人と人のコミュニケーションでは、男女関わらず、さまざまな「モヤモヤする瞬間」に直面します。
BuzzFeed Japanは3月7日、国際女性デーの前夜祭として、Twitter LIVE「女子のモヤモヤ座談会」を配信しました。イラストエッセイストの犬山紙子さん、作家の鈴木涼美さん、モテクリエイターの「ゆうこす」こと菅本裕子さんの3人に、主に女性が経験する「モヤモヤ」について話を聞きました。一部抜粋でご紹介します。
「女子力」という言葉の謎
女性だけでなく男性に対しても、料理が上手だったりすると「女子力高い〜!」なんて言ったりします。「女子力」という言葉の謎について、犬山さんが切り出し……。
犬山紙子さん(以下、犬山):「女子力」という言葉は、揶揄の意味で使われることが多いですね。ネイルをしたりお料理教室に行ったりしている女の子に「女子力アップのために頑張っているんだね」っていうふうに使ったり。ただ好きだからやってるんだけど、という人もいるはずなのに。
悪気なく「女子力」って括ってくるけど、「もっと女子力あげなきゃなど、女子力強要系」は単純にあなたの好みですよね。「女らしくあれ」という。女子だから気配りしなきゃいけないわけでもないし、「女子力」として括られることって、全然性別とは関係ないことばかりです。
嫌な思いをしない人もいるでしょうけど、中には「もっと女子力を上げなきゃ」って言われて窮屈な思いをしている人や、「もっと女らしくしろよ」と圧をかけられていたりしている人たちがいるのだと、いろんな方の意見を聞いて思いました。
鈴木涼美さん(以下、鈴木):女子力という言葉がこれだけ使われるようになったのは逆に、女子力がある種、相対化されたということでは。
珍しいものには名前がつくじゃないですか。今はあまり使わなくなったけれど、昔、働く女性が珍しかったときは「キャリアウーマン」という言葉がありました。その逆で、料理や掃除は昔は女の役割として当たり前だったけれど、いまはそんな「女子力高い女子」が珍しい存在になったから、「女子力」がことさら使われるようになったのかな。そう考えると、そんなにネガティブな現象でもないのかなと思うこともありますね。
菅本裕子さん(以下、菅本):「YouTubeでゆうこすの動画を見ると女子力上がる」って言われます。私は「女子力」という言葉はすごくポジティブに捉えています。
犬山:「女子力が上がる」という言い方は、ふわっとしていて悪意もなくて楽だから使っている人もいるでしょうけど、「かわいくなれる」とか「モテるようになる」とか、細かく言い換えるとそういうこと指すんですよね。
鈴木:「女らしくしろ」って言うと問題になるから、「ちょっと女子力低いんじゃない?」っていう言い方に換えてるんじゃないですか?
犬山:それはそれで、まったく同じ意味だよねっていう。
家事代行を頼むとモテない?
モテクリエイターの菅本さんは、最近忙しく、家事代行を依頼するようになりました。意外な言葉をかけられるそうで……。
菅本:忙しくて週に2回、家事代行に来てもらってるんですけど、「モテクリエイターなのに家事頼んでるんだ〜」って周りの男性たちに言われます。どう反応すればいいかわからなくて、無視しちゃってるんですけど。
犬山:自分より若くてかわいい女の子が自分より下のポジションにいるときはすごく持ち上げてくれるけど、その子が稼いだり、家事代行を頼んだりした瞬間、てのひらを返してバッシングしてくる人っていますね。
鈴木:多くの男性は、自分より稼いでいる人、自分より力が強い人、自分より頭がいい人のことがあんまり好きじゃないんですよ。キャバ嬢が一番よく吐くセリフって「すごーい」なんですが、やっぱり「すごーい」って言ってあげると男性は喜びます。「家事代行なんて頼んでるんだ、ナントカさんすごーい」って言われたいから、女の子には家事代行を頼んでほしくないんだと思いますよ。
菅本:家事代行を頼んだときに「そんなことやったらモテなくなるよ」「モテクリエイターでしょ」って周りの男性にめっちゃ言われて......。
犬山:聞かなくていいですよ。どうせ一部の人だけなので。「家事代行、いいじゃん」と言ってくれる男性もいますし、そうじゃない人は無視でいいと思います。
“恋愛”と“尊敬”を勘違いしてしまうおじさん
仕事では尊敬できるのに、飲み会の席でセクハラしてくる同僚や男性上司がいたりします。なぜ、恋愛と尊敬を勘違いしちゃうおじさんがいるのでしょうか。元キャバ嬢・元AV女優の鈴木涼美さんの考えは……。
鈴木:夜の世界では勘違いしてくれるおじさんはありがたくて、「かっこいい!その財布の中身」って言ったときに「俺のことかっこいいって言ってくれてるのかな」と勘違いして、みんな気持ちよくお金を使ってくれるわけです。
男性は、自分に対する評価にいろんな種類があるということがわかってないから、勘違いしちゃう人が多い気がしますね。
女性は、「モテる」「好き」「顔がかわいい」「おっぱいが大きい」「仕事ができる」「絵がうまい」「しゃべるのが上手」などの褒め言葉を、それぞれ分けて考えられる人が多いと思います。例えば、犬山さんの漫画のファンで、「サインしてください!」って言ってきた男全員イケる!って思わないじゃないですか。でも、男性はそこは分けないで、何かについて「すごい」と褒められたら、総合力として「イケる」って思っちゃう人が多い気がします。
それは男性が悪いというよりは、男性の評価が基本的に、女性よりも複雑ではないからです。学歴が高い、収入がある、出世しているほうがモテるっていう感じで今まで来たからです。何かについて褒められると勝手に総合力にカウントされちゃう機能がついてしまっているんですね。
「罪悪感つけこみおじさん」とは
高い食事をおごってくれる男性の中には「罪悪感つけこみおじさん」がいると、ブログで記していた犬山さん。どんなおじさんなの? その対処方法は……?
犬山:高いご飯をおごる男性が全員そうであるという話ではないことを前提に……。すごく真面目だったり、地方から出てきたばっかりの世間を知らない若い女の子って、高い食事をおごってもらったときに罪悪感を感じることがあるんです。
そもそも食事に誘われたときにも、この人の誘いを断ると失礼にあたるのかなと思って行ってしまいます。そこで何万円もの食事をごちそうになる。彼女からするとその何万円も稼ぐのってすごく負担もかかるし大変なことだから、「うわ、あんなに高いご飯を食べてしまった」と罪悪感を感じます。でも、お金持ちのおじさんからすると、そんなのは屁みたいなものなんです。
つまり、おじさんからすると1のコストで女の子に10の負荷をかけることができる。そして誘い続けて、この子は断れないタイプの子だなというのを見極めながら、3回目の食事くらいで「じゃ、そろそろ」みたいな。
そうすると「私こんなにいっぱいおごってもらってるのに、何も返せないし、抱かれなきゃいけないのかな」と思ってしまう子が本当にいるんです。おじさんたちにどういう気持ちでそういうことをしているのかを聞くと、やっぱり“罪悪感”っていうのは一つのキーワードで、正々堂々と口説く人もいるけれども、低コストで抱ける女の子を見つけてる人もいるわけです。
鈴木:それは結構難しいですよね。高い食事をおごって口説くの常套手段は昔からあるじゃないですか。高い食事だけじゃなくて、かいがいしく毎日送り迎えをするとか、抱きたいって思ってそのためにする努力を無下にしてもかわいそうかなと。
犬山:その努力を否定したいわけではなくて、女の子は断っていいんだよ。ということが言いたかったんです。セクハラにもつながるんですけど、2人で食事をしちゃったから、自分がこれ食べたいと言っちゃったから、と自分の落ち度を責める子が多いんですよ。それは誘われて行っただけだから、変に罪悪感を感じなくていいから、無視したかったら無視していいよ、ということです。
鈴木:そう考えると、女子のほうが賢くなってイライラしない断り方を見つけることも必要ですね。被害者を責めるわけじゃなくて、被害者にならないための知恵をつけるといいと思うんですよね。
犬山:知識として持つことはすごくいいと思っています。知識を持っていない子が悪いわけではなく、生きていくうえでこういう知識がもっとシェアされたらいいですよね。
おじさんの中にも、本当にいい人で、単純に食事をおごりたい人もいます。その見分け方を教えます。
例えば、高い店に誘われたら「もうちょっと安い店にしませんか?」「居酒屋はどうですか?」と提案してみる。罪悪感を低コストで押し付けたいおじさんだったら、「もうちょっと高い店にしようよ」と言ってくるでしょう。居酒屋だと罪悪感を植え付けられないので。
もしくは「あ、お父さんにもその店によく連れてきてもらいました」みたいなことを言うと、「この子はもともと高い店に行ってるから罪悪感を持たないタイプだ」と思惑が外れるでしょう。
菅本:なるほど!
犬山:「友達を連れて行ってもいいですか?自分の分はちゃんと払いますから」と言って1対1にならないのも有効です。
鈴木:口説かれたくないときはそれで、口説かれたいときは逆のことをすればいいですね。「こんなところ初めて!」とか、何回も来たところでも「初めて!」っていうと喜ばれるし、「ああ、何回も来たわ」って言うと逆に口説かれないしで、うまく使い分けるくらいの知恵はあってもいいかなと思います。
犬山:知恵はどんどん広めたいですね。
菅本:学校で教えてほしいくらいです。