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国籍は地球。どこから来たかって? 「母の腹から来た」しかなくない? m-floに見る「自分と違う誰か」と付き合う方法

m-floは異色のグループだ。インターナショナルスクールで出会ったボーカルのLISA、MCのVERBAL、トラックメーカーの☆Takuで結成され、1999年にメジャーデビュー。『come agein』や『prism』などヒットを飛ばす。その後LISAが脱退し、Loves プロジェクトとしてBoAやCHEMISTRYなど多くのアーティストとコラボレーションソングを発表。そして2017年末、再びLISAを迎え3人での活動を再開した。

Twitterを開けば、政治観の違い、価値観の違いで炎上する。テレビとネットでは世論が全く違う。そんな多様性が入り乱れた今、こんな歌を歌う人たちがいる。


誰か何か気になる人がいたら是非そのまま黙り続けて頂けますか?

それだと幸いです

ヘイターの声聞こえないです

頭ん中TWILIGHTです

お呼びでないのに違うと思えば刺すメス

オスメス問わず・食わず・嫌いな方でも

一度聞けばト~リ~コ~

m-floだ。彼らは1999年にメジャーデビューし、DJ、MC、ボーカルという異色のグループとして注目を集めた。しかし、ボーカルのLISAが2002年に脱退。2017年末に15年ぶりに3人体制での復活を発表した。

その第一弾として発表された「No Question」が上の歌詞だ。復活から約1年、この楽曲はLGBTの祭典「東京レインボープライド2019」(以下TRP)の公式テーマソングになった。

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m-floの3人は、それぞれが各々のスタンスを持ち合わせ、1曲を作りあげいる。ダイバーシティが叫ばれる昨今、違う人間とどうやって1曲という作品を生み出しているのだろうか?

「目の色が違う。鬼の子だ」と言われて

――m-floのみなさんはインターナショナルスクールで出会ったそうで。

VERBAL(以下V):国籍も外見も言葉も、みんなそもそも違う。その違いを祝福、称賛しようっていう環境でした。

LISA(以下L):机で並べると、隣がタンザニア出身とか、後ろがフィリピンの子とか。

☆Taku Takahashi(以下T):でも日本は多民族国家という前提が薄かったりするから、難しさはあったと思う。同級生にもLGBTQの子はいたけど、大人になってから知ったし。

アメリカは移民で出来ている共通認識があるから、いろんな価値観がぶつかりあう。アメリカですらLGBTQへの理解がここ最近一般的になってきたぐらいなので、日本は難しかったんじゃないかなって。

僕らはダイバーシティってかなり進歩したと思うけれど、当事者としては今も苦しい思いをしている人がいるのは事実。

それはセクシュアリティだけじゃなくて、在日コリアンもそうだし、海外から来た在日の人もそう。

L:そうよ。私はコロンビアと日本のハーフだったから、小さい頃はいじめにあった。地元の子と遊びたいじゃない? 通う学校は違えど、そんなの関係ないからね。

でも、彼らは「目の色が違う、鬼の子供だ!」って、目をめがけて砂をかけてきたり、髪を掴まれて、どこから持ってきたのか……唐辛子がはいったバケツに頭をつっこまれたり。

瞼が腫れ上がっちゃって、その姿を見て母は泣きました。「ハーフに生んじゃってごめん」って。

今もそういう瞬間に出くわす。この前、ビザをとるためにパスポートを提示したら「いつ日本人になったんですか?」って聞かれて驚いた。そんな失礼な質問ない! 逆に「外国人だと思ってたのに」って失望されたり。

そもそも「外国人」と言われて気持ちがいい人っているのかしら? 国籍は地球。どこから来たかって? 「母の腹から来た」しかなくない?

V:僕は在日コリアンだから、子供の頃から親に「今は差別的なことを言われるかもしれないから、韓国人であるアイデンティティーを自覚して強く生きていかないとね」みたいなことは言われてたんですよ。

日本にいると韓国人、韓国行くと日本から来た人、アメリカ行くとアジアから来た人。どこにいっても外国人……「エイリアン」って言葉は宇宙人のイメージが強いけれど、外国人っていう意味でもあって。

幼いときからそうだったから、人種も自分の持ってるセンス、感覚含めて、誰か周りを変えるより、自分が変わっていこうって気持ちが強い。感情的なものは論外だけど、クリティカルな批判は結構興味がある。自分をアップデートしていけるからね。そう育ってきた。

T:僕自身は2人みたいな経験はないのだけれど、m-floは音楽的にはマイノリティ。メジャーレーベルからデビューしているけど、真剣にDJをやっても「所詮……」みたいな意見をぶつけられることもあったし、オーバーグラウンドでもアンダーグラウンドでもなかったから。

L:そうそう。外人みたいな子が歌ってて、韓国人がラップしてて、日本のグループじゃないって言われることもあった。It’s OK. We love our planet.

LISAが髪をバリカンで剃った理由

――なぜ、「No Question」がTRPの公式ソングになったのでしょうか?

T:2丁目で定期的に「m-flo Night」っていうDJ パーティが開催されてるんですよ。そこにゲストで呼ばれたときに「No Question」をかけたら、歌詞と雰囲気とがその空間とフィットしてると感じたんですよ。ハマってた。

もともとTRPの場でm-floとして何かやるという話はあったんだけれど。ダメもとで「No Question」の話を運営事務局に聞いてみたら、うまくまとまった(笑)。

――「オスメス問わず」という歌詞があったり、示唆的だなと思ったのですが。

V:語呂の良さで書いたら、奇跡的に言いたいことが言葉にハマりました。

L:そうそう。Takuのトラックに一発で惚れ込んで、魔法のように出てきちゃったメロディーなんですよ。もう「わかってるな」って感じで。「No Question」ってそういう意味なんですけど(笑)。

もうね……SEXみたいなものよ。BIG SEX。

V:BIG SEX……!?

L:え、何?

V:BIGっていう形容詞はSEXの前になかなかつかないから、流石だなと思って(笑)。

L:でも音楽とかクリエイションってそういうものでしょ?

要はTakuのトラックにヤラれてメロディーが出てきて、VERBALが入ったら「Oh Shit!」って感じで、BIG SEXしたのが「No Question」なんですよ。

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――オリジナルのMVで髪の毛を自分でバリカンをあてるシーンが印象的でした。

L:もともと他のモデルさんに髪の毛を刈ってもらう予定だったんですけど、絶対私がやった方がいいと2人に提案したの。そうしたらVERBALが「LISAがやったら面白いよね、いいね」って。

15年ぶりにm-floとしてmove onするっていう意思表現なんですけど、実はもう1つ理由があって、私は40代の女性になっていて……大人として落ちつこうとする固定観念ってあると思うんだけど、人生って1回しかない。私は安全なところでまとまっているタイプではない! とんでもなくクレイジーだし、チャレンジするよ! 年齢や性別関係なしに「いけるぜ」「いってもいいんだぜ」っていうことを表現したかった。

……再び髪を伸ばすの大変でしたけれど(笑)。

――「ヘイターの声聞こえないです」というくだりも最高でした。

V:デビューした20代の時は「あいつはWACKだ」とか直球の罵声を浴びせる様な表現しかできなかったけれど、僕たちも40代で大人になっていて。「お前は黙ってろ」じゃなくて「そのままだまり続けていただけると幸いです」って、丁寧に刺々しいことを言うのウケるよねってスタンスで作りました。幸いですって英語にはない日本語の表現だし。

T:意見が違う場合、認めなくてもいいけど、聞く。それが大事。知るとか聞くとか。

それこそSNSはすごく面白いツール。Twitterっていろいろ掃き溜められる分、今まで交差しなかった存在が言葉という形で交わる。お互いの感覚を共有する作法を学んでいってる気がする。

私見では、世の中はヘイトな方に向かっていると思っているけれど、ヘイトな世界では生きていけないから。みんな少しずつ学んでいるんじゃないかなって思う。プロツイッタラーとして(笑)。

L:私は逆にネットのコメントは見ないようにしていて、見てるのはInstagramだけ。VERBALは建設的な批判は目を通したいって言っていたけれど、私は「ごめんなさい。I don’t care attitude」という気持ち。言うのは自由だけれど、見ないようにしてます。

Agreeしないのは日常茶飯事。それでもうまくやっていけるのは…

――SNSでも、みなさんスタンスが違うんですね。

L:m-floがいいのは、私がネットに関して保守的なことを2人が認めてくれているところ。

違ければ違う方がいい。これは最初の「Planet Shining」と「EXPO EXPO」の時に、みんながガチで違う方向を向いていたのに、それが奇跡を生んでたのを見てきたから。3人が、「俺はこっち、私はこっち!」とギスギスしてたのにうまくまとまっていた。私はあの頃の熱量がバチバチしていたm-floも好き。

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V:昔は「俺はもっと社会を変えてやる!」っていう思いが熱かった。でも「なんでお前は差別するんだよ!」って憤っても、響かないし変わらない。だったら、自分がピースな活動する方にシフトして、いつかその人が心打たれた方がもっといいかなって。

L:そのスタンス、すごく好き。

V:例えば、親から「これだけ面倒見てあげてるのに」ってガミガミ言われると、あんまり刺さんないじゃないですか(笑)。「ダルいなぁ」と思うだけでしょう?

いろいろ変えていかないと……と正義感みたいな気持ちになることはあるんですけど、会社をやっていていると「相手を変えようとするのは効果的じゃない」と直面することが多いです。辞めたい社員は辞めるし、いい環境だよと言っても、ピンとこない場合もあるし。

最近掃除してたら、自分の会社で12年くらい前に作った資料が出てきて、こちらの要望がメインですごく一方的な企画内容で驚いたんですよ(笑)。「こんなの誰が刺さるんだろう?」って。

L:Takuはその辺、昔からうまいよね。Takuのトラックに私がメロディを、VERBALがラップをのせていくんですけど、認めてくれない時も多い(笑)。VERBALも私も何度もリライトさせられる。でも、最後は絶対まとめてくれる。Agreeしないことは日常茶飯事ですよ。

T:多分ね、これだけ違う3人で1曲作れるのってAgreeしない瞬間を大事(おおごと)にしないようにしてるからなんだと思う。

V:大事。

T:楽曲制作の段階で、自分が最高に好きな部分をVERBALが気にいるとも限らない。逆もしかりでVERBALが自信をもって、ラップを作ってきてくれても、納得できない瞬間がある。努力が好意的に受け入れられなかった時ってシュン…としちゃうのが人間なんですよね。

そのとき、感情が先走って「なんでAgreeしないの!?」となると、摩擦が生まれる。Agreeしない瞬間、「そっかー。じゃあ他のも考えてみよ?」とコミュニケーションするだけで、全然違うんですよ。

熱量が高い分、否定に対してダメージが大きくなりやすい。でも、Agreeがなくても、その次もある。

V:同じ意見に囲まれていると馴れ合いになっちゃう。逆に共鳴の楽しさってなくなる気がするんですよね。例えば、僕自身もそうだし、m-floも音楽としてはすごくマイノリティ。でも、だから興味範囲とか愛しているものが具体的になる。どこにいっても「ホーム」ができるんですよ。出自はバラバラでもね。

稀に他者との違いを排除しようとする瞬間を見るけれど、そういう人には愛をもって接していきたいよね。

L:そうそう、マイノリティであることは自分を強くする一方だと思う。個性的でかっこいいことだと思うのよね。マイノリティはネガティブなエッセンスを感じる言葉。でも私はそうは思わないの。マイノリティって言葉に左右されないで。

自分を認めてくれない人は、許すしかない。戦っちゃダメです! Fist(拳)にFistはダメ。逆に許してください。許しって強くないとできないことなんですよ。だから、何かしらマイノリティだと感じる人は、強くなるチャンスを持っているということだと思うのよね。Do it!

T:人間が他の動物と違うのは、知ろうとする気持ちを持っていることだと思うんだよね。いろんな価値観がある、合意しなくても、知る。この人はこういう風に感じた、思っているんだよっていうのを知ろうとする機会を作っていくと、ちょっと地球が良くなるんじゃないかなって思うんです。もちろん僕たちm-floとしても、ね。