2007年にソフトバンクのCMに登場した不思議な家族「白戸家」。当初は、お父さん(犬 CV:北大路欣也さん)、お母さん(樋口可南子さん)、アヤ(上戸彩さん)お兄ちゃん(ダンテ・カーヴァーさん)の4人家族でした。
摩訶不思議な設定に可愛らしい雰囲気で支持を得るご長寿CMです。そういえば、お父さんってなんで犬なんだろう…?
長年ソフトバンクのCMに携わってきた同社の冨田充彦さん、宮園香代子さんに話を聞きました。
お父さんが犬の理由
「この時、ソフトバンクでは家族の国内通話が無料になるホワイト家族という家族割の料金プランを作りました。その訴求で、家族のキャラクターが必要になり、できたのが白戸家です」
動物は広告表現の中でも好感が持たれやすいという法則もあり、「家族に動物がいる」設定がきまりました。
「当時、競合他社さんのCMで有名タレントを使った家族設定がありましたが、当社は予想外でユーモラスな家族の設定を前提に検討していたので、最終的に、お父さんを犬にしようと(笑)。当時、社長も出席のCM会議が週1程度開かれていて、その場の合議にて決まりました」(冨田さん)
ドラマ『華麗なる一族』がきっかけ? イケボイス
お父さんと言えば、北大路欣也さん演じる渋い声。TBSドラマ『華麗なる一族』での木村拓哉さんの父役として「威厳のある父親」像が定着していたため、「お父さん役」候補に挙がっていました。
その後、検討を重ね配役が決まったそうです。とはいえ……
北大路欣也さん「なんで俺だけ犬なの?」
「お父さん役」が決まったとき、北大路さんは「自分だけが犬」だということを知らなかったそうです。
「お父さん役」として、自分がCMに出演すると思っていたところ、自分は「声のみ」。さらに、よく見ると共演する樋口可南子さん、上戸彩さんは人間役。
「全員、犬の一家なんだと思っていた。なんで俺だけ犬なの?」と面食らったそうです。
封印されたCM『お父さんの正体』
「最初は3話までCMのコンテを用意していました。3話目では『お父さんはなぜ犬なのか』がわかるようになっていました」(冨田さん)
でも、2話まで放送したところ、想像を超える反響があったため「お父さんの正体は明かさないでおこう」と3話目のコンテを使うことはなくなりました。今も謎に包まれたまま……。
初代お父さんカイ君
カイ君は、熊追いのアイヌ犬。白戸家がはじまった当初は、気性が荒く撮影にかなり苦労したそうです。
「お父さんが話す様子はCGではなく演技です。なので、『座って話す』演技をしてもらわないといけないのですが、当初、それは難しく……撮影に一晩かかることもありました」(冨田さん)
「初めての撮影時には、頭を撫でようとしても吠えることが多く、怖がらずにじゃれていたのはお兄ちゃんのダンテさんぐらいでした。ダンテさんは、虎も撫でられる方なんですよ(笑)」
でも、徐々にカイ君も大人になっていって、自分がどうすればいいのかわかってきたようです。
「私たち人間の方も、カイ君との付き合い方を学んでいったので、撮影時間もどんどん短くなっていきました」(宮園さん)
「カイ君は普段、家の中の布団で眠っていました。撮影中も椅子に座っていて。人間みたいでした。本当に可愛いらしいんですよ」(冨田さん)
カイ君との別れ
そんなカイ君は、今年他界。人間で言えば90歳ぐらいの大往生だったそうです。
「3年ほど前からカイ君は引退していたので、今は息子のカイトくんたちに引き継がれています。でも、イベントなどには顔を出してくれることもあったんです」(宮園さん)
「眠るように亡くなられたそうで、そこはよかったなと……これほどソフトバンクによくしてくれた存在はいないので。本当にありがとうの気持ちでいっぱいです。追悼イベントも開催しました」(宮園さん)
10年続いた白戸家。新しい「驚き」がほしいな……
2017年に10週年を迎えた白戸家。当初は不思議な設定に注目が集まりましたが、10年も続くと「ユーモラスな家族」も定着してきました。一新してもいい時期です。
「撮影現場でもお花を贈ったりみんなでお祝いをしていたら、『もしかしたら、白戸家は終わってしまうかも…』という雰囲気が出てしまって、上戸さんと樋口さんが本気で泣かれてしまって」(宮園さん)
そこで、白戸家を「やめるのではなく新しい家族を追加してみよう!」という判断の元、新キャラクターたちが加わったそうです。
「昔は、リビングで展開されるストーリーが主だった白戸家ですが、今後はもっと先に行けるような仕掛けをしています。これからも白戸家を楽しんでいただきたいです」(宮園さん)
これからどうなっていくんだろう。前妻が気になるところです。