「所持金はジュース3本分」炊き出しには472人の行例が… 感染者数が減っても、生活困窮者の増加は続く

    「どこの福祉事務所に相談するか次第で地獄を見るか、支援を受けることができるかが決まってしまう」

    反貧困ネットワークなど12の支援団体が12月14日、住まいを失った人々への支援を求める要望書を、東京都に出した。

    支援団体側は「新型コロナの感染状況は落ち着いているが、困窮者支援をめぐる現場は緊急事態の様相を呈している」と厳しい現状を訴える。

    支援団体が要望したのは…

    東京都の小池百合子知事は11月25日の記者会見で、年末年始に住まいを失った人に一時宿泊場所を提供する方針を示した。都議会が関連する補正予算の審議を行っている。

    そんな中、支援団体は実施する以上は必要な人へ支援を届けること、一回きりの支援で終わることがないよう求めている。

    具体的には次の2点だ。

    (1)年末年始の東京都による一時宿泊場所確保に関する要望

    ・支援情報の積極的な広報
    ・年末年始の福祉事務所の相談窓口の体制整備
    ・宿泊場所から退所した後の居宅生活への円滑な移行

    (2)住居を失った人への一般的な支援に関する要望

    ・年末年始に限らず、住まいがない人が福祉制度を利用する際の自治体間での対応格差について運用改善、調査の実施
    ・一時的な宿泊場所の確保や住まいがない人が生活保護申請をした際の対応の標準化
    ・住まいへのアクセスの確保など

    どこに相談するか次第で受けられる支援に格差が

    「昨年のコロナ禍における福祉事務所の対応よりも、若干後退している感は否めない。去年よりもかなり厳しい状況で年末年始を迎える」

    「コロナの感染拡大から1年9ヶ月以上が経過する中で、若い世代と女性が悲鳴を上げる状況が深刻化している」

    こう語るのは反貧困ネットワークの事務局長を務める瀬戸大作さんだ。

    多くの福祉事務所が12月29日〜1月3日にかけて閉庁することが見込まれている。支援を必要としている人たちが年末年始の閉庁期間に行き場を失うことがないように、十分な支援を用意することをはたらきかける予定だという。

    福祉制度による支援については、都内においても自治体間において格差が広がっている。

    「区市によって対応の格差が著しい。ビジネスホテルは23区のうち10区ほどしか提供していません。東京都が一時宿泊場所を確保すると言っても、現場の福祉事務所ではそのような運用をしていないエリアがあるために大変な思いをする人がいます」

    「どこの福祉事務所に相談するか次第で地獄を見るか、支援を受けることができるかが決まってしまう。東京都にはこうした現場での実態をしっかりと調査し、把握してほしい」

    炊き出しに並ぶ人はコロナ禍以前の3倍に

    池袋で生活困窮者支援を長年続けるNPO法人Tenohasiの清野賢司さんは、月2回行っている炊き出しへ並ぶ人が右肩上がりで増え続けていると明かした。

    これまで炊き出しに並んだ人の最多記録はリーマンショック(2008年)直後の460人。しかし、今年の11月27日には、それを超える472人が食べ物や支援を求めて公園に列をなした。

    コロナ以前の2019年は145人であったことを踏まえると、炊き出しを必要とする人の数は3倍以上に膨れ上がっている。

    「3分の1は住まいがない人々、3分の2は住まいはあるけど食費などが足りない人々です」

    先日も「所持金はジュース3本分しかありません」と訴える相談者からの相談を受けたという。電話で相談を寄せる人の多くは所持金が100円、200円程度といった状況だ。

    「感染状況が落ち着いて、緊急事態宣言なども解除され、困窮者への支援も平時の体制で良いと思われるかもしれません。しかし、人が減らないどころか増えている」

    野宿する女性も増加

    支援団体は、野宿をする女性の増加が確認されているという。

    女性による女性のための相談会実行委員会」の吉祥眞佐緒さんは「女性が男性に混じって相談することのハードルが高い」と指摘した。

    こうした課題を踏まえ、同実行委員会は12月25日、26日と1月8、9日に女性を対象とした相談会を開催する予定だ。