「天使」と書いてあるグラフィカルな文字。しかし、これを逆さまにすると……「悪魔」と読めてしまう……! そんなグラフィカルな文字がSNSで話題になっています。
これは「アンビグラム」と呼ばれる角度が変わると意味が変わるデザイン文字です。制作したデザイナーに取材しました。
3月2日、アンビグラムをX(旧Twitter)に投稿したのは、KSK ONEさん(@ksk1dc)。
「めっちゃ難しかった。“天”と“魔”の画数の違いよ……」とコメントが添えられたデザインは、180度回転させることで見事に「天使」が「悪魔」になります。全然違う文字なのに、なんで読めてしまうんだ……。
投稿には4万件以上の“いいね”が寄せられており、
💬「センス良すぎる…!! 人に驚きと感動を与える作品は人間にしか作れませんね」
💬「こういう発想してイメージできる頭って訓練なのか閃きなのか、どちらにせよ凄いと思う」
💬「天才はいる、これがそう」
など、作品を絶賛するコメントが寄せられました。
――なるほど。企画のお題だったのですね。ですが、「天使」「悪魔」という近い言葉なのに漢字が全く異なるお題というのは、素人からすると「全然違うから無理だよ!」と思ってしまいそうです。作るのにコツや手順などはあるのでしょうか?
いつもはもう少し作りやすいお題なのですが、今回のお題を見た時は、自分も「全然違うから無理だよ!」って思いました。
手順については、あくまで自分のやり方ですが、図解してみました。
①共有できるパーツを見つける。
それぞれ180度変えた漢字を並べてみて、行書や簡略化など工夫できそうな手法を頭の片隅に入れながら探します。
例えば、「使」のニンベンは、「魔」のマダレと共有できそうだな、といった感じです。
②書体をイメージしてラフを書いてみる。
描きながらヒントを探し、何度も回転させ、どちらでも読めるまで書き直します。その際、「この部分は六芒星にできそう!」などアイデアも浮かんできます。
③イメージを膨らませてブラッシュアップする。
天使の「光」、悪魔の「尻尾」など、文字に対応した構図やモチーフなどアイデアを入れ込んでいき、最後に清書します。
手際良さそうに見えますが、説明のために簡略化してるので、実際はもっと悩んでこねくり回しています(笑)
今回のお題だと、天の下の部分と魔の木×2をどうやって共有させるかが一番の問題でした。悩んでいたところ、六芒星の様な光で木を表せるんじゃないかと閃き、そこから悪にも「光」のモチーフを使って言葉のイメージにも統一感が出せるのではないか! と活路が見出せました。
――なるほど。逆さまにして、共通点を見つけるところからアイデアを膨らませていくのですね。今回の素敵なデザインにはたくさんの反響がありましたが、今のお気持ちはいかがでしょうか?
初めての体験で通知も鳴り止まず、おっかなびっくりでした。
バズってきたらリプで「無理あるだろ」みたいなのもあったのですが、でも言いたい事も理解できるんです。そもそも難易度の高いアンビグラムは、こじつけにならないよう、いかに錯視させるかだと自分は思ってるので。
あとは見てもらう人が最初に読み方の答えを見るので、どれだけ乗っかってもらえるかもあると思ってます。だから今回多くの人に反響をいただけたのは「みんビグラム」のお題の良さと、自分のデザインやこじつけを減らす作業と、見てくれた人の「乗っかって楽しんでみよう」が全部合致したのかなと思いました。
あと、今回たまたま自分がバズったけど、自分なんかより凄いアンビグラムの猛者たちが本当に沢山います。方程式を解くかの様に文章レベルの文字数をアンビグラムにしたり、絵が得意でビジュアルとしてもかっこいい文字で魅せたり……。
今回記事にしていただけたことで、アンビグラムの楽しさと、アンビグラムの猛者たちの凄さも広がって、デザインやアンビグラムを楽しむ人が増えたらうれしいと思っています。
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KSK ONEさんは「清酒」の中に様々な商品の特徴の文字を忍ばせたデザインなども手掛けています。こちらもなんでこんなアイデアが浮かぶんだ……と感嘆してしまうようなデザインですね……。