画像生成AIに「普通のおじさん」を作らせました→そっくりすぎる「本人」が登場し「自分でも自分に見える」と驚愕する珍事が発生

    普通のおじさんを生成したら実在したという奇妙な話。

    画像生成AIを使って生み出した「普通のおじさん」を公開したところ、そっくりすぎる実在の人物が現れるという珍事がTwitterで話題になっています。

    Stable Diffusionは2次元や美少女がテーマのモデルは無数に存在し、それらを生成するのは難しくない。難しいのは「普通のおっさん」の生成。ドラマに出てきそうな浮世離れしたイケおじではなく、そこら辺にいそうな普通のおっさん。そんな難題に挑戦した私の成果物がこちら。おっさん作るのムズイ。 pic.twitter.com/p7F5kCP8yo

    — sogitani / baigie inc. (@sogitani_baigie) May 9, 2023
    Via Twitter: @sogitani_baigie

    話題になっている「普通のおじさん」の画像は、Web制作会社ベイジの代表・sogitani(@sogitani_baigie)さんが、AIを利用した画像生成サービス「Stable Diffusion」を使って生み出しました。

    sogitaniさんはさまざまなプロンプト(指示)の組み合わせを試し、「ドラマに出てきそうな浮世離れしたイケおじではない普通のおじさん」を生み出すことに挑戦しており、話題になっているのは試行錯誤の末にたどり着いたという成果物のうちの1枚です。

    「本人降臨」で話題になったAI画像

    一見すると、どこにでもいそうな「普通」のおじさんの姿。見ればみるほど普通で、なんだか近所や職場で見たことがあるような気さえしてきます。

    sogitaniさんが生み出した画像は5000件を超えるRT数を記録。多くの人の目に触れるようになったころ、「自分でも自分に見える」と反応を示す人物が現れました。

    その人物とは、往年の名作『ハイドライド』シリーズを手掛けた日本のゲームクリエイター・内藤 時浩(@NAITOTokihiro)さん。

    えええええ!? 1枚目ですが、自分でも自分に見えるんですけど!なんだこれ!?!?!? https://t.co/g3Koh61iRj

    — 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) May 10, 2023
    Via Twitter: @naitotokihiro

    「自分でも自分に見えるんですけど!なんだこれ!?!?!?」と驚きを隠せない様子の内藤さん。

    内藤さんを知るフォロワーからも「どう見ても本人」「ホントに覚えありません!?」「確かに瓜二つに見えますね」と反応しており、「そっくり」ぶりはどうやら間違いないようです。

    普通のおっさんで良かった。
    下手すると普通のお爺さんって言われかねないので😓
    まあ、昨今のおっさんや爺さんがどこまでプログラム組めるのかは知りませんがw

    — 内藤 時浩 (@NAITOTokihiro) May 10, 2023
    Via Twitter: @NAITOTokihiro

    ちなみに内藤さん、今も現役でゲーム開発者として活動しており、検索すると直近の画像も見ることができます。

    どれどれ、と確認してみると……確かに本当にそっくり!!!!

    普通のおっさんを作ったはずが、出てきた画像が名作を生んだゲームクリエイターがにそっくりだったことから、Twitterでは「結果、普通のおっさんじゃないのが出てきた感じですね」とのツッコミも寄せられていました。

    ミラクルを起こした「普通のおじさん」について、sogitaniさんに制作過程を聞いてみました。

    ――「普通のおっさん」を作るのはどのように難しいのでしょうか。

    「普通のおっさん」っぽい画像を作りはしたものの、多くの人から、「肌が綺麗すぎる」「姿勢が良すぎる」「臭みがない」などのコメントを、面白おかしくいただきました。

    実際に私もそう感じているものの、「荒れた肌」のようなプロンプトを入力しても、おじさんならではの「加齢感」の表現が簡単には実現しませんでした。こうした一連のことが「普通のおっさん」を作る難しさではないかな、と思います。

    こういう「美少女」の方が作るのは簡単とのこと

    ――今回の2枚を画像を生成するにあたり、どんな苦労がありましたか?

    この2枚を生み出すまでに100枚を超える画像を生成しています。その中にあったのがこの2枚というわけですが、狙ってこういうものを出そうとしたわけではなく、ひたすらプロンプトを入れまくって大量に生成したうえで、「どれが一番普通のおじさんっぽいかなあ」という選び方をしたので、生みの苦しみ、みたいなのは特になかったです。

    AIによる画像生成はランダムに生成されるものなのと、今回は遊びの延長でやったことでもあるので、仕事でデザインをしたり絵を描いたりする時のような、狙って作る生みの苦しみ、みたいなのは特にありませんでした。

    ――内藤さんの「自分でも自分に見える」という反応についてどのように感じましたか。

    実は大変失礼ながら、内藤さんのお名前は存じ上げていたのですが、容姿を知らなかったので、画像を生成しても一切気が付きませんでした。最初に気が付いたのは、フランス語の引用RTを見つけた時です。

    Après les illustrations générées par IA qui reprennent à ~90-95% des illustrations déjà visibles sur le net, la photo générée par IA d'un homme d'un certain âge qui n'est autre que Tokihiro Naito, le créateur d'Hydlide.https://t.co/YzAj2dFhTI

    — Kermesse Whisper (@Dom_Auf) May 10, 2023

    何を書いているのだろう? とChatGPTで翻訳したら、「これはハイドライドの作者の内藤時浩さんに似ていると話題になっている」と書かれてて、あれ? おや? と異変に気が付いた感じです。

    私自身、内藤さんが開発したハイドライドシリーズのファンで、初代はMSX版、X1版、PC8801版と3種類の機種で経験しました。その後のハイドライド2が一番ハマって何度もクリアした記憶があります。その次作のハイドライド3は重量の設定など難易度の高さに苦しみましたが、こちらもなんとかコンプリートしました。

    『ハイドライド』(PC-8801版)

    その後ゲームを全くしなくなっていたので、正直「ハイドライド」というワードがなく、「内藤さん」という名字だけだったら、気が付かなかったかもしれません。

    ただ、そんな私のパソコン原体験時代にお世話になったゲームクリエイターと、SNS&AI時代になって接点が持てたというのはなんだかとても不思議というかミラクルな経験に感じました。「なんとも思ってないのでお気になさらず」と言っていただけたのも、単純に嬉しかったです。

    ――「普通のおっさん」を生成するプロンプトについて、コツのようなものはあったりしますか?

    触ったことがある方ならわかると思いますが、Midjourneyと違ってStable Diffusionには「モデル」という概念があります。このモデルが今現在、世界中で大増殖しているわけですが、おじさん生成のためには、プロンプトの前にまずモデル探しが重要だと思います。なぜなら出力される絵は、モデルが学習しているデータに強く影響を受けるためです。

    ただし問題は、多くのモデルが容姿端麗な女性や男性に最適化されていることです。特に女性に強いモデルが多く、そうしたモデルでは、「male(男性)」と入力しても美少女が出力されるほどです。

    なので、テイストが好みのモデルを見つけたら、「male」と入力したうえで、「(((male)))」と男性であることを強調するのが、一つコツとしてあげられるかと思います。

    その上で、年齢を明確に入れることも重要です。「50 years old age」とかですね。ただこれだけでも、多くの場合、浮世離れしたイケおじしか出てこないので、頭を後退させたり、太らせたり、眼鏡をかけさせたり、シャツをよれよれ(shabby)にしたりなどして、調整していきます。

    それと、口を開かせたり、怒った表情を指定しつつ、smileも同時に指定したりすることで、表情としておじさんっぽくなる気がします。私もそうですが、おじさんって顔の肉が重力に負けてて、黙ってると怒ってるみたいな顔になると思うのですが、そういうのをちゃんと指定してあげる感じですね。

    そうやってプロンプトをいじり、時々モデルを入れ替えていきながら、好みのおじさんが出力されるモデルとプロンプトの組み合わせを見つけたら、何枚も生成していって、アタリを引くような感じです。

    ・・・・・

    AIによってリアルな「実在しない人間」がどんどん出力されるようになれば、今後こうしたケースは当たり前に起こるようになってくるかもしれません。

    試行錯誤の末に生み出された「普通のおじさん」が、結果として「普通じゃないおじさん」だったのも、まるで「世にも奇妙な物語」で語られるストーリーのようで面白いですね。