新型コロナワクチンには「マイクロチップ」や「劇薬」が含まれている。
SNS上でそんな主張が出回っているが、いずれも誤りだ。
BuzzFeed Newsは、日米の専門家などによって運営されている新型コロナウイルス感染症やワクチンに関して正確な情報を発信するためのプロジェクト「こびナビ」協力のもとファクトチェックした。
新型コロナワクチンに「マイクロチップ」や「劇薬」?

Twitter上では、「マイクロチップ」「放射性同位体」「組み換え遺伝子配列」「塩化カリウム」「DHMO(Dihydrogen Monoxide)」が新型コロナワクチンには含まれていると主張するツイートが1万回以上リツイートされ、拡散されている。
投稿ではマイクロチップによって「洗脳」が、放射性同位体によって「体内被ばく」が、組み替え遺伝子配列によって「ミュータント化」が引き起こされるなどとしている。
なお、このアカウントは現在、凍結されている。
ファイザー社製の新型コロナワクチンの成分は以下の通りだ。
▷有効成分
・mRNA
▷添加物
・AKC-0315:[(4-ヒドロキシブチル)アザンジイル]ビス(ヘキサン-6,1-ジイル)ビス(2-ヘキシルデカン酸エステル)
・ALC-0159:2-[(ポリエチレングリコール)-2000]-N,N-ジテトラデシルアセトアミド
・DSPC:1,2-ジステアロイル-sn-グリセロ-3-ホスホコリン
・コレステロール
・塩化カリウム
・リン酸二水素カリウム
・塩化ナトリウム
・リン酸水素ナトリウム二水和物
・精製白糖
「ファイザー社の新型コロナワクチンについて」, 厚生労働省
「こびナビ」の医師もこのような情報について、次のように指摘する。
「ワクチンの内容物は公開されています。ワクチンにはマイクロチップは含まれていません。今回のワクチンで使われる注射針で注入し、体内でなんらかの機能を十分に発揮できるようなマイクロチップは少なくとも量産可能な形では開発されていないでしょう」
「ワクチンの製造過程や内容物は公開され、複数の専門家の評価を受けていますが、ワクチンには放射性物質は含まれていません」
接種で「遺伝子組み換え」を主張する人もいるが…

一部ではワクチンを接種することで「遺伝子が組換えられる」とする主張も根強い。しかし、そのようなはたらきをする物質もワクチンには含まれていない。
「遺伝子というのは細胞の中の核に入っている染色体(DNA)に書き込まれています。細胞の核内に外部からの物質が入り込むには特別な仕組みが必要です。さらに遺伝子に組み込まれるためには特別な酵素も必要となります。mRNAワクチンの主成分であるmRNAはDNAのある核の内部に入ることはできませんし、仮に核の中に入れたとしても、ヒトのDNAに組み込まれるための酵素も持っていません」
「DHMO(Dihydrogen Monoxide)」は一酸化二水素、つまりは水のことを指す。ジョークとして使われる言葉の一種だ。
そのため、「もちろんワクチンの成分にも含まれている」。
「DHMOはもともと、ワクチンに関するデマを揶揄する人々がインターネット上で拡散したジョークの一種です。このように専門的な用語のように見せかけているため、結果的に誤情報を広める人々が騙されて使うという現象が起きています」
なお、塩化カリウムが含まれているという主張も事実だ。だが、それによって健康に影響が出るとは考えにくいと「こびナビ」の医師は説明する。
「カリウムは、急速に大量に静脈内投与すれば危険な物質ですが、人体に欠かすことのできない物質でもあります。これが不足する『低カリウム血症』という病気も存在します。『低カリウム血症』の治療において、塩化カリウムを投与することは通常の治療として行われていることです。電解質のバランスを調整するために、新型コロナワクチンにも入っています。塩化カリウム自体は減塩醤油にも含まれており、何事も程度の問題だと言えるでしょう」
BuzzFeed NewsはこのTwitterアカウントにも取材を申し込んだ。しかし、現在まで回答は得られていない。
こびナビ監修者:ハーバード大学医学部助教授・マサチューセッツ総合病院小児精神科医 内田舞氏、ベイラー医科大学・テキサス小児病院 池田早希氏、こびナビ 岡田玲緒奈氏、こびナビ 峰宗太郎氏
BuzzFeed JapanはNPO法人「ファクトチェック・イニシアティブ」(FIJ)のメディアパートナーとして、2019年7月からそのガイドラインに基づき、対象言説のレーティング(以下の通り)を実施しています。
ファクトチェック記事には、以下のレーティングを必ず記載します。ガイドラインはこちらからご覧ください。なお、今回の対象言説の一部は、FIJの共有システム「Claim Monitor」で覚知、参考にしました。
また、新型コロナウイルス感染症やワクチンに関する正確な情報を提供する日米の専門家によるプロジェクト「こびナビ」とも連携し、新型コロナ感染症とワクチンに関する誤った情報、不正確な情報についてファクトチェックしています。
- 正確 事実の誤りはなく、重要な要素が欠けていない。
- ほぼ正確 一部は不正確だが、主要な部分・根幹に誤りはない。
- ミスリード 一見事実と異なることは言っていないが、釣り見出しや重要な事実の欠落などにより、誤解の余地が大きい。
- 不正確 正確な部分と不正確な部分が混じっていて、全体として正確性が欠如している。
- 根拠不明 誤りと証明できないが、証拠・根拠がないか非常に乏しい。
- 誤り 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがある。
- 虚偽 全て、もしくは根幹部分に事実の誤りがあり、事実でないと知りながら伝えた疑いが濃厚である。
- 判定留保 真偽を証明することが困難。誤りの可能性が強くはないが、否定もできない。
- 検証対象外 意見や主観的な認識・評価に関することであり、真偽を証明・解明できる事柄ではない。