傘でダンボールを刺される、エアーガンで顔を… ホームレスが生きる現実。DaiGo氏発言受け、動画を無料公開

    DaiGo氏の発言を受けて、支援団体がある映画を無料公開している。ホームレスは怖い、危ない、怠け者…そんな「イメージ」ではなく現実を知ってほしい。支援者は語る。

    「雨の降った日なんか、怖いからな。傘で刺されるというのがあるから。酔っ払いが通ってな、傘で段ボールを刺すわけ。そしたら人間の顔のところにバーンってくるから」

    「やっぱり一番怖いのはな、エアーガンやな。あれが一番怖かったな。両サイドから手引っ張られて、上になんか乗せられて、それで撃ちよるねん」

    『「ホームレス 」と出会う子どもたち』と題した動画の中で、路上生活を続ける男性はこう自身の体験を明かす。

    Charly Triballeau / AFP=時事

    そこにあるのは、想像以上に過酷な現実だ。男性はゆっくり眠れることはないと漏らす。

    この映画は「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」が制作したもの。通常は学校での教材として販売されているものだが、9月30日まで現在期間限定で無料公開されている。

    きっかけは、メンタリスト・DaiGo氏の差別発言だ。

    DaiGo氏への発信に「反論」するために

    YouTubeでこの動画を見る

    ホームレス問題の授業づくり全国ネット / Via youtube.com

    無料公開中の動画

    DaiGo氏は8月7日に自身のYouTubeチャンネルに公開した動画で、「生活保護の人が生きてても僕は別に得しない」「自分にとって必要のない命は、僕にとって軽い。だからホームレスの命はどうでもいい」などと発言。

    こうした発言は「ヘイトクライムを誘発しかねない」として、多くの批判の声があがった。

    「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」の代表を務める北村年子さんは、当初、問題の動画を確認し、恐怖を覚えたと振り返る。

    「背筋をすーっと水が流れていくような、そんな感覚を覚えました。一体、この人は何を言っているのかと。真っ先に思い浮かんだのは、これを見ているであろう若い人々への影響です」

    「まさにステレオタイプに基づく発言で、ホームレスと呼ばれる人々への固定化したイメージをもとに語られている。あれだけ多くのフォロワーを持ち、影響力が大きい人がこうした発信をしたことで、再びホームレス襲撃が起きるかもしれないと危惧しています」

    DaiGo氏の発言を知り、北村さんはすぐにYouTubeの検索欄で「ホームレス 」と検索した。調べてみると、正確な情報に基づかない発信がほとんどだと感じた

    差別や偏見を助長する発信はDaiGo氏に限った話ではない、と北村さんは強調する。批判と同時に、正確な情報をより広く届けることも重要だと考えている。

    DaiGo氏の発信へのひとつの「反論」として無料公開を決めた。

    「YouTubeの世界に垂れ流されたマイナスの毒のような情報にたいして、それを少しでも払しょくし、浄化するために私たちにできることは何かないかと考えて、同じYouTube上での映画の無料公開に踏み切りました。これは小学4、5年生から学校で教材にする映像です。誰が見てもわかりやすく、正しい情報を伝えられるのではないかと考えました」

    怖い、危ない、怠け者…根強い偏見

    提供写真

    「ホームレス問題の授業づくり全国ネット」代表の北村年子さん

    動画を授業で視聴した際、必ず出てくる感想があると北村さんは言う。

    それが、「ホームレスは怖い人たちだと思っていた」「危ない人だと思っていた」という声だ。

    「お父さんも、お母さんも、学校の先生たちもホームレスを攻撃しろなんて教えていないと思う。でも、近づいてはダメよ、危ないから見ちゃいけない、と手を引っ張られた経験がある子どもは少なくない。そうした無関心の延長線上にある偏見や差別識が、子どもたちの襲撃の背景にあります」

    また、「ホームレスは努力をしていない人たち」といった声が子どもたちから上がることも少なくない。「ちゃんと勉強して努力しないとああなるんだよ」と親から教えられたと語る子どももいる。

    「まだ、そんな認識が残っているのかと私も驚きました。でも、20年前に親からそうやって聞かされてきた子どもたちが親になり、自分たちの子どもたちにもそのように伝えてしまうのかもしれません。問題は想像以上に根深いものです」

    ホームレスは怖い、危ない、怠け者…そんな「イメージ」ではなく現実を知ってほしい。北村さんは願っている。

    ホームレス襲撃事件、加害者取材から見える現実

    時事通信

    路上生活者の女性が亡くなった事件現場のバス停に供えられた花束

    北村さんは長年、ホームレス襲撃事件の加害者の取材を続けている。

    東京、埼玉、大阪、兵庫、岐阜、全国各地で加害者たちと時に会い、時に手紙で言葉を交わす中で見えてきたことがあるという。

    「いつだって、攻撃は社会の中で最も弱くされている力がない人たちへと向かう。その最たるものが子どもであり、ホームレス状態の人たちです。襲撃した子ども若者たちの多くは学校や社会でいじめられていたり、自分はダメな存在だと思い込んでいたり…共通するのは、安心できる居場所のない子どもたち。つまり、家というハウスはあっても、心のホームレスだったということでした」

    あるホームレス襲撃事件の加害者は、中学・高校・大学とスポーツの道で推薦を勝ち取ってきた、ある種の「エリート」だった。

    しかし、体を壊し、スポーツを続けることができなくなったためにキャリアを断念。

    努力をしたのに報われない。そんな経験が重なる中で、攻撃の矛先はホームレスへ向かった。

    「『俺はこんなに頑張ったのに、なぜ認められないのか』。そんな思いが膨れ上がる中で自分の目には頑張っていない、努力していないように見えるホームレスの人たちを襲う。その一人一人にどんな人生があり、どんな現実を生きているのか、知らないからこそ、こうした事件は起き続けています」

    北村さんは、DaiGo氏の一連の発言にこうした襲撃事件と重なるものを感じるという。

    DaiGo氏は批判が殺到した翌日に公開した謝罪動画の中で「一生懸命、社会復帰を目指して生活保護を受けながら頑張っている人、支援する人がいる。さすがにあの言い方はよくなかった」と口にした。

    だが、違う。

    「頑張っていても、いなくても、たとえ頑張れなかったとしても、生きる価値がある。頑張っているから価値があるという発想こそが彼の無知を現しているし、自分自身を苦しめているだろうと思います」

    たとえ否定的意見を持ったとしても…

    動画の無料公開は9月30日まで。

    北村さんは、この動画をできるだけ多くの子どもに届けたいと強調する。

    「もしも、親子で見たならば、ぜひ子どもと感想を語り合ってほしい。もしかすると、動画を見ても、やっぱりホームレスは怖い、嫌だという意見を持つかもしれない。でも、そんな否定的な意見もまずは受け止めてほしいんです。一緒に語り合う中でお互いが考えたことを伝えてください。少しでもホームレスという記号ではなく、廃品回収をしている鈴木さん、〇〇さん、という人間として路上で暮らす人たちを見ることができるようになってくれたならば嬉しいです」

    「そして、最後に必ず、感想を伝えてくれた子どもに『ありがとう』と伝えてあげてほしい。見てくれてありがとう、感想を教えてくれてありがとうって。その一言で、ああ自分は肯定されている、ここにいてよかったと実感します。目の前の子どもたちの自尊感情を日々育むことが、時間をかけたとしてもホームレス襲撃事件をなくすことにつながると信じています」


    Contact Yuto Chiba at yuto.chiba@buzzfeed.com.

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