「LINE PLACE」といったサービスから飲食や旅行へ送客。AIを活用し、よりマッチング精度を向上させる。

    ・出前館の配達網をZHDの他のサービスが活用することを目指す。

    ・広告事業では、通常のオンライン上のマーケティングだけでなく、商品購入者へのお得なクーポン送付や再購入を促す取り組みなど、より効率的かつ継続的なマーケティングを可能に。

    (3)Fintech

    ・ユーザーに合わせてローンや投資、保険などを提案するシステムの充実。

    ・PayPayとLINE Payについては、国内QRコード / バーコード決済をPayPayに統合するため協議を開始。

    (4)社会

    ・新型コロナのワクチン接種の予約管理をはじめとするLINEを活用した行政手続きの拡充。

    ・児童手当や介護など、マイナポータルと連携した行政手続きのオンライン申請サービスの開始。

    ・平時、災害警戒時、災害発生時、復旧・復興時などそれぞれのフェーズで必要となる情報の提供。災害発生時には、一人ひとりの位置情報などをもとに取るべき避難行動や、向かうべき避難先などを伝えることも目指す。

    ・オンライン診療サービス「LINEドクター」を起点とした、遠隔診療サービスの充実。2021年土中にオンラインでの服薬指導をスタート。

    強みは「守備範囲の広さ」

    GAFA(Google、Amazon、Facebook、Apple)やBAT(Baidu、Alibaba、Tencent)よりも新生ZHDが優れている点として川邊氏は、検索事業、Eコマース、メッセンジャー、金融などの「守備範囲の広さ」を挙げ、「グループの総合力を生かしてやっていきたい」と語った。

    出澤氏も「日本のユーザー、アジアのユーザーがピンポイントで困っている点に応え、ユーザーにとって圧倒的に便利なサービスを作っていく。同質化でなく、差別化していく」と話した。

    経営統合することが発表された1年4ヶ月前の会見では、経営統合は「対等の精神」によって進めることが繰り返し強調された。

    実際、新生ZHDの取締役の構成や株主の構成はそうした意図を色濃く反映したものとなっている。

    一方で、懸念として上がるのがガバナンスの問題だ。意思決定はどう行うのか。

    川邊氏は「今のガバナンス体制はまさに対等経営、対等統合の精神に基づいたもの」であるとし、今後出てくる諸課題のうち解決が難しいものは取締役会にはかると説明した。

    Yahoo!ニュースとLINEニュースの統合は?

    新生ZHDは重複するサービスの統廃合は新たに設置される「プロダクト委員会」で決定するとしている。

    2社の既存サービスの拡大だけでなく、新生ZHDとして新たなサービスを作ること にも取り組むという。

    PayPayとLINE Payに続き、他のサービスでも統合の予定はあるのか。

    YahooとLINEで多くのユーザーを抱えるもう一つのサービスは、ニュースだ。

    川邊氏はYahoo!ニュースとLINEニュースについて、統合の予定は「ない」と語った。

    それぞれのユーザー層に違いがあるのが、その理由だという。「LINEニュース、Yahoo!ニュースは極めて補完的。LINEニュースのユーザーは若い女性が多い」と説明した。

    3つのスーパーアプリの可能性

    3つのスーパーアプリの可能性メッセンジャーや決済、Eコマースなどあらゆるサービスを横断する「スーパーアプリ」の開発を目指すのかとの質問に、川邊氏は新生ZHDにはスーパーアプリを目指せるサービスが3つあると答えた。

    生活に根差したLINE、支払いに紐づくサービスに特化したPayPay、情報収集のベースとなるYahoo! JAPANの3つだという。それぞれサービスの特性は異なる。

    「無理なく、もともとあるサービス特性を生かしながら、無理ない範囲で使えるサービスに発展させていく」

    「そもそも世界で3つもスーパーアプリにチャレンジできる会社は、おそらくZHDだけ。信念を持ってやっていきたいと思います」


    (Zホールディングス株式会社は、BuzzFeed Japanに49%出資しています)