コロナ対策の反省点は? 分配よりも成長が先? 選択的夫婦別姓、同性婚は? 立憲・枝野氏が岸田首相に投げかけた問い

    解散・総選挙を控える衆議院で10月11日、代表質問が行われた。立憲民主党の枝野幸男代表が首相に突きつけた質問と、岸田首相の回答は。

    解散・総選挙を控える衆議院で10月11日、代表質問が行われた。トップバッターを務めたのは野党第一党・立憲民主党の枝野幸男代表。

    枝野代表は「これまでの新型コロナウイルス感染症対策は上手くいったとの認識ですか」などと、岸田首相の認識を質した。

    最大野党の代表が首相に突きつけた質問と、岸田首相の回答は。

    コロナ対策、反省点はどこに?

    初めに枝野代表が投げかけたのは、新型コロナウイルス感染症対策に関する質問だ。

    次期衆院選後に立憲民主など野党側が政権を担うこととなれば、宿泊や食事などを費用を国が負担したうえで、全入国者を10日間隔離することなどをアピール。

    水際対策の徹底、PCR検査の抜本的拡充、保証をセットという3つを徹底しなければ「感染拡大が繰り返される」とした上で、「これまでの新型コロナ対策は、上手くいったとの認識か。どこに反省すべき点があると考えるか」と問いただした。

    岸田首相は次のように回答した。

    「水際対策については、これまでも国内外の感染状況を見極めつつ、政府はその時点での必要な措置を講じてきましたが、結果的には改善すべき点があったと考えます。危機管理の要諦は最悪の事態を想定することだと考えており、引き続き国民の皆様の安心確保に向けて取り組みつつ、必要な水際対策を講じてまいります」

    「検査の拡充も重要な課題です。冬の再度の感染拡大に備えて、インフルエンザ流行に伴う需要も勘案しつつ、予約不要の無料検査の拡大などPCR検査を含めて検査体制をさらに強化してまいります」

    9月には全国で自宅療養者の数が10万人を超えた。枝野代表は、入院できずに自宅で亡くなる人が出たことは「自民党政権の失敗と言わざるを得ない」と指摘。「反省の思いはないのか」と問いかけた。

    これに岸田首相は「ワクチン接種は世界に類を見ないスピードで進んだが、コロナ病床が十分に稼働しなかったことなど夏の反省を踏まえ、近日中に全体像の骨格を提示する」「これまでの対応を徹底的に分析し、何がボトルネックだったのかを検証します」と述べるにとどめた。

    成長が先? 分配が先?→「成長か分配かではなく…」

    岸田首相は成長と分配の好循環をもたらすことの重要性を繰り返してきた。

    これに対し、枝野代表は「そもそも一般論に過ぎず、今の日本には当てはまらない」と批判。

    「適正な分配が機能せず、将来不安が広がっていることと相まって、成長を阻害していることが最大の問題。成長の果実を分配するのでは、いつになっても好循環は生まれない」と提起した。あわせて、アベノミクスへの評価を質した。

    岸田首相はアベノミクスについて、「六重苦と言われた旧民主党政権の経済不況から脱し、デフレでない状況を作り出し、GDPを高め、雇用を拡大した」とし、「経済の体質強化に大きな役割を果たした」と評価した。

    「岸田政権は成長か分配かではなく、成長も分配も、が基本スタンス」としつつ、次のように語った。

    「成長なくして分配なし。成長なくして、分配できるとは思いません。まず成長を目指すことは極めて重要であり、その実現に向けて全力で取り組みます。それが、民主党政権の失敗から学んだことであります」

    岸田首相は自民党総裁選や就任直後の会見などで、株式の配当や売買にかかる金融所得課税の見直しについて言及していた。

    金融所得課税の税率は現在、一律20%。しかし、高所得層は金融所得の割合が高いことなどから、年間の所得が1億円を超えると所得税負担率が下がる「1億円の壁」と呼ばれる問題が指摘されてきた。

    しかし、菅前首相の退陣表明後に一時、急伸した日経平均株価が総裁選後に低迷していることなどを受け、岸田首相は10月10日のテレビ番組で金融所得課税の見直しは当面、行わない姿勢を示した。

    この点について岸田首相は11日の答弁で「金融所得課税の見直しは成長と分配の好循環を実現するための様々な分配政策の選択肢の一つ」であるとしたうえで、「賃上げに向けた税制強化、下請け対策の強化など、まずやるべきことがたくさんある」と述べ、当面は棚上げする考えを改めて示し、軌道修正した。

    「引き続きしっかり議論すべき」「極めて慎重な検討を要する」

    夫婦別姓や同性婚については何を語ったのか。

    「大部分が女性である婚姻の一方の当事者に改姓を強いるという差別的な制度を急いで改める必要を感じませんか」

    枝野代表はこのように投げかけ、あわせて同性カップルによる婚姻を可能にする法制度実現に向けた見解を尋ねた。

    岸田首相は3月に発足した自民党の「選択的夫婦別氏制度を早期に実現する議員連盟」の呼びかけ人に名を連ねているものの、総裁選においては選択的夫婦別姓については慎重な姿勢を示した。

    この日、岸田首相は「選択的夫婦別姓の導入については、国民の間に様々な意見があるところ。引き続きしっかり議論すべき問題である」と答弁。

    また、同性婚制度については「我が国の家族の在り方の根幹に関わる問題」とし、「極めて慎重な検討を要するものであると考えます」と語った。

    安倍・菅政権下での問題については…

    安倍政権・菅政権下で起きた様々な出来事への対応について、枝野代表は次のように強調した。

    「私達の政権では初閣議において、日本学術会議人事で任命拒否された6名を任命いたします。いわゆる赤木ファイルと関連文書を開示いたします。森友加計、桜を見る会問題の真相解明チームを設置いたします。内閣人事局による幹部職員人事制度を見直し、官邸による強すぎる人事介入を抜本的に改めます」

    「隠蔽・改ざんを根絶するため、公文書管理制度と情報公開制度を抜本的に強化し、公文書記録管理院の設置を目指します。生まれ変わった自民党とおっしゃるならば、これらに取り組むべきではありませんか」

    岸田首相は、一連の質問に以下のように答弁し、基本的には再調査などに後ろ向きな姿勢を示した。

    日本学術会議に任命拒否問題:「任命権者である当時の内閣総理大臣が最終判断したものであることから、一連の手続きが終了したもの」

    赤木ファイルの開示:「原本をそのままコピーした上で、個人のプライバシーなどに限定してマスキングし、全て提出したと承知をしております」

    森友学園問題:「財務省は捜査当局の協力を得て、事実を徹底的に調査し、自らの非をしっかり認めた調査報告を取りまとめています。また、会計検査院による検査報告を国会で実施。検察の捜査も行われ、結論が出ている」

    加計学園問題:「国家戦略特区は法令に則り、オープンなプロセスで検討が進められた」

    桜を見る会:必要な調査が行われ、国会の場でも繰り返し説明がなされてきた」

    内閣人事局の幹部職員人事:「能力実績主義に基づく公正中立な人事配置を行う仕組み。各府省の幹部人事はこの制度のもと、今後とも適材適所で行う」

    公文書管理と情報公開:「国民の行政に対する信頼の根幹。公文書管理の適正化に向けルールの明確化やチェック体制の整備など取り組みを着実に実施してきた。引き続き徹底していくとともに、情報公開の一層の充実を図り、行政の説明責任を適切に果たす」