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「ベルセルク」作者の命を奪った大動脈解離。医師が注意を呼びかける「怖い痛み」とは?

「ベルセルク」などを執筆した漫画家の三浦建太郎さんの訃報が大きく報じられた。死因の大動脈解離とはどのような病気なのか?

5月20日、「ベルセルク」などを執筆した漫画家の三浦建太郎さん(享年54歳)の訃報が大きく報じられた。

発表された死因は「急性大動脈解離」だ。

「大動脈解離」とは一体どのような病気なのか。そして、予防するために日頃の生活の中でできることは何かあるのか。

BuzzFeed Japanは国際医療福祉大学医学部救急医学主任教授を務める志賀隆医師に取材した。

大動脈解離は「とても怖い病気」

志賀医師は「発症した際のリスクは高い。大動脈解離はとても怖い病気」と語る。

発症した場合、5分の1が病院に到着する前に死亡し、最大3分の1が手術中または手術前後の合併症により亡くなるとされている。

具体的にはどのような病気なのだろうか。

「心臓から足の方まで伸びている一番大きな血管、これが大動脈です。この大動脈の内側に裂け目ができてしまい、その裂け目に血液が入り膨らむことによって起きる病気です。時には脳へと伸びる血管や心臓へ血液を送る血管や他の内臓などを巻き込むケースがあります」

「高齢者に起こりやすいとされていますが、40代や50代の方が発症するケースもあります」

「大動脈解離」はA型とB型に分類される。心臓から近い場所で血管が裂けている場合はA型、心臓から遠い場所で血管が裂けている場合はB型だ。(Stanford分類)

典型的な症状も、どちらのタイプを発症したのかによって異なると志賀医師は言う。

「最初に背中がバンと痛くなり、痛みが移動する。例えば、両脇が痛くなり、首が痛くなり、顎が痛くなる。これはB型の大動脈解離の典型的な症状です。一方、A型の場合はまず胸が痛くなり、それがだんだんと背中の方へ移動し広がっていきます。また始めはB型だったが裂け目がどんどん前側に広がっていきA型になることもあります」

また、脳へと伸びる血管が裂けた場合には痛みを本人が自覚し訴える前に、意識が低下し、脳梗塞を発症してしまうケースもあるという。

「A型を発症した際は、治療法は手術しかありません。B型を発症した際には血圧を下げ痛み止めを使いながら様子を見る場合やステントグラフトによる治療をする場合、手術をする場合があります」

※ステントグラフトによる治療:足の付け根などにある動脈から「ステント」といわれるバネ状の金属を取り付けた人工血管を入れて治療する方法。

医師が教える「怖い痛み」とは

どのような痛みを感じた場合に病院へ行くべきか。

注意すべきは、突然の強い痛みだ。

何かをしている最中に突然背中や胸が痛む。その痛みがだんだんと違う部位へと移動していく。

こうした痛みは、「怖い痛み」であると志賀医師は強調する。

「大動脈解離の場合、手術が1時間遅れるごとに助かる確率が1%下がると言われています。強い痛みを感じたら、できるだけ早く医療機関を受診していただきたいです」

「もしも殴られたような強い痛みを感じたのであれば、迷わずに救急車を呼んでいただきたいです。早めに診断することで助かる確率が上がります」

予防のためにできることは?

血圧の高い人、動脈硬化を患っている人…

このような場合、大動脈解離を発症するリスクが高い。

一部には遺伝的に大動脈解離を発症しやすい人々もいる。また、マルファン症候群という大動脈解離を引き起こしやすい疾患も存在する。

志賀医師が実際治療した患者の中には、ゴルフ場で突然倒れた人もいた。

ゴルフクラブをスイングするために力んだことが引き金となり、発症したと思われるケースだ。

「大動脈解離を予防するためには、日頃の血圧が高くなるような行動や血管を悪くするような行動を避けることが重要です」

三浦さんの訃報が報じられた際、座り仕事が多く、締め切りに追われる漫画家という仕事柄、大動脈解離が起きるリスクが高くなっていた可能性を指摘する声も上がっていた。

座っている時間が長くなると血圧が上がるという研究結果も存在する。また、デスクワークを続ける際には、時折立ち上がった方が良いことも示唆されている

テレワーク中には座る時間が長くなり、運動不足になるリスクがある。また、食生活が偏ったり、睡眠不足、運動不足でも血圧が上がる。

コロナウイルス感染症による影響でで社会の変化があり、テレワークはある程度続いていくと予想される。

「テレワーク時代の健康な働き方」として、自宅での食事のバランスを見直し、運動を含めた生活リズムを作ることや禁煙・節酒に努めるなど、「新しい生活習慣を目指してほしい」と志賀医師は語った。