「明確に『自殺』という言葉を使い、死のうとする直前に支援団体へ最後のメールを送ってくる。そんな状況が頻発しています」
生活困窮者の支援を続ける反貧困ネットワークの瀬戸大作さんは、新型コロナウイルスの感染拡大から1年が経過した現在の状況をこう語る。
反貧困ネットワーク、新型コロナ災害緊急アクションは5月3日、5日の2日間、東京・四谷の聖イグナチオ教会で大人食堂を実施する。
予約は不要、無料でお弁当や生活物資を受け取ることができるほか、生活相談や医療相談、法律相談をすることができる。
おむつや生理用品の提供も
同ネットワークは今年1月にも「年越し大人食堂」と題し、同様の取り組みを実施した。
今回は5月3日の15時から18時、5月5日の12時から18時で開催する。食事は3日に150食、5日に350食提供予定だ。
また、おむつや生理用品をはじめとする生活物資を提供する。
生活困窮者支援を長年続ける一般社団法人つくろい東京ファンド代表の稲葉剛さんは「例年、ゴールデンウィークは中高年の日雇い労働者の仕事がなくなり1年で最も炊き出しに人が集まる人が増える時期」と語る。
大人食堂では、生活や法律、医療に関する相談窓口を用意しており、会場を訪れた人は誰でも利用できる。
必要であれば生活保護の申請もサポートする。
稲葉さんは「昨年4月の緊急事体宣言発出時も生活保護の申請件数が急増した。その影響で福祉事務所の窓口対応は悪化した」と振り返る。
生活保護を受給したい人が増えた結果、窓口で追い返される人が出ないか懸念しているという。
「去年の春はこんな状況が1年後も続いていると思わなかった」
支援者からは今年に入り、家賃を払えないことによる「住まいの追い出しが増加している」との声も上がる。
反貧困ネットワークの雨宮処凛さんは、昨年春に支援団体が緊急対応を開始してから1年、状況がまったく好転していないことに疑問を呈した。
「正直、去年の春はこんな状況が1年後も続いていると思わなかった。コロナ収束は難しくとも、生活困窮者の支援制度が整備されるものだと考えていました。どんどん状況が深刻化し、それを民間団体が支える現状はおかしい」
学校のALTをしていた女性がホームレスに…
今回の大人食堂開催には、数多くの外国人支援のNPOやNGOも協力する。
年末年始以降、特に外国人の生活困窮がこれまで以上に広がっている。
NPO法人「移住者と連帯する全国ネットワーク」(移住連)の稲葉奈々子さんは、飲食店や工場などで非正規で働く外国人だけでなく、学校のALT(外国語指導助手)やコンサルタントの仕事をしていた外国人にも生活困窮が広がっていると話す。
「専門職に従事する人々が暮らす住居の家賃は比較的高い。そのような中で、仕事を失いホームレスになる事例が何件も報告されています。このような人々に生活困窮が広がることを危惧しています」
カメルーンから日本に留学し、埼玉県の学校でALTを務めていた女性も、コロナ禍で家を失った。
高校生の娘を育てるシングルマザーだったが、体調を崩したことで失業。4ヶ月入院した。住む場所もなくなり、娘は児童相談所に保護された。
退院後は浅草で路上生活をしていたという。
「極端な例を紹介していると思われるかもしれませんが、こういった事例が当たり前のように相談窓口に寄せられています。長年外国人支援に携わってきましたが、これだけ外国籍の人がホームレスになっている状況は、今までありませんでした」
今回の大人食堂でもこうした外国人からの相談が多く寄せられることを予想しているという。
大人食堂では、様々な国籍の人々の困りごとに対応できるよう、幅広い専門性を持つNPOやNGOと連携して相談体制を組むとしている。
ゴールデンウィーク中は、大人食堂以外のほか、認定NPO法人自立生活サポートセンターもやいも5月1日に東京都庁下、4日にもやい事務所で相談会を開く予定だ。