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私の会社には「アラサーの女性社員だけ」が集められる謎の研修がある

女性が働きやすい企業ランキングって本当なの?

「え、それって大人の保健体育みたいなやつ?」
「ニュアンスは違うけど、近いかも。なぜかアラサーの女性社員だけ集められて研修うけたんだよね」

こんな会話を聞いた。一体どういうことなのだろう? どうやら「女性の活躍促進に力を入れている大企業」などでは、このような取り組みを通して女性管理職の育成や育休取得の促進を図っているようだ。

経済誌では「女性が働きやすい企業ランキング」が毎年発表される。きっとそこに名前を連ねる企業で、このような取り組みがなされているのだろう。そして華々しくプレスリリースを打つ。「働き方改革、やっています」というような。

当の女性社員たちはどう思っているのだろうか? 「女性が働きやすいランキング」上位の企業に務める社員に話を聞いた。

アラサーOLだけが受ける謎の研修

メーカーに勤めるNさんは、昨年この研修を受けた。人材会社から講師を呼び、丸一日かけて開かれる研修ではどんな内容が話されるのだろうか?

「6人ほどのグループに分けられて、キャリアビジョンについての話を聞きました。女として経験しそうな、結婚・出産・育児について。あと、いつか来る管理職への昇進。4つをどうこなしていくのか?という内容ですね」

研修で使われた資料には、一本の線が引かれ、「結婚」「妊娠」「出産」「育児」の文字が並ぶ。

「これを見ると、リストにチェックをつけていくみたいですよね。女性の人生はこういうレールが一般的で、それをこなす前提で話が進んでいく感じ」

上記のライフイベントをこなす中で、「いかに昇進していくのか?」、「そのためには何をすべきか?」というグループディスカッションを行う。意図してなのか、Nさんのグループには既婚者はいたものの、育児経験のある社員はいなかった。

「こういう図をみると、人生ってこういうものなのかな。全部こなさなくちゃいけないのかなって思うんですよね。転職しづらくなるんですよ。こんなにタスクがあるわけで」

Nさん自身、「情報を知っておくことは大事」だと言う。しかし、彼女が違和感を覚えるのは、この研修が「女子は必ず受けなければならないこと」、「男性社員には機会がないこと」、そして「誰もが管理職になる前提」な点だ。

本当に全員が管理職になりたいと思ってるの?

政府は、2020年までに女性管理職比率を30%にすると目標を掲げている。Nさんの働く会社も、だからこそこのような研修を開くのだろう。

女性の活躍促進を謳う場合、「管理職率を希望している女性は全体で46%(管理職になりたい:16% / どちらかと言うとなりたい:30%)もいるので、目標を大きく上回る人が管理職を希望している」というような説明をしがちだ。

しかし、本当に全員が「管理職になりたい」と熱望しているのだろうか?

20代女性の数字を見ると、「管理職を希望している」のは41%、「希望しない」のは59%だ。

20代は既婚率が上の世代と比較して低いため、このような結果になるのかもしれない。しかし、もっと別の見方もできる。「そこそこでいい」という価値観だ。

大手家電メーカーで働くYさんは、結婚後に「管理職にならないかと声をかけられて、会社をやめようかと思った」と漏らす。

せっかくの昇進の機会にも関わらず、ネガティブな発言をする理由を聞くと「家庭も全うして、仕事にも全力でって正直体力がもたない」。「私はそこそこでいいのに、会社が管理職率をあげたいだけな気がして」と、不満を吐露していた。

「ダイバーシティー」と言いながら

NさんもYさんと同様の発言をする。「女性の管理職率を上げたいんだと思います。研修を開いて種まきをしているものの、うまく作用していないと思うんですよね」。

「ライフイベントとキャリアの両立って、男性社員も考えるべきことだし、知った方が男性も育休を取りやすいじゃないですか」

女性社員だけが研修を受けたところで、「結婚・出産・育児・昇進までやらなくてはいけないのか…」と実感するだけだ。もちろん、選択権があることは先人の訴えがあってこそで、私たちは贅沢な時代を生きている。

しかし、男女が本当の意味でワークライフバランスを保つためには、男女が同じ条件で、同じ選択肢を与えられる必要がある。

「結局いつまでも『男は稼いでくる』という前提を感じるんです。女性社員だけが受ける研修に対して違和感を覚える男性社員もいましたね、実際。ダイバーシティーって言うのに、女性だけっていうのは、いろんな歪みを生むと思います」

女性の管理職が増えたら、たしかに働き方の常識は変わるかもしれない。しかし、それは性別に関係なく、多くの人がより良い人生を送るための手段でしかない。


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