そろそろ就活を始める現役大学生へ─ 社会に出ていくために必要な「5つの武器」

    社会に出る前の学生だからこそできること、考えておきたいこと。慶應義塾大学大学院の特任助教として、学生たちにこれからの働き方や生き方を伝えている正能茉優さんに、学生時代に身につけておきたい「5つの武器」を解説していただく。

    働き方に悩む、現役大学生たちへ

    周りがやっているから、やらなければならないから、という理由で、なんとなく就職活動を始め、なんとなく内定をもらい、なんとなく社会に出る...。この「なんとなく」の積み重ねでついた仕事は、自分が本当にやりたいことなのか。こんな疑問を抱きながら、仕事をし続けるのはとても悲しいことだ。

    親は保守的、学校の先生もあてにならない、一緒に就活をしている同期だってビクビクしている。そんなとき「実際に働いている、ちょっとだけ先輩」にアドバイスをもらえたら。

    そこで今回、地方にある商材のパッケージをかわいくプロデュースし、配信・販売する会社「ハピキラFACTORY」を大学時代に創業し、現在は大手電機メーカーでも働く正能茉優さんにお話を伺った。現在は、自身の経験を活かしながら、慶應義塾大学大学院の特任助教として、学生たちにこれからの働き方や生き方を伝えている。

    Yukiko Hibi / BuzzFeed

    正能茉優さん

    「小布施」というスタート地点

    すべては、小布施から始まった。

    2010年、大学1年生だった正能茉優さんは、長野県で面積が一番小さな町、小布施町へと向かった。当時の小布施では、学生とともにまちづくりについて考える「まちづくりインターンシップ」なるイベントが開催されており、正能さんは大学の先生の紹介でそこに参加してみることにした。

    「無料で長野に2週間滞在できると聞いて、行ってみようかなという軽い気持ちで参加しました」

    小学生の頃から新聞記者を目指していた正能さんだが、この小布施のまちづくりインターンシップに携わったことをきっかけに、地方という場所に興味を持ち始めた。

    「小布施に行くまでは、有名な大学を出て、有名な会社に入って、いい暮らしをすることが『幸せ』なんだと思っていました。でも、小布施の人たちと仲良くなる中で、『豊かさ』には種類があると気づいたんです。私が目指していたのは物質的な豊かさだったけれど、小布施の人たちのように精神的な豊かさのある暮らしを、心から素敵だなと羨ましく思うようになりました」

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    そんな思いを抱え、インターンシップの後には、2012年に「小布施若者会議」を立ち上げた。全国から集まった240人の若者からは、いくつものプロジェクトが立ち上がり、移住する強者まで現れ、会議は大成功とも言われた。しかし、同時に、女性参加者の圧倒的な少なさも気づかされる。

    どうしたら、小布施に、地方に、女の子たちにも興味を持ってくれるのか。そう考えた正能さんは、大学の先輩と二人で「かわいい」を切り口に地域の商材をプロデュースする会社ハピキラFACTORYを創業した。

    生まれも育ちも東京だった正能さんにとって、小布施はいわば「全てのスタート地点」と言っても過言ではない。

    学生のうちに「仕事をつくる経験」を積む

    「東京しか知らない私が、小布施で活動をさせてもらえたのは、小布施の持つ『パトロン文化(よそから来た人々を、手厚く迎えいれる習慣)』が大きかったように思います。初めて訪れたよそ者や若者も、チャレンジの気持ちがある人であれば、まちの人が受け入れて応援してくれるんです」

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    そんな思いやりのある小布施の文化の中で、正能さんは小布施若者会議とハピキラFACTORYの創立を成し遂げた。当時は特に実績もなかった正能さんが新しいチャレンジをできたのは、パトロン文化の備わった小布施の人の暖かさが大いに影響していたという。

    「社会に出てから、自分の好きなことをやっていいといきなり言われても何をすればいいのか分からない。それを探す時間も、なかなかない。だから、学生のうちに、社会の中で、自分の好きなことや気になることを実際にやってみて、それをお金にするという『仕事をつくる』経験をするのって、すごく大事だと思います」

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    社会に出る前の「学生」というタイミングで、自分の好きなことを仕事にする「仕事をつくる経験」をすることによって、就職の際に、自分で仕事をつくるという選択肢を持つことができる。たとえそれ一本じゃなくても、副業という働き方も選べる。そのためには、学生たちが「自分の好きなことを仕事にすることを実践できる場」を設けるべきなのではないか。それが日本の働き方を変えていくポイントの一つである、と正能さんは語る。

    「就職だけではなく、他にも道があるんだということを実体験として知っていたら、気持ちが楽になると思います。普通に就職するのももちろんありだし、就職しながら起業するのもあり。いろいろ選択肢があったら楽しいでしょ」

    ただ、その実践の場の拠点地を東京に置いたところで、自分の得意なことや気になることを、すでに仕事にしている大人がいるケースが多い。だからこそ、自分のやりたいことや得意なことが「苦手」とされている場所へ、自ら出向かなければならない。

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    「それから、自分のやったことを、大人に『いいね!』って認めてもらうのも、すごく大切だと思います」

    町長をはじめ、小布施の町民の方々は、若者たちのアイディアを尊重し、興味を持ってくれる。自分の考えが認められるということは自信につながり、それがあらゆることへの原動力にもなるのだ。

    待っていても変わらない。だから動いてみよう

    学生時代に大きな一歩を踏み出した正能さん。やりたいことを仕事にするという形で、創業を成功させ、現在は副業という働き方をしている。

    今回は、正能さんの起業の経験から生み出した「社会に出る前に身につけておきたい、5つの武器」を現役の学生たちに教えてもらう。

    1. 親以外の「大人」と接してみる

    私たちが知っている「働く大人」の具体像は、親に先生と、限られていることが多い。

    「私の父は会社員、母は専業主婦だったのですが、小布施で出会った大人たちからは、今までと全く違う『働く』を教えてもらいました。町長もいれば、農家さんもいれば、スキー場の経営をしている人もいれば、酒蔵を経営している人もいて、お坊さんもいる。『リアル働き方図鑑』みたいな感じでした。笑」

    親や先生以外の大人と交流することで、この世には色々な生き方・働き方があるということを知ると、世界が広がるだろう。

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    2. 一緒に頑張れる仲間をみつける

    ハピキラFACTORYを一緒に立ち上げた正能さんの相方は大学時代の先輩。

    「歳とか性別とか関係なく、一緒に何かにチャレンジできる仲間を見つける。社会人になると、つい仕事に追われがちですが、仲間の存在があることによって、締め切りも守れるし、励ましあったりできるから、やりたいこととちゃんと向き合えると思います」

    ただ友達として仲がいいだけではなく、辛いことも楽しいことも全て一緒に立ち向かっていけるような、そんな仲間は早めに見つけておくと、社会人になった後も、新しい挑戦がしやすいかもしれない。

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    3. 「なるべく」スタンスで

    「ゴールイメージを持つことは大切だけど、それはあくまでも一つの方向性であることを忘れちゃダメ。最初から理想を追い求めすぎたら、結局何も始められなくて、どこにもたどり着かないで終わってしまうから」

    ここまでたどり着きたいな、という目処がついたら、まず「なるべく」ゴールに近づくにはどうすれば良いかを考える。物事を深く考えすぎないで、まずは試行錯誤してみることが大切。

    「誰でも迷う場面はたくさんある。だけど、どうせ全てがうまくいくなんてありえないんだから。なるべく『マシっぽい感じがする選択肢』を選べばいいんです」

    4. 「感情」と「事象」は分けて捉える

    自分のやりたいことがなんとなくイメージできたので、とりあえず行動を起こしてみた。けれども、なかなかうまくいかない。やり方を変えてみたり、全体のプランを見直してみたけれど、やっぱりダメ。

    こんな場面に出くわした時は「自分の優秀さや才能が足りない、もうダメだ」と「感情」でとらえるのではなく、シンプルに「自分に向いてなかったからうまくいかないんだ」と、「事象」として考えてみては?と正能さん。

    就活や転職でも「入りたい」と思っている会社から内定が出ないと落ち込むけれど、これって単純に「向いてなかったんだなぁ」と考えるほうが気が楽になる。自分の欠点を感情的に自分で責めるのではなく、「うまくいかなかった」という事実だけを受け止め、次に進んだらいい。

    「学生とはよく恋愛話もするんだけど、この考え方って、恋愛にも応用できると思うの(笑)。ある人が大好きでたまらなくても、何かの原因でうまくいかなかった時は、『自分のせい、あなたのせい』というより、『合わなかった』って捉えたら、少し気が楽になるでしょ。これって、やりたいことも同じかなって。あんまり自分を責めずに、生きていきたいものです」

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    5. 自分の価値が1を割らない場所にいる

    「これは小布施の町長に教えてもらったことなんだけど、この世には『偉い人』なんていない。代わりに、みんなに『偉い瞬間』がある。私も今の仕事は得意なことだから、それなりに楽しくやれているけど、町長とか水泳選手になれとか言われたら、それは絶対無理です」

    自分の『偉い瞬間』は何をしている時なのだろう?自分の好きなことや得意なことが発揮できている時ってどんな時なのだろう?そう意識しながら自分の居場所を考えると、自ずと答えは見えてくるかもしれない。

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    これら5つの切り口を意識して、自分のやりたいことを実践してから、社会に出てほしいと正能さんは願う。

    「今見えている選択肢だけ、じゃなくて、いろいろな道があるんだって知っておいたら、就活も、少しは気が楽になるかなと思います。普通に就職するのももちろんありだし、就職しながら起業するのもあり。一番避けたいのは、みんな就職してるから、自分の気持ちに蓋をして、モヤモヤしながらもなんとなく就職してしまうこと。『学生』という強みを活かして、自分の選択肢を広げるチャレンジをしていってほしい」

    Contact Yukiko Hibi at yukiko.hibi@buzzfeed.com.

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